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抱朴子外篇 / 知止

然而入則蘭房窈窕,朱帷組帳,文茵兼舒於華第,艷容粲爛於左右,輕體柔聲,清歌妙舞,宋蔡之巧,陽阿之妍,口吐辨菱延露之曲,足躡淥水七槃之節,知音悅耳,冶姿娛心,密宴繼集,醽醁不撤,仰登綺閣,俯映清淵,遊果林之丹翠,戲蕙囿之芬馥,文鱗瀺灂,朱習頡頏,飛繳墮雲鴻,沈綸引魴鯉,遠珍不索而交集,玩弄紛華而自至。出則朱輪耀路,高蓋接軫,丹旗雲蔚,麾節翕赫,金口嘈口獻,戈甲璀錯,得意托於後乘,嘉旨盈乎屬車,窮遊觀之娛,極畋漁之歡。聖明之譽,滿耳而入;諂悅之言,異口同辭。於時眇然,意蔑古人,謂伊呂管晏,不足算也。

新字:然而入則蘭房窈窕,朱帷組帳,文茵兼舒於華第,艶容粲爛於左右,軽体柔声,清歌妙舞,宋蔡之巧,陽阿之妍,口吐弁菱延露之曲,足躡淥水七槃之節,知音悦耳,冶姿娯心,密宴継集,醽醁不撤,仰登綺閣,俯映清淵,遊果林之丹翠,戯蕙囿之芬馥,文鱗瀺灂,朱習頡頏,飛繳堕雲鴻,沈綸引魴鯉,遠珍不索而交集,玩弄紛華而自至。出則朱輪耀路,高蓋接軫,丹旗雲蔚,麾節翕赫,金口嘈口献,戈甲璀錯,得意托於後乗,嘉旨盈乎属車,窮遊観之娯,極畋漁之歓。聖明之誉,満耳而入;諂悦之言,異口同辞。於時眇然,意蔑古人,謂伊呂管晏,不足算也。

書き下し

然り而して入れば則ち蘭房窈窕として、朱帷組帳あり、文茵は華第に兼ね舒び、艶容は左右に粲爛たり。軽き体、柔らかき声、清歌妙舞あり、宋蔡の巧み、陽阿の妍あり。口に辨菱・延露の曲を吐き、足は淥水・七槃の節を躡む。音を知れば耳を悦ばせ、冶姿は心を娯しませ、密宴は継ぎ集い、醽醁は撤せず。仰いでは綺閣に登り、俯しては清淵に映す。果林の丹翠に遊び、蕙囿の芬馥に戯る。文鱗は瀺灂し、朱習は頡頏す。飛繳は雲鴻を墜とし、沈綸は魴鯉を引く。遠珍は索めずして交々集まり、玩弄の紛華は自ずから至る。出づれば則ち朱輪は路に耀き、高蓋は軫を接ぎ、丹旗は雲のごとく蔚り、麾節は翕赫たり。金口は嘈□して□を献じ、戈甲は璀錯たり。得意は後乗に托し、嘉旨は属車に盈つ。遊観の娯しみを窮め、畋漁の歓びを極む。聖明の誉れは耳に満ちて入り、諂悦の言は口を異にして辞を同じくす。是の時に眇然として、意は古人を蔑し、伊・呂・管・晏も算うるに足らずと謂う。

現代語訳

それなのに、屋敷に入れば蘭の香る奥の間は奥深く、朱の帷と組紐の帳があり、模様の敷物は華麗な邸にあまねく広げられ、美しい姿が左右に輝く。身は軽く声は柔らかく、澄んだ歌と妙なる舞があり、宋・蔡の巧みさ、陽阿の艶やかさがある。口では辨菱・延露の曲を歌い、足は淥水・七槃の拍子を踏む。音を知る者には耳を悦ばせ、艶やかな姿は心を楽しませ、密かな宴が続いて催され、美酒は絶えない。仰いでは美しい楼閣に登り、俯しては清らかな淵に姿を映す。果樹の林の赤と緑に遊び、蕙の園の芳香に戯れる。魚は水に浮き沈み、鳥は上下に飛ぶ。糸をつけた矢で雲間の鴻を落とし、沈めた釣り糸で魴や鯉を引く。遠方の珍味は求めずとも集まり、珍しい玩弄の品は自然に届く。外に出れば朱の輪が道に輝き、高い車蓋が車軸を連ね、赤い旗は雲のように茂り、指揮の旗や節は盛んに輝く。楽の音はやかましく奏でられ、戈や甲は目も眩むほど連なる。得意の思いは後ろの車に預けられ、美味は従う車に満ちる。遊覧の楽しみを窮め、狩りや漁の歓びを極める。聖明との誉れが耳いっぱいに入り、へつらいの言葉は口こそ違え辞は同じである。その時、茫然と満足して、心は古人をあなどり、伊尹・呂尚・管仲・晏嬰も数えるに足りないと言う。

解説

高位に就いた者の邸と行列の様子を、女楽、宴、狩り、車列と畳みかけるように描く段です。文末の「諂悦の言は口を異にして辞を同じくす」が要で、周りの口が違っても言うことは同じ、つまり称賛が一色になったとき、本人は「伊・呂・管・晏も算うるに足らず」と古人を軽んじるようになります。贅沢そのものを責めるより、耳に入る言葉が一種類になる危うさを突いています。組織では、肩書が上がるほど反対意見が減ります。全員が賛成する会議を、成功のしるしではなく、情報が届いていない合図として見る視点が持てます。なお原文には数字の欠けた箇所があります。

この章句が説くこと

諂悦の言は口を異にして辞を同じくす聖明の誉れは耳に満ちて入り古人を蔑し遊観の娯しみを窮め驕り追従

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