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法華経 / 譬喻品第三(8)

「爾時長者即作是念:『此舍已為大火所燒,我及諸子若不時出,必為所焚,我今當設方便,令諸子等得免斯害。』父知諸子、先心各有所好,種種珍玩奇異之物,情必樂著。而告之言:『汝等所可玩好、稀有難得,汝若不取,後必憂悔。如此種種羊車、鹿車、牛車,今在門外,可以遊戲。汝等於此火宅、宜速出來,隨汝所欲,皆當與汝。』爾時諸子聞父所說珍玩之物,適其願故,心各勇銳,互相推排,競共馳走,爭出火宅。是時長者見諸子等安隱得出,皆於四衢道中、露地而坐,無復障礙,其心泰然,歡喜踴躍。時諸子等各白父言:『父先所許玩好之具,羊車、鹿車、牛車,願時賜與。』」

新字:「爾時長者即作是念:『此舎已為大火所焼,我及諸子若不時出,必為所焚,我今当設方便,令諸子等得免斯害。』父知諸子、先心各有所好,種種珍玩奇異之物,情必楽著。而告之言:『汝等所可玩好、稀有難得,汝若不取,後必憂悔。如此種種羊車、鹿車、牛車,今在門外,可以遊戯。汝等於此火宅、宜速出来,随汝所欲,皆当与汝。』爾時諸子聞父所説珍玩之物,適其願故,心各勇鋭,互相推排,競共馳走,争出火宅。是時長者見諸子等安隠得出,皆於四衢道中、露地而坐,無復障礙,其心泰然,歓喜踴躍。時諸子等各白父言:『父先所許玩好之具,羊車、鹿車、牛車,願時賜与。』」

書き下し

「爾の時、長者即ち是の念を作す、『此の舎已に大火の焼く所と為る、我及び諸子若し時に出でずば、必ず焚かるる所と為らん、我今当に方便を設け、諸子等をして斯の害を免るることを得しむべし』と。父、諸子の先の心に各好む所有り、種種の珍玩奇異の物には、情必ず楽著せんと知れり。而して之に告げて言わく、『汝等が玩好する所の、稀有にして得難きもの、汝若し取らずば、後に必ず憂悔せん。此の如き種種の羊車・鹿車・牛車、今門外に在り、以て遊戯す可し。汝等此の火宅に於いて、宜しく速やかに出で来たるべし、汝が欲する所に随いて、皆当に汝に与うべし』と。爾の時、諸子、父の説く所の珍玩の物を聞き、其の願いに適うが故に、心各勇鋭にして、互いに相推排し、競い共に馳走して、争いて火宅を出づ。是の時、長者、諸子等の安穏に出づることを得て、皆四衢道中の、露地に坐し、復障礙無きを見て、其の心泰然として、歓喜踴躍す。時に諸子等各父に白して言わく、『父先に許したまいし玩好の具、羊車・鹿車・牛車、願わくは時に賜与したまえ』と。」

現代語訳

「そのとき長者はこう思いました。この家はすでに大火に焼かれている。私と子どもたちがもし時に出なければ、必ず焼かれてしまう。私は今、方便を設けて、子どもたちにこの害を免れさせよう。父は、子どもたちが先から、それぞれ好むものがあることを知っており、さまざまな珍しい遊び道具や奇異なものには、必ず心が惹かれるとわかっていました。そこで彼らに言いました。あなたたちが好んで遊ぶもの、珍しく得がたいものがある。もし取らなければ、後で必ず悔やむだろう。このような羊車、鹿車、牛車が、今、門の外にある。これで遊べるよ。あなたたちはこの火の家から、急いで出てきなさい。望みのままに、皆あなたたちに与えよう、と。そのとき子どもたちは、父の言う珍しい遊び道具を聞いて、願いにかなったので、心がそれぞれ勇み立ち、押し合い、競って走り、争って火の家を出ました。このとき長者は、子どもたちが安全に出て、皆四つ辻の道の露地に座り、もうさわりがないのを見て、心は安らかで、喜び躍りました。そのとき子どもたちはそれぞれ父に言いました。お父さんが先に約束した遊び道具、羊車、鹿車、牛車を、どうか今お与えください。」

解説

長者は、正論の警告では子どもたちが動かないと見抜き、方便を設けます。子どもたちが欲しがっている羊車・鹿車・牛車が門の外にあると告げると、子どもたちは争って外へ飛び出します。ここでの方便は、相手が今ほしがっているものを足がかりにして、危険から出させる工夫です。人を動かすには、こちらの正しさを押し通すより、相手の関心に寄り添う入り口が必要だ、と読めます。ただし、この方便が最後まで相手を裏切らない誠実さに支えられている点が、次の節で明らかになります。
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この章句が説くこと

方便羊車鹿車牛車四衢道関心

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