抱朴子外篇 / 詰鮑
鮑生又難曰:「夫天地之位,二氣範物,樂陽則雲飛,好陰則川處。承柔剛以率性,隨四八而化生,各附所安,本無尊卑也。君臣既立,而變化遂滋,夫獺多則魚擾,鷹眾則鳥亂,有司設則百姓困,奉上厚則下民貧,壅崇寶貨,飾玩臺榭,食則方丈,衣則龍章,內聚曠女,外多鰥男,辨難得之寶,貴奇怪之物,造無益之器,恣不已之欲,非鬼非神,財力安出哉?
新字:鮑生又難曰:「夫天地之位,二気範物,楽陽則雲飛,好陰則川処。承柔剛以率性,随四八而化生,各附所安,本無尊卑也。君臣既立,而変化遂滋,夫獺多則魚擾,鷹衆則鳥乱,有司設則百姓困,奉上厚則下民貧,壅崇宝貨,飾玩台榭,食則方丈,衣則竜章,内聚曠女,外多鰥男,弁難得之宝,貴奇怪之物,造無益之器,恣不已之欲,非鬼非神,財力安出哉?
書き下し
鮑生又た難じて曰く、「夫れ天地の位、二気物を範り、陽を楽しめば則ち雲に飛び、陰を好めば則ち川に処る。柔剛を承けて以て性を率い、四八に随いて化生し、各おの安んずる所に附き、本より尊卑無し。君臣既に立ちて、変化遂に滋し。夫れ獺多ければ則ち魚擾れ、鷹衆ければ則ち鳥乱る。有司設くれば則ち百姓困しみ、上に奉ずること厚ければ則ち下民貧し。宝貨を壅崇し、台榭を飾り玩び、食は則ち方丈、衣は則ち龍章、内に曠女を聚め、外に鰥男多し。難得の宝を辨じ、奇怪の物を貴び、無益の器を造り、不已の欲を恣にす。鬼に非ず神に非ず、財力安くにか出でん。
現代語訳
鮑生がまた難じて言う。「天地の位において、陰陽二つの気が物を形づくり、陽を楽しむものは雲に飛び、陰を好むものは川に住む。柔と剛を受けて性に従い、四と八に従って化育し、それぞれ安んじるところに身を寄せ、もとより尊卑はない。君臣が立つに及んで、変化はやがて増した。獺が多ければ魚が乱れ、鷹が多ければ鳥が乱れる。役人が設けられれば民は困り、上に奉げることが厚ければ下の民は貧しくなる。宝や貨を積み上げ、楼台を飾って弄び、食事は一丈四方に並べ、衣は龍の紋様、内には独り身の女を集め、外には妻のない男が多くなる。得がたい宝を求め、珍しい物を貴び、無益な器を造り、尽きない欲をほしいままにする。鬼でも神でもなければ、財力はどこから出るのか。
解説
この章句が説くこと
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抱朴子外篇・詰鮑鮑生曰く、「人の生や、衣食已に劇し。況んや又た之に斂賦を加え、之に力役を重ぬるをや。饑寒並び至り、下は命に堪えず、法を冒し非を犯すこと、是に於いて生ず」と。抱朴子詰じて曰く、「蜘蛛網を張りて、蚤虱餒えず。人をして智巧ならしめ、万物を役用し、口を食らい身を衣す、何ぞ劇しとするに足らんや。但だ患うるは、富める者に止まるを知るの心無く、貴き者に無限の用有るのみ。豈に一蹶の故を以て、終身行かず、桀紂の虐を以て、無主を思わんや。夫れ主事弥いよ張り、賦斂の重きは往昔より重く、民力の末務に疲るるを言い、饑寒の縁る所、以て之を譏るは可なり。而るに役有り賦有りて国をして乱れしむと言わば、請い問う、唐虞升平の世、三代有道の時、賦役無くして以て相い供奉し、元首股肱、躬ら耕して以て自給するか。鮑生は乃ち唯だ饑寒並び至るを知るのみにして、固窮する能わず。独り衣食並びに足りて民栄辱を知るを知らざるか」と。
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抱朴子外篇・詰鮑然れども士庶は猶お侯服鼎食し、牛馬沢を蓋う、賦斂に節有りて、下を損なうに足らざるに由る。季世に至りては、官は佃課の制を失い、私は浮末の業を務め、穀を生ずるの道広からず、而して遊食の徒滋ます多し。故に上下同じく之にして、非を犯す者衆し。鮑生乃ち咎を有君に帰す。若し夫れ辨擇の限りを過ぐるを譏り、農課の実ならざるを刺り、牛飲の三千を責め、履畝を太半に貶めば、但だ後宮をして周礼に依らしめ、租調横に加えざらしむれば、斯れ則ち可なり。必ず無君ならんや。夫れ一日晏く起くれば、則ち事に所を失う有り。即鹿に虞無くんば、維れ林中に入る、安くんぞ終に已む可けんや。宗統する所靡ければ、則ち君子は仰ぐ所を失い、兇人は其の志を得ん。網疏なるも猶お漏る、都て網無かる可けんや」と。
