抱朴子外篇 / 應嘲
夫君子之開口動筆,必戒悟蔽,式整雷同之傾邪,磋礱流遁之暗穢,而著書者徒飾弄華藻,張磔迂闊,屬難驗無益之辭,治靡麗虛言之美,有似堅白厲修之書,公孫刑名之論,雖曠籠天地之外,微入無間之內,立解連環,離同合異,鳥影不動,雞卵有足,犬可為羊,大龜長蛇之言,適足示巧表奇以誑俗,何異乎畫敖倉以救饑,仰天漢以解渴。說昆山之多玉,不能賑原憲之貧;觀藥藏之簿領,不能治危急之疾;墨子刻木雞以厲天,不如三寸之車金害;管青鑄騏驥於金象,不如駑馬之周用。言高秋天而不可施者,丘不與易也。」
新字:夫君子之開口動筆,必戒悟蔽,式整雷同之傾邪,磋礱流遁之暗穢,而著書者徒飾弄華藻,張磔迂闊,属難験無益之辞,治靡麗虚言之美,有似堅白厲修之書,公孫刑名之論,雖曠籠天地之外,微入無間之内,立解連環,離同合異,鳥影不動,鶏卵有足,犬可為羊,大亀長蛇之言,適足示巧表奇以誑俗,何異乎画敖倉以救饑,仰天漢以解渇。説昆山之多玉,不能賑原憲之貧;観薬蔵之簿領,不能治危急之疾;墨子刻木鶏以厲天,不如三寸之車金害;管青鋳騏驥於金象,不如駑馬之周用。言高秋天而不可施者,丘不与易也。」
書き下し
夫れ君子の口を開き筆を動かすや、必ず蔽いを戒悟し、雷同の傾邪を式整し、流遁の暗穢を磋礱す。而るに著書する者は徒だ華藻を飾り弄し、迂闊を張り磔き、験し難く益無きの辞を属ね、靡麗虚言の美を治む。堅白厲修の書、公孫刑名の論に似たる有り。曠く天地の外を籠め、微なること間無きの内に入り、立ちどころに連環を解き、同を離ちて異を合わせ、鳥影動かず、鶏卵に足有り、犬は羊と為す可し、大亀長蛇の言と雖も、適に以て巧みを示し奇を表わし以て俗を誑くに足るのみ。何ぞ敖倉を画きて以て饑えを救い、天漢を仰ぎて以て渇きを解くに異ならん。昆山の玉多きを説くも、原憲の貧を賑わす能わず。薬蔵の簿領を観るも、危急の疾を治す能わず。墨子は木鶏を刻して以て天に厲ぐも、三寸の車金害に如かず。管青は騏驥を金象に鋳るも、駑馬の周用に如かず。言の高秋の天に高くして施す可からざる者は、丘も与に易えざるなり。
現代語訳
君子が口を開き筆を動かすときは、必ず蔽われた心を戒め悟らせ、雷同する傾き邪な者を正し、流れ逃げる暗い汚れを磨き直す。ところが著書をなす者は、ただ華やかな言葉を飾り弄び、迂遠で広がった話を並べ、確かめ難く益のない辞を連ね、麗しい虚言の美を整える。堅白や厲修の書、公孫龍や刑名の論に似たものがある。天地の外までも広く包み、隙間のない内側にまで微細に入り込み、たちまち連環を解き、同を離して異を合わせ、飛ぶ鳥の影は動かず、鶏の卵に足があり、犬を羊とも呼べると言い、大亀や長蛇の言があっても、巧みさと奇抜さを示して世俗を誑かすにすぎない。敖倉(穀倉)を描いて飢えを救おうとし、天の川を仰いで渇きを癒そうとするのと何が違うか。昆山に玉が多いと説いても、原憲の貧しさを救えず、薬蔵の帳簿を眺めても、危急の病は治せない。墨子は木の鶏を刻して天に飛ばしたが、三寸の車の金具の実用に及ばず、管青は駿馬を金の象に鋳たが、駑馬の広い実用に及ばない。高秋の天のように高く、しかも施しようのない言は、孔丘も共に改めようとはしなかった。
解説
この章句が説くこと
