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法華経 / 信解品第四(2)

「世尊,我等今者樂說譬喻、以明斯義,譬若有人,年既幼稚,捨父逃逝,久住他國,或十、二十、至五十歲,年既長大,加復窮困,馳騁四方、以求衣食,漸漸遊行,遇向本國。其父先來、求子不得,中止一城。其家大富,財寶無量,金、銀、琉璃、珊瑚、琥珀、玻璃、珠、等,其諸倉庫,悉皆盈溢,多有僮仆、臣佐、吏民,象馬、車乘、牛羊、無數,出入息利,乃遍他國,商估賈客、亦甚眾多。時貧窮子、遊諸聚落,經歷國邑,遂到其父所止之城。父母念子,與子離別五十餘年,而未曾向人說如此事,但自思惟,心懷悔恨,自念老朽,多有財物,金銀、珍寶,倉庫盈溢,無有子息,一旦終沒,財物散失,無所委付,是以殷勤、每憶其子。復作是念:『我若得子、委付財物,坦然快樂,無復憂慮。』」

新字:「世尊,我等今者楽説譬喩、以明斯義,譬若有人,年既幼稚,捨父逃逝,久住他国,或十、二十、至五十歳,年既長大,加復窮困,馳騁四方、以求衣食,漸漸遊行,遇向本国。其父先来、求子不得,中止一城。其家大富,財宝無量,金、銀、琉璃、珊瑚、琥珀、玻璃、珠、等,其諸倉庫,悉皆盈溢,多有僮仆、臣佐、吏民,象馬、車乗、牛羊、無数,出入息利,乃遍他国,商估賈客、亦甚衆多。時貧窮子、遊諸聚落,経歴国邑,遂到其父所止之城。父母念子,与子離別五十余年,而未曽向人説如此事,但自思惟,心懐悔恨,自念老朽,多有財物,金銀、珍宝,倉庫盈溢,無有子息,一旦終没,財物散失,無所委付,是以殷勤、毎憶其子。復作是念:『我若得子、委付財物,坦然快楽,無復憂慮。』」

書き下し

「世尊、我等今者、譬喩を説きて以て斯の義を明らかにせんと楽う。譬えば人有りて、年既に幼稚にして、父を捨てて逃げ逝き、久しく他国に住すること、或いは十、二十、五十歳に至り、年既に長大にして、加えて復窮困し、四方に馳騁して、以て衣食を求め、漸漸に遊行して、遇たま本国に向かう。其の父は先に来たりて、子を求むれども得ず、中ごろ一城に止まれり。其の家は大富にして、財宝無量なり、金・銀・琉璃・珊瑚・琥珀・玻璃・珠等あり、其の諸の倉庫は、悉く皆盈溢し、多く僮僕・臣佐・吏民あり、象・馬・車乗・牛羊、無数なり、出入息利は、乃ち他国に遍く、商估・賈客も亦甚だ衆多なり。時に貧窮の子、諸の聚落に遊び、国邑を経歴して、遂に其の父の止まる所の城に到る。父母は子を念い、子と離別すること五十余年なるも、未だ曽て人に此の如き事を説かず、但自ら思惟して、心に悔恨を懐く、自ら念えらく、老朽して、多く財物あり、金銀珍宝、倉庫盈溢すれども、子息無し、一旦終没せば、財物散失して、委付する所無からん、是を以て殷勤に、毎に其の子を憶う、と。復是の念を作す、『我若し子を得て、財物を委付せば、坦然として快楽し、復憂慮無けん』と。」

現代語訳

「世尊、私たちは今、譬喩を説いてこの意味を明らかにしたいと思います。たとえば、ある人が幼い頃に父を捨てて逃げ出し、長く他国に住み、十年、二十年、五十歳にまでなりました。年をとり、さらに貧しくなり、四方を駆け回って衣食を求め、少しずつ旅をして、たまたま故郷の国に向かいました。その父は先に来ていて、子を探しても得られず、途中のある城に留まっていました。その家は大金持ちで、財宝は無量、金・銀・瑠璃・珊瑚・琥珀・玻璃・真珠などが、倉庫にあふれ、多くの使用人や家臣、役人や民、象・馬・車・牛羊が数知れず、貸し付けの利息は他国にまで広がり、商人や行商人もたいへん大勢います。そのとき貧しい子は、あちこちの村を巡り、国や町を経て、ついに父の留まる城に着きました。父は子を思い、子と別れてから五十年余り、一度も人にこのことを話さず、ただ自ら思い、心に悔いと恨みを抱いていました。自ら思うには、年老い衰え、多くの財物、金銀や珍宝が倉庫にあふれているのに、子がいない。ある日死んだら、財物は散り失せ、託す相手がいない。だから心をこめて、いつも我が子を思い出していたのです。さらにこう思いました。もし子を得て財物を託せたなら、安らかに楽しく、もう憂いはなくなるだろう、と。」

解説

四大弟子が語る「長者窮子」の譬喩の入り口です。幼い頃に父を捨てて出奔した子が、五十年ほど他国をさまよって貧しくなり、故郷の近くまで戻ってきます。一方、父は大富豪となって、子を探し続け、財産を託せる後継ぎのいない不安を抱いています。窮子は衆生、長者は仏を表すとされます。子が自分の出自を忘れ、父が相手を思い続けているという、すれ違いの構図です。組織でも、本来は大きな役割を託すつもりの人材が、自己評価の低さから挑戦を避けてしまう例があり、その背景を考える手がかりになります。
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この章句が説くこと

長者窮子窮子後継ぎ財物出奔委付

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