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抱朴子外篇・詰鮑鮑生敬言は、老荘の書を好み、劇辯の言を治め、以為えらく古者の無君は今世に勝ると。故に其の著論に云う、「儒者曰く『天は烝民を生じて之が君を樹つ』と。豈に其れ皇天の諄諄然として亦た之を欲する者の為に辞せんや。夫れ強き者弱きを凌げば、則ち弱き者之に服す。智ある者愚を詐れば、則ち愚なる者之に事う。之に服す、故に君臣の道起こり、之に事う、故に力寡き民制せらる。然らば則ち隷属役禦は、強弱を争い愚智を校ぶるに由る。彼の蒼天は果たして事無きなり。夫れ混茫は無名を以て貴しと為し、群生は意を得るを以て歓びと為す。故に桂を剥ぎ漆を刻むは、木の願うに非ず。鶡を抜き翠を裂くは、鳥の欲する所に非ず。轡を促し鑣を銜ましむるは、馬の性に非ず。車を荷い重きを運ぶは、牛の楽しみに非ず。詐巧の萌し、力に任せて真に違い、生の根を伐ち、以て無用を飾り、飛禽を捕えて以て華玩に供し、本完の鼻を穿ち、天放の脚を絆す。蓋し万物並び生ずるの意に非ず。夫れ彼の黎烝を役し、此の在官を養い、貴き者は禄厚くして民も亦た困しむ。夫れ死して生を得て、欣喜すること無量なれば、則ち向に死無きに如かず。
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抱朴子外篇・詰鮑夫れ谷帛積めば則ち民に饑寒の倹有り、百官備われば則ち坐して供奉の費を靡し、宿衛に徒食の衆有り、百姓に遊手の人を養う。民の衣食に乏しきは、自給すら已に劇し。況んや賦斂を加え、重ぬるに苦役を以てするをや。下は命に堪えず、且つ凍え且つ饑え、法を冒すこと斯に濫なり、是に於いて在り。王者は上に憂労し、台鼎は下に顰戚し、深きに臨み薄きを履み、禍の及ぶを懼る。智勇の用いられざるを恐る、故に厚爵重禄以て之を誘う。奸釁の不虞を恐る、故に厳城深池以て之に備う。而るに知らず、禄厚ければ則ち民匱しくして臣騎り、城厳しければ則ち役重くして攻巧みなるを。故に鹿台の金を散じ、鉅橋の粟を発すれば、歓然たらざる莫し。況んや本より金を聚めず、民粟を斂めざるをや。牛を桃林に休め、馬を華山に放ち、載ち幹戈を戢め、載ち弓矢を櫜むるすら、猶お以て泰と為す。況んや本より軍旅無く、戦わず戍らざるをや。茅茨土階、織を棄て葵を抜き、囊を雑えて幃と為し、裘を濯い布被し、妾は帛を衣ず、馬は粟を秣わず、倹以て物を率い、以て美談と為す。所謂盜跖の財を分かち、少なきを取るを譲と為し、陸処の魚の、相い煦むるに沫を以てするなり。
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抱朴子外篇・詰鮑人主は廟堂の上に憂栗し、百姓は困苦の中に煎擾す。之を閑ぐに礼度を以てし、之を整うるに刑罰を以てするは、是れ猶お滔天の源を辟き、不測の流を激し、之を塞ぐに撮壌を以てし、之を障ぐに指掌を以てするがごとし」と。抱朴子難じて曰く、「蓋し聞く沖昧既に辟け、濁を降し清を升げ、穹隆は仰ぎ燾い、旁泊は俯して停まる。乾坤位を定め、上下以て形る。遠くは諸を物に取れば、則ち天尊く地卑くして、以て人倫の体を著す。近くは諸を身に取れば、則ち元首股肱ありて、以て君臣の序を表し、降殺の軌は、自りて来る有り。若し夫れ太極混沌として、両儀質無くんば、則ち玄黄剖判し、七耀象を垂れ、陰陽陶冶し、万物群分するに若かず。滋より以て言えば、亦た知る鳥の聚まり獣の散じ、巣に棲み穴に竄れ、毛血是れ茹らい、草を結びて斯れ服し、入りては六親の尊卑無く、出でては階級の等威無きは、体を広夏に庇い、稉粱嘉旨、黼黻綺紈、冬を禦ぎ暑に当たるに、明辟物に蒞み、良宰世を匠し、官を設け職を分かち、宇宙穆如たるに若かざるを。貴賤章有らば、則ち賞を慕い罰を畏る。勢い斉しく力均しければ、則ち争奪憚る靡し。
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抱朴子外篇・詰鮑「杪季に降及して、智用い巧生じ、道徳既に衰え、尊卑序有り、升降損益の礼を繁にし、紱冕玄黄の服を飾り、土木を凌霄に起こし、丹緑を棼撩に構え、峻を傾けて宝を捜し、淵に泳ぎて珠を辨ず。玉を聚むること林の如くすれども、以て其の変を極むるに足らず。金を積みて山と成すも、以て其の費を贍すに足らず。淫荒の域に澶漫して、其の大始の本に叛き、宗を去ること日に遠く、樸に背くこと弥いよ増す。賢を尚べば民は名を争い、貨を貴べば盗賊起こり、欲す可きを見れば真正の心乱れ、勢利陳なれば劫奪の途開く。剡鋭の器を造りて侵割の患を長ず。弩は勁からざるを恐れ、甲は堅からざるを恐れ、矛は利からざるを恐れ、盾は厚からざるを恐る。若し凌暴無くんば、此れ皆な棄つ可きなり。故に曰く、白玉毀たれずんば、孰か珪璋を為さん。道徳廃れずんば、安くんぞ仁義を取らん。夫の桀紂の徒をして、人を燔きて諫むる者を辜し、諸侯を脯にし、方伯を菹にし、人の心を剖き、人の脛を破り、驕淫の悪を窮め、炮烙の虐を用いしむるを得しむ。若し斯の人をして並びに匹夫と為さしめば、性は兇奢なりと雖も、安くんぞ之を施すを得ん。彼をして酷を肆にし欲を恣にし、天下を屠割せしむるは、君為るに由り、故に意を縦にするを得るなり。君臣既に立ちて、衆慝日に滋く、而るに臂を桎梏の間に攘い、悉く塗炭の中に労せんと欲す。
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