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抱朴子外篇・應嘲抱朴子曰く、「君臣の大は、天地に次ぐ。思いて有道を楽しみ、出処一情、隠顕は時に任す、言も亦た何ぞ系らん。大人君子は、事変と通ず。老子は無為なる者なり、鬼谷は終に隠るる者なり、而るに其の書を著し、咸な世務を論ず。何ぞ必ずしも身は其の位に居りて、然る後に乃ち其の事を言わんや。夫れ器は瓊瑤に非ざれば楚の和は泣かず、質は潜虬に非ざれば風雲集まらず。余は才短く徳薄く、幹は治に適わず。出処同帰、行止一致なり。豈に必ず達官にして、乃ち政を議し君に事う可く、否なれば則ち治乱を論ず可からざらんや。常に恨む、荘生の言行は自ら伐り、世業を桎梏とし、身は漆園に居りて誕談多く、鬼魅を画くを好み、狗馬を図くを憎み、忠貞を狭細にして、仁義を貶毀す。謂う可し、雕虎画龍は、以て風雲を征き難し。空板億万は、以て銭無きを救う能わず。孺子の竹馬は、脚の剥くるを免れず。士柈の案に盈つるは、腹の虚しきに益無し」と。
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抱朴子外篇・應嘲抱朴子曰く、客余を嘲りて云う、「先生は営を載せ一を抱き、景を霊淵に韜み、俗に背き独り住み、邈爾として蕭然たり。計決して猶豫は、心術に棲まず、分定まりて世累は、胸間に系らず。伯陽は道徳を以て首と為し、荘周は逍遥を以て篇に冠す。用って能く峻格を九霄に標し、芳烈を罔極に宣ぶ。今先生は高尚して用いられず、身は服事せずして、君道臣節の書を著す。世に交わらずして、俗を譏り生を救うの論を作る。甚だ骨幹毛を愛しながら、用兵戦守の法を綴る。進趨を営まずして、審挙窮達の篇有り。蒙は竊かに惑う」と。
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抱朴子外篇・喻蔽「子又た譏りて云う、乍ち入り乍ち出で、或いは儒、或いは墨と。夫れ口を発すれば言と為り、紙に著せば書と為る。書は言に代わる所以にして、言は事を書する所以なり。若し筆を用いて雑載に宜しからずとせば、是れ論議は当に常に一物を守るべし。昔、諸侯は政を訪ね、弟子は仁を問い、仲尼之に答うるに、人人辞を異にす。蓋し事に因りて規を托し、時に随いて急なるを取る。譬うれば猶お病を治する方の千百にして、針灸の処は常無く、寒を卻くるに温を以てし、熱を除くに冷を以てし、死を救い身を存するを期するのみ。豈に詣る者は逐一に道は斉楚の如くにして、路を改めざる可けんや。陶朱・白圭の財の一物ならざるは、豊かなればなり。雲夢・孟諸の生ずる所万殊なるは、曠ければなり。故に淮南鴻烈は、原道・俶真に始まりて、亦た兵略・主術有り。荘周の書は、死生を以て一と為して、亦た犠を畏れ亀を慕い粟を請い饑えを救う有り。若し言う所の純ならざるを以て其の文を棄てば、是れ珠の翳を治して眼を剜り、湿痹を療して足を刖り、荑莠を患いて谷を刈り、枯枝を憎みて樹を伐るなり。
