実武一家言抄録 / 頭分は学び、将は愛育す
(三)凡頭分の者には務て書を讀しむ事、人を扱ふ身分は不學にては諸事に損多し、吳の孫權が呂蒙に三史を讀しめて名將に仕立たるとを以證とすべし、又總軍士は各其頭の下知を承て働く者なれば右のみ强て務しむるに及ず、只戰塲に臨で勇壯成を專一とす、總軍士をして悉く勇壯ならしむるとは即ち主將一人の撫御に在者なるが故に、兵法の大事は此撫御に置、誠懇別を盡して諸士を愛育するより緊要なるはなし、故に予が此一家言の開卷第一に此を論ず、讀者心を盡さずんばあるべからず、而其諸士を土着せしめたる上は、每月一兩度も猪狩漁獵等に出て、總軍水陸の兵法を敎、且軍令の嚴に用なるを知しめ、諸士の勇氣を引立べし、或は時々頭分の宅に遊で濁酒の宴などを催し、物を賜り恩を施して厚く親みを結べし、然れども嚴敷奢侈を戒め、若其家作等の度に越て廣大美麗成をば軍士に命じて即座に打毀させ、別に入用を賜りて質朴に造り直さしむべし、
新字:(三)凡頭分の者には務て書を読しむ事、人を扱ふ身分は不学にては諸事に損多し、呉の孫権が呂蒙に三史を読しめて名将に仕立たるとを以証とすべし、又総軍士は各其頭の下知を承て働く者なれば右のみ強て務しむるに及ず、只戦塲に臨で勇壮成を専一とす、総軍士をして悉く勇壮ならしむるとは即ち主将一人の撫御に在者なるが故に、兵法の大事は此撫御に置、誠懇別を尽して諸士を愛育するより緊要なるはなし、故に予が此一家言の開巻第一に此を論ず、読者心を尽さずんばあるべからず、而其諸士を土着せしめたる上は、毎月一両度も猪狩漁猟等に出て、総軍水陸の兵法を教、且軍令の厳に用なるを知しめ、諸士の勇気を引立べし、或は時々頭分の宅に遊で濁酒の宴などを催し、物を賜り恩を施して厚く親みを結べし、然れども厳敷奢侈を戒め、若其家作等の度に越て広大美麗成をば軍士に命じて即座に打毀させ、別に入用を賜りて質朴に造り直さしむべし、
書き下し
(三)凡頭分の者には務て書を讀しむ事、人を扱ふ身分は不學にては諸事に損多し、吳の孫權が呂蒙に三史を讀しめて名將に仕立たるとを以證とすべし、又總軍士は各其頭の下知を承て働く者なれば右のみ强て務しむるに及ず、只戰塲に臨で勇壯成を專一とす、總軍士をして悉く勇壯ならしむるとは即ち主將一人の撫御に在者なるが故に、兵法の大事は此撫御に置、誠懇別を盡して諸士を愛育するより緊要なるはなし、故に予が此一家言の開卷第一に此を論ず、讀者心を盡さずんばあるべからず、而其諸士を土着せしめたる上は、每月一兩度も猪狩漁獵等に出て、總軍水陸の兵法を敎、且軍令の嚴に用なるを知しめ、諸士の勇氣を引立べし、或は時々頭分の宅に遊で濁酒の宴などを催し、物を賜り恩を施して厚く親みを結べし、然れども嚴敷奢侈を戒め、若其家作等の度に越て廣大美麗成をば軍士に命じて即座に打毀させ、別に入用を賜りて質朴に造り直さしむべし、
現代語訳
