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抱朴子外篇 / 百里

夫百尋之室,焚於分寸之飈;千丈之陂,潰於一蟻之穴。何可不深防乎!何可不改張乎!而秉斤兩者,或舍銓衡而任情;掌柯斧者,或曲繩墨於附己。選之者既不為官擇人,而求之者又不自謂不任,於是蒞政而政荒,牧民而民散,或有穢濁驕奢而困百姓者矣,或有苛虐酷烈而多怨判者矣,或有暗塞退憒而庶事亂者矣,或有潦倒疏緩而致馳壞者矣,或有好興不急而疲人力者矣,或有藏養逋逃而行淩暴者矣,或有不曉法令而受欺弄者矣,或有以音聲酒色而致荒湎者矣,或有圍棋樗蒲而廢政務者矣,或有田獵遊飲而忘庶事者矣,或有不省辭訟而刑獄亂者矣。百姓不堪,起為寇賊,釁咎發聞,寘於叢棘,虧君上之明,益刑書之煩,而民之荼毒,亦已深矣!

新字:夫百尋之室,焚於分寸之飈;千丈之陂,潰於一蟻之穴。何可不深防乎!何可不改張乎!而秉斤両者,或舎銓衡而任情;掌柯斧者,或曲縄墨於附己。選之者既不為官択人,而求之者又不自謂不任,於是莅政而政荒,牧民而民散,或有穢濁驕奢而困百姓者矣,或有苛虐酷烈而多怨判者矣,或有暗塞退憒而庶事乱者矣,或有潦倒疏緩而致馳壊者矣,或有好興不急而疲人力者矣,或有蔵養逋逃而行淩暴者矣,或有不暁法令而受欺弄者矣,或有以音声酒色而致荒湎者矣,或有囲棋樗蒲而廃政務者矣,或有田猟遊飲而忘庶事者矣,或有不省辞訟而刑獄乱者矣。百姓不堪,起為寇賊,釁咎発聞,寘於叢棘,虧君上之明,益刑書之煩,而民之荼毒,亦已深矣!

書き下し

夫れ百尋の室は、分寸の飈に焚く。千丈の陂は、一蟻の穴に潰ゆ。何ぞ深く防がざる可けんや、何ぞ改張せざる可けんや。而るに斤両を秉る者は、或いは銓衡を舎てて情に任せ、柯斧を掌る者は、或いは縄墨を己に附くに曲ぐ。之を選ぶ者は既に官の為に人を択ばず、而して之を求むる者は又た自ら任に不ずと謂わず。是に於いて政に蒞みて政荒れ、民を牧いて民散ず。或いは穢濁驕奢にして百姓を困しむる者有り、或いは苛虐酷烈にして怨判多き者有り、或いは暗塞退憒にして庶事乱るる者有り、或いは潦倒疏緩にして馳壊を致す者有り、或いは好んで不急を興して人力を疲らす者有り、或いは逋逃を蔵養して凌暴を行う者有り、或いは法令を暁らずして欺弄を受くる者有り、或いは音声酒色を以て荒湎に致る者有り、或いは囲碁樗蒲して政務を廃する者有り、或いは田猟遊飲して庶事を忘るる者有り、或いは辞訟を省みずして刑獄乱るる者有り。百姓堪えず、起こりて寇賊と為り、釁咎発聞して、叢棘に寘かれ、君上の明を虧き、刑書の煩を益し、而して民の荼毒も亦た已に深し。

現代語訳

高さ百尋の家も、ほんのわずかな風に燃える。千丈の堤も、一匹の蟻の穴で決壊する。どうして深く防がずにいられようか、どうして改め張り直さずにいられようか。ところが、秤を握る者はときに銓衡を捨てて情に任せ、斧を掌る者はときに規矩を己の都合に曲げる。選ぶ者はそもそも官のために人を択ばず、求める者もまた自分が任に堪えないとは言わない。そこで政に臨めば政は荒れ、民を牧えば民は散る。汚れて驕奢で百姓を苦しめる者がおり、むごく厳しく怨みと離反を多くする者がおり、暗く塞がり退いて乱れて物事が混乱する者がおり、だらしなく緩んで荒廃を招く者がおり、不急の事業を好んで興し人力を疲弊させる者がおり、逃亡者を匿って養い暴力を行う者がおり、法令を知らず欺かれ弄ばれる者がおり、音楽や酒色に耽って荒みに至る者がおり、囲碁や樗蒲で政務を廃する者がおり、狩りや酒宴に遊んで多くの事を忘れる者がおり、訴訟を顧みず刑獄を乱す者がいる。百姓は耐えられず、起こって盗賊となり、罪が発覚して獄に置かれ、君主の明を欠き、刑書の煩雑さを増し、民の苦しみもすでに深い。

解説

百尋の家が風に焼け、千丈の堤が蟻の穴で崩れるという比喩が、小さな緩みの危うさを示す書き出しです。続いて、選ぶ側は官のために人を選ばず、求める側は自分が任に堪えないとも言わないという、双方の責任放棄が挙げられます。さらに、汚職、苛政、怠惰、娯楽への耽溺、訴訟の放置など、十一項目の失政を並べて、民が賊となる過程を描きます。列挙の多さは、不適任の形が人の数だけあるということでもあります。登用の場面で、本人も自分が適任かを問うことが、選ぶ側の責任と並ぶ大事な点です。

この章句が説くこと

千丈の陂は一蟻の穴に潰ゆ官の為に人を択ばず自ら任に不ずと謂わず政に莅みて政荒れ登用

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