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家道訓 / 巻之二・総論中

古人も、酒は微醉にのみ、花は半開に見るといへり。主も客も、少したらざる程に飮むべし。十分にゑふは、必ず後のうれひとなる。殊に下部は、ほしいまゝに飮めば、狂してわざはひとなる。吉田兼好がいへる事むべなり。およそ、酒をほしいまゝにすれば、たかきいやしき家をやぶり身を失ふ。いましむべし。人の家をやぶり身を失ふは、多くは酒の禍なり。

新字:古人も、酒は微酔にのみ、花は半開に見るといへり。主も客も、少したらざる程に飲むべし。十分にゑふは、必ず後のうれひとなる。殊に下部は、ほしいまゝに飲めば、狂してわざはひとなる。吉田兼好がいへる事むべなり。およそ、酒をほしいまゝにすれば、たかきいやしき家をやぶり身を失ふ。いましむべし。人の家をやぶり身を失ふは、多くは酒の禍なり。

書き下し

古人も、酒は微酔にのみ、花は半開に見るといへり。主も客も、少したらざる程に飲むべし。十分にゑふは、必ず後のうれひとなる。殊に下部は、ほしいままに飲めば、狂してわざはひとなる。吉田兼好がいへる事むべなり。およそ、酒をほしいままにすれば、たかきいやしき家をやぶり身を失ふ。いましむべし。人の家をやぶり身を失ふは、多くは酒の禍なり。

現代語訳

古人も「酒はほろ酔いに飲み、花は半開きに見る」と言いました。主人も客も、少し足りないくらいに飲むべきです。十分に酔うのは必ず後の憂いとなります。とりわけ下働きの者は、ほしいままに飲めば、狂って災いとなります。吉田兼好が言ったことはもっともです。およそ酒をほしいままにすれば、身分の高い者も低い者も家を破り身を失います。戒めるべきです。人が家を破り身を失うのは、多くは酒の災いです。

解説

「酒は微酔に飲み、花は半開に看る」は、明の洪自誠の『菜根譚』にも見える言葉で、物事は満ちる手前が最もよいという考えを表しています。益軒はこれを飲酒の心得として、主も客も少し物足りないくらいでやめよと勧めます。吉田兼好の名を挙げているのは、徒然草で酒の害を厳しく説いた段を念頭に置いているのでしょう。家を破り身を失う原因の多くは酒だという結びは、養生訓でも説かれた益軒の持論です。腹八分目と同じく、ほどほどで止める知恵は健康にも人間関係にも役立ちます。

この章句が説くこと

酒節度菜根譚徒然草養生

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