(三)おおよそ頭分の者には、努めて書物を読ませるべきである。人を扱う身分で学問がないと、あらゆる面で損が多い。呉の孫権が呂蒙に三史を読ませて名将に仕立てたことを証拠とすべきである。また、一般の兵士はそれぞれの頭の指図を受けて働く者であるから、書を読むことまで強いて勤めさせる必要はない。ただ戦場に臨んで勇壮であることを第一とする。兵士全員を勇壮にするのは、主将ただ一人の撫御にかかっているので、兵法の大事はこの撫御に置き、誠意を尽くして家臣を愛し育てることより大切なことはない。だから私はこの一家言の巻頭第一にこれを論じた。読む者は心を尽くさなければならない。そのうえで、武士を土着させたなら、毎月一、二度も猪狩りや漁などに出て、水陸の兵法を全軍に教え、軍令が厳しくなければならない理由を知らしめ、武士たちの勇気を引き立てるべきである。あるいは時々頭分の家に遊びに行って濁り酒の宴を催し、物を与え恩を施して厚く親しみを結ぶべきである。ただし厳しく贅沢を戒め、もし家の造りなどが度を越えて広大で華美であれば、兵に命じてその場で打ち壊させ、別に費用を与えて質素に建て直させるべきである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『韓非子』難三第三十八桓公能く管仲の功を用いて、鉤を射るの怨みを忘る。文公能く寺人の言を聴きて、祛を斬るの罪を棄つ。... 是れ臣讎するに、而も明燭すこと能わず、多く之に資を假すに、自ら以て賢と為して戒めず。
-
易経・師卦周易 第七卦。坎下坤上。易経。師は、貞なり、丈人なれば吉にして咎无し。初六、師出づるに律を以てす。否らざれば臧くとも凶。九二、師に在りて中す、吉にして咎无し。王三たび命を錫う。六三、師或いは尸を輿す、凶。六四、師左き次る、咎无し。六五、田に禽有り、言を執るに利ろし、咎无し。長子師を帥い、弟子尸を輿す、貞なれども凶。上六、大君命有り、国を開き家を承けしむ、小人は用うる勿かれ。彖に曰く、
-
『春秋左氏伝』僖公二十八年 城濮の戦い晉の車七百乘、韅・靷・鞅・靽あり。晉侯有莘の虛に登りて以て師を觀て、曰く、「少長禮有り、其れ用ゐるべし」と。遂に其の木を伐りて以て其の兵を益す。己巳、晉の師莘北に陳し、胥臣下軍の佐を以て陳・蔡に當たる。子玉若敖の六卒を以て中軍に將たり。曰く、「今日必ず晉無からん」と。子西左に將たり、子上右に將たり。胥臣馬を蒙ふに虎皮を以てし、先づ陳・蔡を犯す。陳・蔡奔り、楚の右師潰ゆ。狐毛二旆を設けて之を退く。欒枝輿をして柴を曳きて偽り遁れしむ、楚の師之を馳す。原軫・郤溱中軍の公族を以て之を橫擊す。狐毛・狐偃上軍を以て子西を夾攻し、楚の左師潰ゆ。楚の師敗績す。子玉其の卒を收めて止まる、故に敗れず。晉の師三日館穀し、癸酉に及びて還る。甲午、衡雍に至り、王宮を踐土に作る。鄉役の三月、鄭伯楚に如きて其の師を致す。楚の師既に敗るるが為に懼れ、子人九をして成を晉に行はしむ。晉の欒枝入りて鄭伯と盟ふ。五月、丙午、晉侯鄭伯と衡雍に盟ふ。丁未、楚の俘を王に獻ず、駟介百乘、徒兵千。鄭伯王に傅く、平禮を用ゐるなり。
-
尚書・牧誓時れ甲子の昧爽、王朝に商の郊の牧野に至り、乃ち誓ふ。王左に黄鉞(こうえつ)を杖つき、右に白旄(はくぼう)を秉(と)りて以て麾(さしまね)きて、曰く、「逖(とほ)いかな西土の人。」王曰く、「嗟(ああ)、我が友邦の冢君、御事・司徒・司馬・司空・亜・旅・師氏・千夫長・百夫長、及び庸・蜀・羌・髳(ぼう)・微・盧・彭・濮の人、爾の戈を称げ、爾の干を比(なら)べ、爾の矛を立てよ、予其れ誓はん。」王曰く、「古人言へる有り、『牝雞は晨(あした)すること無し。牝雞の晨するは、惟れ家の索(つ)くるなり』と。今商王受、惟れ婦の言を是れ用ふ。