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抱朴子外篇・應嘲或る人又た曰く、「然れども吾子の著す所は、風俗を弾断し、言苦く辞直し。吾恐る、適に以て位に在る者に憎まれ、時に擯けられるを招くに足り、声を揚げ誉れを発し、貴ばるるの道に非ざるなり」と。抱朴子曰く、「夫れ器を制する者は周急を珍とし、辨飾外形を以て善と為さず。言を立つる者は教えを助くるを貴び、俗に偶い誉れを集むるを以て高しと為さず。若し徒だ阿順諂諛し、美を虚しくし悪を隠さば、豈に失を匡し違を弼け、迷いを醒まし過ちを補う者ならんや。寡和を慮りて白雪の音を廃し、售れ難きを嫌いて連城の価を賤しむ、余は取る無きなり。能く華艶を属して以て悦びを取らざるに非ず、直言を抗ぐるに吝多きを知らざるに非ず。然れども情に違い筆を曲げ、真偽を錯濫するに忍びず。心口をして相契し、顧みて景に愧じざらしめ、知音の後に在るを冀わんと欲す。否泰は命有り、通塞は天に聴す。何ぞ必ずしも書行われ言用いられて、栄は当年に及ばんや。
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抱朴子外篇・尚博或ひと曰く、「徳行は本なり、文章は末なり。故に四科の序、文は上に居らず。然らば則ち紙に著す者は、糟粕の余事、伝う可き者は、祭り畢るの芻狗なり。卑高の格、是れ識る可し。文の体略、聞くを得可きか」と。抱朴子曰く、「荃は以て棄つ可きも魚未だ獲ざれば、荃無かる可からず。文は以て廃す可きも道未だ行われざれば、文無かる可からず。若し夫れ翰跡韻略の宏促、辞を属し事を比ぶるの疎密、源流至到の修短、蘊藉汲引の深浅は、其の懸絶するや、天外毫内と雖も、以て其の遼邈を喩うるに足らず。其の相傾くや、三光の熠耀と雖も、以て其の巨細に方ぶるに足らず。龍淵鉛鋌も、未だ其の鋭鈍に譬うるに足らず。鴻羽積金も、未だ其の軽重に比ぶるに足らず。清濁は参差にして、稟くる所に主有り、朗昧は科を同じくせず、強弱は各おの気を殊にす。而るに俗士は唯だ能く毫を染め紙に画く者を見れば、便ち之を一例に概す。斯れ伯牙の永く鍾子を思い、郢人の斤を運らさざる所以なり。蓋し刻削する者は肩を比ぶるも、班狄は絶手の称を擅にし、琴を援く者は至りて衆きも、夔襄は知音の難きを専らにす。廄馬は千駟なるも、騏驥は群を邈かにするの価有り。美人は万を計うるも、威施は世を超ゆるの容有り。蓋し遠く衆に過ぐる者有るなり。
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抱朴子外篇・刺驕之を求むるに貌を以てし、之を責むるに妍を以てす。俗人は徒だ其の外形の粗簡なるを睹て、其の精神の淵邈なるを察する能わず。務めは皮膚に在りて、心志を料らず。英を懐き異を抱き、倫を絶ち世に邁ると雖も、事動けば以て挙世の術を悟る可く、言発すれば以て古今の惑いを解くに足り、章を含み嚢を括り、法に非ざれば談ぜず。而るに茅蓬は万鈞の鏗鏘を動かす能わず、侏儒は重仞の弘麗を看る能わず。因りて之を蚩い、謂いて凡憒と為す。夫れ漢濱の人に非ざれば、明珠を泥淪の虫に料る能わず、泣血の民に非ざれば、夜光を重崖の裏に識る能わず。焦螟の蚊眉の中に屯して、弥天の大鵬を笑い、寸鮒の牛跡の水に遊びて、横海の巨鱗を貴ばず。故に道業は以て相い渉るに足らず、聡明は以て相い逮ぶに足らず。理自ずから合わず、多く怪しむ所無し。之を疾みて黙する能わざる所以は、願わくは夫れ在位の君子、貌を以て人を取る無く、謙損を勉勖して、以て天秩を永くせんことを。
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