家道訓 / 巻之一・総論上
一身を修め家をたもつに、約の字を守るべし。約にすとは、つゞまやかなるなり。ほしいまゝならず、取ひろげざるを云ふ。是を以て情慾をふせぎ、財用を節にするは、身を修め家をたもつ道なり。論語に、約を以て失ふものすくなしとのたまへり。約なれば、あやまりすくなしとなり。
書き下し
一身を修め家をたもつに、約の字を守るべし。約にすとは、つづまやかなるなり。ほしいままならず、取ひろげざるを云ふ。是を以て情慾をふせぎ、財用を節にするは、身を修め家をたもつ道なり。論語に、約を以て失ふものすくなしとのたまへり。約なれば、あやまりすくなしとなり。
現代語訳
身を修め家を保つには、約の字を守るべきです。約にするとは、つつましやかにすることです。ほしいままにせず、手を広げないことをいいます。これによって情欲を防ぎ、財用を節約するのは、身を修め家を保つ道です。『論語』に「約によって失う者は少ない」とおっしゃっています。約であれば過ちは少ないということです。
解説
論語里仁篇の「約を以て之を失ふ者は鮮し」を引き、「約」の字を守ることを勧めています。約とは、つつましく、ほしいままにせず、手を広げすぎないことです。欲を抑え、財を節約することが、身を修め家を保つ道になります。事業でも家計でも、手を広げすぎたところから破綻が始まることは多いものです。背伸びせず身の丈に合った暮らしと仕事をすれば、大きな失敗は避けられるという教えは、簡潔ながら実用的な知恵です。
この章句が説くこと
約倹約論語節度家
関連する章句
-
説苑・說叢聖人の衣や體に便にして以て身を安んじ、其の食や腹に安んず。衣を適し食を節し、口目に聽かず。
-
説苑・雜言孔子曰く、「中人の情は、余り有れば則ち侈り、足らざれば則ち倹にし、禁無ければ則ち淫し、度無ければ則ち失し、欲を縦にすれば則ち敗る。飲食に量有り、衣服に節有り、宮室に度有り、畜聚に数有り、車器に限有るは、以て乱の源を防ぐなり。故に夫れ度量は明らかにせざる可からず、善言は聴かざる可からず」と。
-
葉隠・聞書第一大酒にて後れを取りたる人、数多(あまた)なり。別して残念の事なり。まず我が丈け分(たけぶん)をよく覚え、その上は飲まぬ様にありたきなり。そのうちにも、時により、酔い過す事あり。酒座(しゅざ)には就中(なかんずく)気をぬかさず、図(はか)らぬ事出来(しゅったい)ても間に合う様に、了簡(りょうけん)あるべき事なり。また酒宴は……
-
尚書・說命中寵を啓きて侮りを納るる無かれ、過ちを恥じて非を作す無かれ。
-
葉隠・聞書第一時により、人に用(よう)をいい、物をもらう事有り。それも度重(たびかさ)ならば、無心(むしん)になり、いやしかるべし。何とぞ済む事ならば、用をいわぬように有りたきなり。
-
論語・述而篇子は釣りして綱せず、弋して宿を射ず。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る