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家道訓 / 巻之一・総論上

一武士たらん人は、武備に心を用ひて、兵具をとゝのへ備へ、損じたるをば修補し、常に帶佩せる大小刀、其外の刀弓矢鎗長刀など、時々ぬぐひみがき塵をはらひ、きよらかにすべし。又、金銀米錢なども、武備のため別にたくはへ置くべし。もし常の時財用不足して、急用ありとも、武備の爲にたくはへ置きしを取りて用ふべからず。凡武具は、他の器よりきよらかにし、にはかに事ある時、事缺けつまづかざるやうに、無事の時かねて調へ置くべし。おこたるべからず。にはかの時に、陣用意に及ばずして、事にのぞんでいそがはしからず、心しづかなるべし。武具も、無用の華美なる飾をなすべからず。

新字:一武士たらん人は、武備に心を用ひて、兵具をとゝのへ備へ、損じたるをば修補し、常に帯佩せる大小刀、其外の刀弓矢鎗長刀など、時々ぬぐひみがき塵をはらひ、きよらかにすべし。又、金銀米銭なども、武備のため別にたくはへ置くべし。もし常の時財用不足して、急用ありとも、武備の為にたくはへ置きしを取りて用ふべからず。凡武具は、他の器よりきよらかにし、にはかに事ある時、事欠けつまづかざるやうに、無事の時かねて調へ置くべし。おこたるべからず。にはかの時に、陣用意に及ばずして、事にのぞんでいそがはしからず、心しづかなるべし。武具も、無用の華美なる飾をなすべからず。

書き下し

一武士たらん人は、武備に心を用ひて、兵具をととのへ備へ、損じたるをば修補し、常に帯佩せる大小刀、其外の刀弓矢鎗長刀など、時々ぬぐひみがき塵をはらひ、きよらかにすべし。又、金銀米銭なども、武備のため別にたくはへ置くべし。もし常の時財用不足して、急用ありとも、武備の為にたくはへ置きしを取りて用ふべからず。凡武具は、他の器よりきよらかにし、にはかに事ある時、事欠けつまづかざるやうに、無事の時かねて調へ置くべし。おこたるべからず。にはかの時に、陣用意に及ばずして、事にのぞんでいそがはしからず、心しづかなるべし。武具も、無用の華美なる飾をなすべからず。

現代語訳

武士である人は、武備に心を用いて兵具を整えて備え、傷んだものは修理し、常に身に帯びる大小の刀、そのほかの刀・弓矢・槍・長刀などを時々拭い磨いて塵を払い、清らかにしておくべきです。また金銀や米銭なども、武備のために別にたくわえておくべきです。もし平常のときに財用が不足して急な用事があっても、武備のためにたくわえておいたものを取って用いてはいけません。およそ武具は、ほかの道具より清らかにし、急に事が起きたときに事欠いてつまずかないように、無事のときに前もって調えておくべきです。怠ってはいけません。急な時に陣の支度が間に合わず、事に臨んで慌てることのないよう、心を静かにしていられるようにすべきです。武具も、無用の華美な飾りをしてはいけません。

解説

太平の世が百年続いた正徳年間にあって、益軒は武士に、平時にこそ武具を手入れし、武備のための資金を別に蓄えておけと説きます。困っても武備の蓄えには手をつけるなという点や、武具に無用の飾りをするなという点に、実用を重んじる益軒の姿勢が表れています。何も起きていないときに備えておけば、いざというとき慌てずに済みます。非常用の資金を生活費と分けて確保し、防災用品を定期的に点検するという今の備えの考え方と同じです。

この章句が説くこと

武備備え武士用心倹約

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