抱朴子外篇 / 自敘
昔大安中,石冰作亂,六州之地,柯振葉靡,違正黨逆。義軍大都督邀洪為將兵都尉,累見敦迫,既桑梓恐虜,禍深憂大。古人有急疾之義,又畏軍法,不敢任志,遂募合數百人,與諸軍旅進。曾攻賊之別將,破之日,錢帛山積,珍玩蔽地,諸軍莫不放兵收拾財物,繼轂連擔。洪獨約令所領,不得妄離行陳。士有摭得衆者,洪即斬之以徇。於是無敢委杖,而果有伏賊數百,出傷諸軍。諸軍悉發,無部隊,皆人馬負重,無復戰心。遂致驚亂,死傷狼藉,殆欲不振。獨洪軍整齊轂張,無所損傷。以救諸軍之大崩,洪有力焉。後別戰斬賊小帥,多獲甲首,而獻捷幕府。於是大都督加洪伏波將軍,例給布百匹。諸將多封閉之,或送還家,而洪分賜將士,及施知故之貧者,余之十匹,又徑以市肉酤酒,以饗將吏。於時竊擅一日之美談焉。
新字:昔大安中,石冰作乱,六州之地,柯振葉靡,違正党逆。義軍大都督邀洪為将兵都尉,累見敦迫,既桑梓恐虜,禍深憂大。古人有急疾之義,又畏軍法,不敢任志,遂募合数百人,与諸軍旅進。曽攻賊之別将,破之日,銭帛山積,珍玩蔽地,諸軍莫不放兵収拾財物,継轂連担。洪独約令所領,不得妄離行陳。士有摭得衆者,洪即斬之以徇。於是無敢委杖,而果有伏賊数百,出傷諸軍。諸軍悉発,無部隊,皆人馬負重,無復戦心。遂致驚乱,死傷狼藉,殆欲不振。独洪軍整斉轂張,無所損傷。以救諸軍之大崩,洪有力焉。後別戦斬賊小帥,多獲甲首,而献捷幕府。於是大都督加洪伏波将軍,例給布百匹。諸将多封閉之,或送還家,而洪分賜将士,及施知故之貧者,余之十匹,又径以市肉酤酒,以饗将吏。於時窃擅一日之美談焉。
書き下し
昔、大安中に、石冰乱を作し、六州の地、柯振い葉靡き、正に違い逆に党す。義軍大都督は洪を邀えて将兵都尉と為し、累ねて敦迫せらる。既に桑梓は虜を恐れ、禍深く憂い大なり。古人に急疾の義有り、又た軍法を畏れ、敢えて志に任せず、遂に数百人を募り合わせて、諸軍と旅進す。曾て賊の別将を攻め、之を破る日、銭帛は山と積み、珍玩は地を蔽い、諸軍は兵を放ちて財物を収拾し、轂を継ぎ担を連ねざる莫し。洪は独り所領を約して、妄りに行陳を離るるを得ざらしむ。士に衆を摭得する者有れば、洪は即ち之を斬りて以て徇す。是に於いて敢えて杖を委つる無く、果たして伏賊数百有り、出でて諸軍を傷つく。諸軍は悉く発して、部隊無く、皆な人馬は重きを負い、復た戦心無し。遂に驚乱を致し、死傷は狼藉たり、殆ど振るわざらんとす。独り洪の軍のみ整斉として轂張り、損傷する所無し。以て諸軍の大崩を救うに、洪は力有り。後に別に戦いて賊の小帥を斬り、多く甲首を獲て、捷を幕府に献ず。是に於いて大都督は洪に伏波将軍を加え、例として布百匹を給す。諸将は多く之を封閉し、或いは家に送還す。而れども洪は将士に分賜し、及び知故の貧しき者に施し、余の十匹は、又た径ちに以て肉を市い酒を酤い、以て将吏を饗す。時に於いて竊かに一日の美談を擅にす。
現代語訳
昔、大安年間に、石冰が乱を起こし、六州の地では、枝も葉もなびいて、正に背いて逆に従った。義軍の大都督は私を迎えて将兵都尉とし、たびたび強く迫られた。郷里は賊を恐れ、災いは深く憂いは大きかった。古人には危急を救う義があり、また軍法も畏れ、志に任せることはできず、数百人を募り集めて、諸軍とともに進んだ。かつて賊の別将を攻めて破った日、銭や帛は山と積まれ、珍玩は地を覆い、諸軍は兵を放って財物を拾い集め、車を連ね荷を担いで続かない者はなかった。私だけが所領の兵に命じて、みだりに陣を離れさせなかった。財物を拾った兵があれば、私はその場で斬って見せしめにした。こうして杖を捨てる者はなかったが、果たして伏兵の賊数百が現れ、諸軍を傷つけた。諸軍は総出で、部隊の体をなさず、人馬ともに重荷を負い、戦う心を失った。そこで驚き乱れて、死傷者が入り乱れ、立て直せないほどになった。私の軍だけが整然と車を張り、損傷することがなかった。諸軍の大崩れを救うのに、私は力があった。のち別の戦いで賊の小帥を斬り、多くの甲首を獲て、勝利を幕府に報告した。そこで大都督は私に伏波将軍を加え、例として布百匹を給した。諸将の多くはこれを封じ込め、あるいは家に送った。しかし私は将士に分け与え、また旧知の貧しい者に施し、残りの十匹は、そのまま肉を買い酒を求め、将吏にふるまった。この時、ひそかに一日の美談を専らにした。
解説
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