神皇正統記 / 巻一 地神第三代 瓊々杵尊
神勅あきらかにして、詞つゞまやかにむねひろし。あまさへ神器にあらはれ給へり。いとかたじけなき事をや。
書き下し
神勅あきらかにして、詞つゞまやかにむねひろし。あまさへ神器にあらはれ給へり。いとかたじけなき事をや。
現代語訳
神勅は明らかで、言葉は簡潔でありながら趣旨は広い。そのうえ神器という形にも現れておられる。まことにかたじけないことである。
解説
天孫降臨の神勅に対する親房の評で、ごく短いが、この書の価値観がよく出ている。「詞つゞまやかにむねひろし」、言葉は短いが趣旨は広い。親房は聖徳太子の十七条憲法を評するときにも「むねをつゞまやかにして」と、要点を簡潔にまとめたことを称えている。長い説明より、短く広く効く言葉を上に置く。これが親房の一貫した物差しである。さらに神勅は言葉だけで終わらず、「神器にあらはれ給へり」、鏡・玉・剣という形ある物に込められている。言葉は忘れられても、目に見える物があれば、それを手にするたびに意味が思い出される。理念を短い言葉にし、しかも形あるものに託して代々伝える。組織の理念が掛け声で終わってしまうのは、言葉が長すぎるか、形に落とし込まれていないかのどちらかであることが多い。
関連する章句
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『神皇正統記』巻一 地神第三代 瓊々杵尊神剣をひきさげては不順るものをたひらげ給。」と勅ましましけるとぞ。 此国の神霊として、皇統一種たゞしくまします事、まことにこれらの勅にみえたり。
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『神皇正統記』巻一 地神第三代 瓊々杵尊かくてもろもろの悪神をばつみなへ、まつろへるをばほめて、天上にのぼりて返こと申給。大物主の神事代主の神、相共に八十万の神をひきゐて、天にまうづ。太神ことにほめ給き。「宜八十万の神を領て皇孫をまぼりまつれ。」とて、先かへしくだし給けり。其後、天照太神、高皇産霊尊相計て皇孫をくだし給。八百万の神、勅を承て御供につかうまつる。諸神の上首三十二神あり。其中に五部神と云は、天児屋命天太玉命天鈿女命石凝姥命玉屋命也。此中にも中臣・忌部の二神はむねと神勅をうけて皇孫をたすけまぼり給。又三種の神宝をさづけまします。先あらかじめ、皇孫に勅して曰、「葦原千五百秋之瑞穂国是吾子孫可主之地也なり。宜爾皇孫就而治焉。行給矣。宝祚之隆当与天壌無窮者矣。」又太神御手に宝鏡をもち給、皇孫にさづけ祝て、「吾児視此宝鏡当猶視吾。可与同床共殿以為斎鏡。」との給。八坂瓊の曲玉・天の叢雲の剣をくはへて三種とす。又「此鏡の如に分明なるをもて、天下に照臨給へ。八坂瓊のひろがれるが如く曲妙をもて天下をしろしめせ。
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『神皇正統記』巻一 三種の神器三種の神器世に伝こと、日月星の天にあるにおなじ。鏡は日の体なり。玉は月の精也。剣は星の気也。ふかき習あるべきにや。抑、彼の宝鏡はさきにしるし侍石凝姥の命の作給へりし八咫の御鏡、玉は八坂瓊の曲玉、々屋の命作給へるなり。剣はすさのをの命のえ給て、太神にたてまつられし叢雲の剣也。此三種につきたる神勅は正く国をたもちますべき道なるべし。鏡は一物をたくはへず。私の心なくして、万象をてらすに是非善悪のすがたあらはれずと云ことなし。其すがたにしたがひて感応するを徳とす。これ正直の本源なり。玉は柔和善順を徳とす。慈悲の本源也。剣は剛利決断を徳とす。智恵の本源也。此三徳を翕受ずしては、天下のをさまらんことまことにかたかるべし。
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『神皇正統記』巻一 神国の名大日本者神国也。天祖はじめて基をひらき、日神ながく統を伝へ給ふ。我国のみ此事あり。異朝には其たぐひなし。此故に神国と云ふ也。
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『神皇正統記』巻一 地神第二代 天忍穂耳尊第二代、正哉吾勝々の速日天忍穂耳尊。高皇産霊の尊の女栲幡千々姫の命にあひて、饒速日尊・瓊々杵尊をうましめ給て、吾勝尊葦原中州にくだりますべかりしを、御子うみ給しかば、「かれを下すべし。」と申給て、天上にとゞまります。まづ、饒速日の尊をくだし給し時、外祖高皇産霊尊、十種の瑞宝を授給。瀛都鏡一、辺津鏡一、八握剣一、生玉一、死反玉一、足玉一、道反玉一、蛇比礼一、蜂比礼一、品の物比礼一、これなり。此みことはやく神さり給にけり。凡国の主とてはくだし給はざりしにや。吾勝尊くだり給べかりし時、天照太神三種の神器を伝へ給。のちに又瓊々杵尊にも授ましまししに、饒速日尊はこれをえ給はず。しかれば日嗣の神にはましまさぬなるべし。天照太神・吾勝尊は天上に止り給へど、地神の第一、二にかぞへたてまつる。其始天下の主たるべしとてうまれ給しゆゑにや。
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『神皇正統記』巻五 第八十二代 後鳥羽院代々の天皇のとほき御まぼりとして国土のあまねき光となり給へり。うせにし宝剣はもとより如在のことゝぞ申侍べき。神璽は八坂瓊の曲玉と申す。神代より今にかはらず、代々の御身をはなれぬ御まぼりなれば、海中よりうかび出給へるもことわり也。三種の御ことはよく心え奉るべきなり。なべて物しらぬたぐひは、上古の神鏡は天徳・長久の災にあひ、草薙の宝剣は海にしづみにけりと申伝ること侍にや。返々ひがこと也。此国は三種の正体をもちて眼目とし、福田とするなれば、日月の天をめぐらん程は一もかけ給まじき也。天照太神の勅に「宝祚のさかえまさんことあめつちときはまりなかるべし。」と侍れば、いかでか疑奉るべき。今よりゆくさきもいとたのもしくこそおもひ給れ。 平氏いまだ西海にありしほど、源義仲と云物、まづ京都に入、兵威をもて世の中のことをおさへおこなひける。征夷将軍に任ず。此官は昔坂上の田村丸までは東夷征伐のために任ぜられき。
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