法華経 / 譬喻品第三(13)
譬如長者、有一大宅,其宅久故,而復頓敝,堂舍高危,柱根摧朽,梁棟傾斜,基陛隤毀, 牆壁圯坼,泥塗褫落,覆苫亂墜,椽梠差脫,周障屈曲,雜穢充遍。有五百人,止住其中。 鴟梟雕鷲、烏鵲鳩鴿、蚖蛇蝮蠍,蜈蚣蚰蜒,守宮百足,狖狸鼷鼠,諸惡蟲輩,交橫馳走。 屎尿臭處,不淨流溢,蜣蜋諸蟲、而集其上。狐狼野干,咀嚼踐蹋,嚌齧死屍、骨肉狼藉。 由是群狗、競來搏撮,饑羸慞惶,處處求食。鬥諍摣掣,啀喍嗥吠,其舍恐怖,變狀如是。 處處皆有,魑魅魍魎,夜叉惡鬼,食啖人肉,毒蟲之屬,諸惡禽獸,孚乳產生,各自藏護。 夜叉競來,爭取食之,食之既飽,惡心轉熾,鬥諍之聲,甚可怖畏。鳩槃荼鬼、蹲踞土埵, 或時離地,一尺二尺,往返遊行,縱逸嬉戲,捉狗兩足,撲令失聲,以腳加頸,怖狗自樂。 復有諸鬼,其身長大,裸形黑瘦,常住其中,發大惡聲,叫呼求食。復有諸鬼,其咽如針。 復有諸鬼,首如牛頭,或食人肉,或復啖狗,頭髮蓬亂,殘害兇險,饑渴所逼,叫喚馳走。 夜叉餓鬼,諸惡鳥獸,饑急四向,窺看窗牖,如是諸難,恐畏無量。是朽故宅,屬於一人。 其人近出,未久之間,於後舍宅,忽然火起,四面一時,其炎俱熾。棟梁椽柱、爆聲震裂,
新字:譬如長者、有一大宅,其宅久故,而復頓敝,堂舎高危,柱根摧朽,梁棟傾斜,基陛隤毀, 牆壁圯坼,泥塗褫落,覆苫乱墜,椽梠差脱,周障屈曲,雑穢充遍。有五百人,止住其中。 鴟梟雕鷲、烏鵲鳩鴿、蚖蛇蝮蠍,蜈蚣蚰蜒,守宮百足,狖狸鼷鼠,諸悪虫輩,交横馳走。 屎尿臭処,不浄流溢,蜣蜋諸虫、而集其上。狐狼野干,咀嚼践蹋,嚌齧死屍、骨肉狼藉。 由是群狗、競来搏撮,饑羸慞惶,処処求食。鬥諍摣掣,啀喍嗥吠,其舎恐怖,変状如是。 処処皆有,魑魅魍魎,夜叉悪鬼,食啖人肉,毒虫之属,諸悪禽獣,孚乳産生,各自蔵護。 夜叉競来,争取食之,食之既飽,悪心転熾,鬥諍之声,甚可怖畏。鳩槃荼鬼、蹲踞土埵, 或時離地,一尺二尺,往返遊行,縦逸嬉戯,捉狗両足,撲令失声,以脚加頸,怖狗自楽。 復有諸鬼,其身長大,裸形黒痩,常住其中,発大悪声,叫呼求食。復有諸鬼,其咽如針。 復有諸鬼,首如牛頭,或食人肉,或復啖狗,頭髪蓬乱,残害兇険,饑渇所逼,叫喚馳走。 夜叉餓鬼,諸悪鳥獣,饑急四向,窺看窗牖,如是諸難,恐畏無量。是朽故宅,属於一人。 其人近出,未久之間,於後舎宅,忽然火起,四面一時,其炎倶熾。棟梁椽柱、爆声震裂,
書き下し
譬えば長者の、一の大宅有り、其の宅は久しく故りて、復頓敝し、堂舎は高く危うく、柱根は摧け朽ち、梁棟は傾斜し、基陛は隤毀し、 牆壁は圯け坼け、泥塗は褫け落ち、覆苫は乱れ墜ち、椽梠は差い脱け、周障は屈曲して、雑穢充遍せり。五百人有りて、其の中に止住す。 鴟梟・雕鷲、烏鵲・鳩鴿、蚖蛇・蝮蠍、蜈蚣・蚰蜒、守宮・百足、狖狸・鼷鼠、諸の悪虫の輩、交横して馳走す。 屎尿の臭き処に、不浄流溢し、蜣蜋の諸虫、其の上に集まる。狐狼・野干、咀嚼し践蹋し、死屍を嚌み齧り、骨肉狼藉たり。 是に由りて群狗、競い来たりて搏撮し、饑羸し慞惶して、処処に食を求む。闘諍し摣掣し、啀喍し嗥吠し、其の舎の恐怖、変状此の如し。 処処に皆、魑魅・魍魎、夜叉・悪鬼有りて、人肉を食啖し、毒虫の属、諸の悪禽獣、孚乳し産生し、各自ら蔵護す。 夜叉競い来たりて、争い取りて之を食らい、食らうこと既に飽きて、悪心転た熾んに、闘諍の声、甚だ怖畏す可し。鳩槃荼鬼、土埵に蹲踞し、 或る時は地を離るること、一尺二尺、往返遊行して、縦逸嬉戯し、狗の両足を捉え、撲ちて声を失わしめ、脚を以て頸に加え、狗を怖れしめて自ら楽しむ。 復諸の鬼有り、其の身長大にして、裸形黒痩、常に其の中に住し、大悪声を発して、叫呼して食を求む。復諸の鬼有り、其の咽は針の如し。 復諸の鬼有り、首は牛頭の如く、或いは人肉を食らい、或いは復狗を啖らい、頭髪蓬乱し、残害兇険にして、饑渇に逼られ、叫喚し馳走す。 夜叉・餓鬼、諸の悪鳥獣、饑急して四向し、窓牖を窺看す。是の如き諸難、恐畏無量なり。是の朽故の宅は、一人に属す。 其の人近ごろ出でて、未だ久しからざる間に、後に舎宅に、忽然として火起こり、四面一時に、其の炎倶に熾んなり。棟梁・椽柱、爆声震裂し、
