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家道訓 / 巻之一・総論上

一家ををさむるにも、忍の字を用ふべし。忍とはこらふるなり、堪忍するをいふ。おごりをおさへて、慾をほしいまゝにせざるもこらふるなり。又、わが家の貧なるをこらへて、人をむさぼらざるべし。凡の人君子にあらざれば、わが心にかなはざる事多し。堪忍せざれば人の交は和がず。然るに父兄は、子弟のおのれにつかへやう足らずして、心にかなはざれば子弟を責む。子弟は、父兄のめぐみうすくして、あきたらざれば父兄をうらむ。其の餘、夫婦親戚も亦しかり。たがひに堪忍せざれば、いかりうらみ出來て、父子兄弟夫婦親戚の間むつまじからず。此ゆゑに、人の行のわが心にかなはざることを、たがひに堪忍してうらみいからざれば、一家の內やはらぎしたしむ。是家をとゝのふる道なり。又人のあしきをばゆるして堪忍し、わが身には道をつくして、人に堪忍せらるゝ行をなすべからず。

新字:一家ををさむるにも、忍の字を用ふべし。忍とはこらふるなり、堪忍するをいふ。おごりをおさへて、慾をほしいまゝにせざるもこらふるなり。又、わが家の貧なるをこらへて、人をむさぼらざるべし。凡の人君子にあらざれば、わが心にかなはざる事多し。堪忍せざれば人の交は和がず。然るに父兄は、子弟のおのれにつかへやう足らずして、心にかなはざれば子弟を責む。子弟は、父兄のめぐみうすくして、あきたらざれば父兄をうらむ。其の余、夫婦親戚も亦しかり。たがひに堪忍せざれば、いかりうらみ出来て、父子兄弟夫婦親戚の間むつまじからず。此ゆゑに、人の行のわが心にかなはざることを、たがひに堪忍してうらみいからざれば、一家の内やはらぎしたしむ。是家をとゝのふる道なり。又人のあしきをばゆるして堪忍し、わが身には道をつくして、人に堪忍せらるゝ行をなすべからず。

書き下し

一家ををさむるにも、忍の字を用ふべし。忍とはこらふるなり、堪忍するをいふ。おごりをおさへて、慾をほしいままにせざるもこらふるなり。又、わが家の貧なるをこらへて、人をむさぼらざるべし。凡の人君子にあらざれば、わが心にかなはざる事多し。堪忍せざれば人の交は和がず。然るに父兄は、子弟のおのれにつかへやう足らずして、心にかなはざれば子弟を責む。子弟は、父兄のめぐみうすくして、あきたらざれば父兄をうらむ。其の余、夫婦親戚も亦しかり。たがひに堪忍せざれば、いかりうらみ出来て、父子兄弟夫婦親戚の間むつまじからず。此ゆゑに、人の行のわが心にかなはざることを、たがひに堪忍してうらみいからざれば、一家の内やはらぎしたしむ。是家をととのふる道なり。又人のあしきをばゆるして堪忍し、わが身には道をつくして、人に堪忍せらるる行をなすべからず。

現代語訳

家を治めるにも、忍の字を用いるべきです。忍とはこらえることで、堪忍することをいいます。おごりを抑えて欲をほしいままにしないのもこらえることです。また、自分の家の貧しさをこらえて、人のものをむさぼらないようにすべきです。およそ人は君子でなければ、自分の心にかなわないことが多いものです。堪忍しなければ、人の交わりは和らぎません。それなのに父兄は、子弟の自分への仕え方が足りず心にかなわないと子弟を責めます。子弟は、父兄の恵みが薄くて満足できないと父兄を恨みます。そのほかの夫婦や親戚もまた同じです。互いに堪忍しなければ、怒りや恨みが生じて、父子・兄弟・夫婦・親戚の間は睦まじくなくなります。ですから、人の行いが自分の心にかなわないことを、互いに堪忍して恨み怒らなければ、一家の内は和らぎ親しみます。これが家を整える道です。また人の悪いところは許して堪忍し、自分の身は道を尽くして、人に堪忍させるような行いをしてはいけません。

解説

家を治める鍵として「忍」の字を挙げます。欲やおごりをこらえること、貧しさをこらえて人のものをむさぼらないこと、そして家族の欠点をこらえることです。親は子の仕え方に不満を持ち、子は親の恵みの薄さを恨むという互いの不満の構図を示し、互いに堪忍すれば一家は和らぐと説きます。最後の一文、人を許しつつ自分は人に堪忍させるような振る舞いをするな、という両面の教えが要点です。家族の不和の多くは、相手に求めすぎることから始まります。

この章句が説くこと

忍堪忍家族和欲

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