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家道訓 / 巻之一・総論上

漢の明帝の弟東平王の、都に來朝せられしに、明帝の、汝國にありて何事か樂しきと問ひ給へば、東平王、國にありて善をすること最樂しと答へられしこと、むべなるかな。凡、富貴なるも貧賤なるも、其位に應じて善をなすべし。志だにあれば、貧賤にしても日々善行はる。善をする程樂しき事なし。つとめて善を行ひて、此樂を知るべし。財ををしみては善を行ひがたしと、古人いへるもむべなり。又無益のことに財をつひやすは愚なり。是善を行ひ人を救ふに志なければなり。

新字:漢の明帝の弟東平王の、都に来朝せられしに、明帝の、汝国にありて何事か楽しきと問ひ給へば、東平王、国にありて善をすること最楽しと答へられしこと、むべなるかな。凡、富貴なるも貧賤なるも、其位に応じて善をなすべし。志だにあれば、貧賤にしても日々善行はる。善をする程楽しき事なし。つとめて善を行ひて、此楽を知るべし。財ををしみては善を行ひがたしと、古人いへるもむべなり。又無益のことに財をつひやすは愚なり。是善を行ひ人を救ふに志なければなり。

書き下し

漢の明帝の弟東平王の、都に来朝せられしに、明帝の、汝国にありて何事か楽しきと問ひ給へば、東平王、国にありて善をすること最楽しと答へられしこと、むべなるかな。凡、富貴なるも貧賤なるも、其位に応じて善をなすべし。志だにあれば、貧賤にしても日々善行はる。善をする程楽しき事なし。つとめて善を行ひて、此楽を知るべし。財ををしみては善を行ひがたしと、古人いへるもむべなり。又無益のことに財をつひやすは愚なり。是善を行ひ人を救ふに志なければなり。

現代語訳

漢の明帝の弟の東平王が都に来朝されたとき、明帝が「そなたは国にあって何が楽しいか」とお尋ねになると、東平王が「国にあって善をすることがもっとも楽しい」とお答えになったのは、もっともなことです。およそ富貴な者も貧賤な者も、その位に応じて善をなすべきです。志さえあれば、貧賤であっても日々善は行えます。善をするほど楽しいことはありません。努めて善を行って、この楽しみを知るべきです。「財を惜しんでは善を行いがたい」と古人が言ったのももっともです。また無益なことに財を費やすのは愚かです。これは善を行い人を救うことに志がないからです。

解説

後漢の東平王劉蒼が兄の明帝に「善を為すは最も楽し」と答えた話は『後漢書』に見え、益軒はこれを善の楽しみの確かな証しとして挙げています。善をなすのは富貴な人の特権ではなく、志さえあれば貧しくても日々行えると言い、財を惜しむことと無益に費やすことの両方を戒めます。楽訓を著した益軒にとって、人生の楽しみの最上位にあるのが善を行うことでした。ボランティアや寄付に喜びを感じる人が多いのも、この楽しみの表れといえるでしょう。

この章句が説くこと

善楽しみ後漢書財志

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