現代語訳
たとえば長者がいて、大きな屋敷を持っていました。その屋敷は古くから傷み、さらに崩れかけ、堂や舎は高く危うく、柱の根は折れて朽ち、梁や棟は傾き、土台や階段は崩れ、壁はひび割れて剥がれ、泥の塗りは落ち、屋根の覆いは乱れて落ち、垂木は外れ、囲いは曲がり、あらゆる汚れが満ちています。そこに五百人が住んでいます。鴟梟、鷲、烏、鵲、鳩、蛇、蝮、蠍、ムカデ、ヤモリ、ねずみなど、さまざまな悪い虫や獣が、入り乱れて走り回っています。糞尿の臭い場所には不浄があふれ、糞虫などがその上に集まっています。狐や狼、野干が噛み砕いて踏みつけ、死体を食いちぎり、骨肉が散乱しています。そのため犬たちが競って来て奪い合い、飢えて痩せ、おびえて、あちこちで食を求めます。争い、引っ張り合い、牙をむいて吠え、その家の恐ろしさはこのような有様です。あちこちに魑魅魍魎、夜叉、悪鬼がいて、人の肉を食らい、毒虫の類や悪い鳥獣が、卵を産み乳を飲ませ、それぞれ自分の子を隠し守っています。夜叉が競って来て、争ってこれを奪い食らい、食べ飽きると悪心はますます盛んになり、争う声はまことに恐ろしいものです。鳩槃荼鬼は土の盛り上がりにうずくまり、ときには地面から一尺二尺ほど離れて、行ったり来たりして歩き回り、気ままに遊び戯れ、犬の両足をつかんで打ちつけて声を出せなくし、足を首にかけて犬を怖がらせて楽しんでいます。また別の鬼たちは、体が大きく、裸で黒く痩せ、常にそこにいて、大きな悪い声を出し、叫んで食べ物を求めます。また別の鬼たちは、喉が針のように細い。また別の鬼たちは、頭が牛の頭のようで、人の肉を食べたり、犬を食べたりし、頭髪は乱れ、残酷で凶悪で、飢えと渇きに迫られて、叫びながら走り回ります。夜叉、餓鬼、さまざまな悪い鳥獣が、飢えて焦り、四方に向かって窓をのぞき見ています。このような災難は、恐ろしさが限りありません。この朽ち古びた屋敷は、一人の人の所有です。その人は近ごろ外出して、まもなく、後で屋敷に突然火が起こり、四面から同時に炎が盛んに燃えます。棟や梁、垂木や柱は、爆ぜる音をたてて裂け、
解説

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法華経・譬喻品第三(7)「舎利弗、若し国邑聚落に、大長者有り、其の年衰邁にして、財富無量、多く田宅、及び諸の僮僕有り。其の家広大にして、唯一門のみ有り、多くの人衆、一百、二百、乃至五百人、其の中に止住す。堂閣朽故し、牆壁隤落し、柱根腐敗し、梁棟傾危して、周匝して倶時に、欻然として火起こり、舎宅を焚焼す。長者の諸子、若しは十、二十、或いは三十に至るまで、此の宅の中に在り。長者是の大火の四面より起こるを見て、即ち大いに驚怖し、是の念を作す、『我は此の焼くる所の門より、安穏に出づることを得と雖も、而も諸子等は、火宅の内に於いて、嬉戯に楽著し、覚らず知らず、驚かず怖れず、火来たりて身に逼り、苦痛己に切なるも、心に厭患せず、出づる意を求むること無し』と。」 「舎利弗、是の長者是の思惟を作す、『我が身手に力有り、当に衣祴を以て、若しは几案を以て、舎より之を出だすべし』と。復更に思惟す、『是の舎は、唯一門のみ有りて、復狭小なり。諸子は幼稚にして、未だ識る所有らず、戯処に恋著し、或いは当に墮落して、火の為に焼かるべし。我当に為に怖畏の事を説き、此の舎已に焼く、宜しく時に疾く出づべし、火の為に焼害せらしむること勿れと言うべし』と。是の念を作し已りて、思惟する所の如く、具さに諸子に告ぐ、汝等速やかに出でよ、と。父憐愍して、善言をもて誘喩すと雖も、而も諸子等は嬉戯に楽著し、信受を肯んぜず、驚かず畏れず、了に出づる心無し。亦復何者か是れ火、何者か是れ舎、云何なるを失と為すかを知らず、但東西に走戯して、父を視るのみ。」