昏(くら)くして厥の肆祀を棄てて、答へず。昏くして厥の遺王父母弟を弃てて、迪(みちび)かず。乃ち惟れ四方の多罪逋逃(ほとう)、是れ崇び是れ長じ、是れ信じ是れ使ひ、是れ以て大夫卿士と為し、百姓に暴虐し、以て商邑に姦宄せしむ。今予発、惟れ恭しく天の罰を行ふ。今日の事、六歩・七歩に愆(す)ぎずして、乃ち止まりて斉(ととの)へよ。夫子勖(つと)めよや。四伐・五伐・六伐・七伐に愆ぎずして、乃ち止まりて斉へよ。勖めよや夫子。尚はくは桓桓として、虎の如く、貔(ひ)の如く、熊の如く、羆(ひ)の如く、商の郊に于いてせよ。克く奔るものを御(ふせ)ぐこと弗く、以て西土に役せしめよ。勖めよや夫子。爾の勖めざる所は、其れ爾の躬に于いて戮有らん。」
-
史記 淮南衡山列伝呂后諸呂を王とし、以て劉氏を危うくせんと欲す、辟陽侯争はず、罪の三なり。臣謹んで天下の為に賊臣辟陽侯を誅し、母の仇に報ゆ、謹んで闕下に伏して罪を請ふ」と。孝文其の志を傷み、親の為の故に、治めず、厲王を赦す。是の時に当たり、薄太后及び太子諸大臣皆厲王を憚る、厲王此を以て国に帰りて益々驕恣にして、漢の法を用ひず、出入に警蹕を称し、制と称し、自ら法令を為り、天子に擬す。六年、男子但等七十人をして棘蒲侯柴武の太子奇と謀り、輂車四十乗を以て谷口に反せしめ、人をして閩越・匈奴に使ひせしむ。事覚り、之を治め、使ひをして淮南王を召さしむ。淮南王長安に至る。「丞相臣張倉・典客臣馮敬・行御史大夫事宗正臣逸・廷尉臣賀・備盗賊中尉臣福昧死して言ふ。淮南王長先帝の法を廃し、天子の詔を聴かず、居処度無く、黄屋蓋の乗輿を為り、出入天子に擬し、擅に法令を為り、漢の法を用ひず。及び置く所の吏、其の郎中春を以て丞相と為し、漢の諸侯の人及び罪有りて亡ぐる者を聚収し、匿して与に居り、為に家室を治め、其の財物爵禄田宅を賜ひ、爵或いは関内侯に至り、奉ずるに二千石を以てす、当に得べからざる所なり、以て為す有らんと欲す。大夫但・士伍開章等七十人棘蒲侯の太子奇と謀反し、以て宗廟社稷を危うくせんと欲す。開章をして陰に長に告げしめ、与に謀りて閩越及び匈奴に使ひして其の兵を発せしめんとす。開章淮南に之きて長に見ゆ、長数々与に坐して語り飲食し、為に家室を為り婦を娶らしめ、二千石の俸を以て之を奉ず。開章人をして但に告げしむ、已に之を王に言ふと。春使ひをして但等に報ぜしむ。吏覚知し、長安の尉奇等をして往きて開章を捕へしむ。長匿して予へず、故の中尉蕑忌と謀り、殺して以て口を閉ざす。
-
『政談』大坂在番の事且又た主人死する上は主なき家来を御城内に差置き難きと云ふことか、小の御番城は家来計りにて守らするもあるなり、相番の番頭預りて下知せは苦しかるまじきことなり、惣じて大坂在番は余りに法厳しくて宜しからざるやうなり、凡て人は唯々居られぬものなり、御番所は各別、面々の小屋にては一組独吟のうたひは苦しかるまじきことなり、笛又は楽の笙ひちりきなど覚えたらん人は是亦苦しかるまじきことなり、然るに一切に鳴物を禁して忌中に似たるも宜しからざることなり、御番衆なりをしつめて不断に居る故食物に物入り夥し、或は博奕などすることに成るなり、惣じて大名の屋敷にても、余り法厳しき家中は必す博奕淫乱はやる者なり、

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見る