抱朴子外篇 / 守塉
夫二人分財,取少為廉,余今讓天下之豐沃,處茲邦之偏埆,舍安昌之膏腴,取北郭之無欲,誠萬物之可細,亦何往而不足哉!北辰以不改為眾星之尊,五嶽以不遷為群望之宗。蟋蟀屢移而不貴,禽魚饜深則逢患。方將墾九典之蕪草歲,播六德之嘉谷,厥田邈於上士之科,其收盈乎天地之間。何必耕耘為務哉!昔被衣以棄財止盜,庚氏以推譬厲貪,琉廣散金以除子孫之禍,叔敖取塉以弭可欲之憂,牛缺以載珍致寇,陶谷以多藏召殃。得失較然,可無鑒乎!」
新字:夫二人分財,取少為廉,余今譲天下之豊沃,処茲邦之偏埆,舎安昌之膏腴,取北郭之無欲,誠万物之可細,亦何往而不足哉!北辰以不改為衆星之尊,五嶽以不遷為群望之宗。蟋蟀屡移而不貴,禽魚饜深則逢患。方将墾九典之蕪草歳,播六徳之嘉谷,厥田邈於上士之科,其収盈乎天地之間。何必耕耘為務哉!昔被衣以棄財止盗,庚氏以推譬厲貪,琉広散金以除子孫之禍,叔敖取塉以弭可欲之憂,牛欠以載珍致寇,陶谷以多蔵召殃。得失較然,可無鑒乎!」
書き下し
夫れ二人財を分かつに、少なきを取るを廉と為す。余は今、天下の豊沃を譲りて、茲の邦の偏埆に処り、安昌の膏腴を舎てて、北郭の無欲を取る。誠に万物は細しとす可し、亦た何くに往きてか足らざらん。北辰は改まらざるを以て衆星の尊と為り、五嶽は遷らざるを以て群望の宗と為る。蟋蟀は屢ば移りて貴ばれず、禽魚は深きに厭けば患いに逢う。方に九典の蕪草の歳を墾き、六徳の嘉穀を播かんとす。厥の田は上士の科に邈かなるも、其の収めは天地の間に盈つ。何ぞ必ずしも耕耘を務めと為さんや。昔、被衣は財を棄てて以て盗を止め、庚氏は譬を推して以て貪を厲まし、琉広は金を散じて以て子孫の禍を除き、叔敖は塉を取りて以て可欲の憂いを弭め、牛缺は珍を載せて以て寇を致し、陶谷は多く蔵して以て殃を召く。得失は較然たり、鑑みる無かる可けんや」と。
現代語訳
そもそも二人で財を分けるとき、少ないほうを取るのを廉とする。私はいま、天下の豊かな沃野を譲って、この地の偏った痩せ地に身を置き、安昌の肥えた土地を捨てて、北郭の無欲を取る。まことに万物は細かなものとして見てよく、どこへ行って足りないということがあろうか。北極星は動かないことによって諸星の尊となり、五嶽は移らないことによって人々の仰ぐ宗となる。こおろぎはしばしば移るので貴ばれず、鳥や魚は深さに満ち足りれば患いに遭う。いま、九つの典籍の荒れた草の年を墾き、六つの徳の良い穀物を播こうとする。その田は上士の等級には遠いが、収穫は天地の間に満ちる。どうして必ず耕作をつとめとする必要があろうか。昔、被衣は財を棄てて盗みを止め、庚氏は璧を人に推し譲って貪りを戒め、琉広は金を散じて子孫の禍を除き、叔敖は痩せた土地を取って欲しがる憂いを止め、牛缺は珍宝を載せて賊を招き、陶谷は多く蔵して災いを呼んだ。得と失は明らかである。鑑みずにいられようか」と。
解説
この章句が説くこと
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抱朴子外篇・逸民古公は策を杖きて之を捐て、越の翳は穴に入りて之を逃れ、季札は退耕して之を委て、老萊は園に灌ぎて之を遠ざく。其の好む所に従い、与に易うる莫し。故に醇にして雑らざる、斯れ則ち富めり。身は役を受けず、其れ則ち貴し。夫の符を剖き土を有つが若きは、所謂る禄利のみ、富貴に非ざるなり。且つ夫れ官高き者は其の責め重く、功大なる者は人之を忌む。独り貧賤のみ有りて、我と争う莫く、長く宝とす可く、而して憂い無し。「濯裘布被、葵を拔き織を去り、豘は豆を掩わず、菜肴糲餐、又た下を逼り偽りを邀むるの譏りを獲、樹塞反坫、三帰玉食、穣侯の富、安昌の泰、則ち僭上洿濁の累有り。未だ神を典文に遊ばせ、故を吐き新を納れ、飽くを耒耜の端に求め、縕を杼軸の間に索め、腹は河に仰ぎて已に満ち、身は一枝に集まりて余り安らかなるに若かず。万物は蕓蕓として、化して埃塵と為る。食は弱を嚙みて口を糊し、布褐縕袍、淡泊にして志を肆にし、憂えず喜ばず、斯の尊楽は、之を喩うるに物無し。
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抱朴子外篇・守塉潜居先生曰く、「夫れ聵者は之を督して雅鄭を分かたしむ可からず、瞽者は之を責めて丹漆を別たしむ可からず、井蛙は語るに滄海を以てす可からず、庸俗は説くに経術を以てす可からず。吾子は茍くも老農の小功を知るも、未だ面墻の巨拙を喩らず、何ぞ瑣沙を拾いて隋和を捐て、炯燭に向かいて白日に背くに異ならんや。夫れ好尚は一概を以て杖す可からず、趨舎は彼我を以て易う可からず。夫れ閬風に隮り嵩華に陟らんと欲する者は、必ず丘垤に行を留めず、意の南溟に遊び滄海に泛かぶに在る者は、豈に潢洿に逍遥するに暇あらんや。是を以て九韶に清聴を注ぐ者は、巴人の声も其の耳を悦ばす能わず、大牢を烹て方丈に饗する者は、荼蓼の味も其の口に甘き能わず。鵾鵬は赤霄を戻りて以て高翔し、鶺鴒は蓬林に傲りて翼を鼓つ、洿隆は途を殊にするも、亦た飛ぶの極なり。晦朔は甚だ促く、朝菌は識らず。蜉蝣は寸陰に忽忽とし、野馬は六月にして後に息み、鯈鮒は泛濫して以て鱗を暴し、霊虬は不測に用うる勿し。行業乖舛す、意何ぞ得可けん。余は草梨の餐は充たざると雖も、鼎食に足れり。
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