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法華経・譬喻品第三(15)空地に到りて、諸の苦難を離る。長者子の火宅を出でて、四衢に住するを見、師子座に坐して、自ら慶びて言わく、我今快楽なり、と。 此の諸子等は、生育甚だ難きに、愚小無知にして、険宅に入れり。多くの毒虫、魑魅畏る可く、大火猛炎、四面に倶に起こる、 而るに此の諸子は、嬉戯に貪著せり、我已に之を救い、脱難を得しめたり。是の故に諸人よ、我今快楽なり、と。爾の時、諸子は、父の安坐するを知りて、 皆父の所に詣りて、父に白して言わく、願わくは我等に、三種の宝車を賜え。前に許したまいし所の如く、諸子出で来たらば、当に三車を以て、汝が欲する所に随うべし、と。 今正に是れ時なり、惟だ垂れて給与したまえ。長者は大富にして、庫蔵衆多なり、金銀・琉璃・硨磲・瑪瑙、衆の宝物を以て、諸の大車を造る。 荘校厳飾し、周匝して欄楯あり、四面に鈴を懸け、金縄交絡す。真珠の羅網、其の上に張り施し、金華の諸瓔、処処に垂下す。 衆彩雑飾して、周匝して囲繞し、柔軟の繒纊を、以て茵蓐と為す。上妙の細畳、価値千億、鮮白浄潔にして、以て其の上を覆う。 大白牛有り、肥壮にして力多く、形体姝好にして、以て宝車に駕す。多くの儐従ありて、之を侍衛す。是の妙車を以て、等しく諸子に賜う。 諸子是の時、歓喜踴躍し、是の宝車に乗りて、四方に遊び、嬉戯快楽し、自在無礙なり。舎利弗に告ぐ、我も亦是の如し、 衆聖の中尊、世間の父なり。一切衆生は、皆是れ吾が子なるに、深く世楽に著して、慧心有ること無し。三界は安きこと無く、猶火宅の如し、 衆苦充満して、甚だ怖畏す可し、常に生老・病死の憂患有り、是の如き等の火、熾燃して息まず。如来は已に離れたり、三界の火宅を、 寂然として閑居し、林野に安処す。今此の三界は、皆是れ我が有なり、其の中の衆生は、悉く是れ吾が子なり。而るに今此の処は、多く諸の患難あり、
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法華経・譬喻品第三(8)「爾の時、長者即ち是の念を作す、『此の舎已に大火の焼く所と為る、我及び諸子若し時に出でずば、必ず焚かるる所と為らん、我今当に方便を設け、諸子等をして斯の害を免るることを得しむべし』と。父、諸子の先の心に各好む所有り、種種の珍玩奇異の物には、情必ず楽著せんと知れり。而して之に告げて言わく、『汝等が玩好する所の、稀有にして得難きもの、汝若し取らずば、後に必ず憂悔せん。此の如き種種の羊車・鹿車・牛車、今門外に在り、以て遊戯す可し。汝等此の火宅に於いて、宜しく速やかに出で来たるべし、汝が欲する所に随いて、皆当に汝に与うべし』と。爾の時、諸子、父の説く所の珍玩の物を聞き、其の願いに適うが故に、心各勇鋭にして、互いに相推排し、競い共に馳走して、争いて火宅を出づ。是の時、長者、諸子等の安穏に出づることを得て、皆四衢道中の、露地に坐し、復障礙無きを見て、其の心泰然として、歓喜踴躍す。時に諸子等各父に白して言わく、『父先に許したまいし玩好の具、羊車・鹿車・牛車、願わくは時に賜与したまえ』と。」
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