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抱朴子外篇 / 譏惑

蓋人之有禮,猶魚之有水矣。魚之失水,雖暫假息,然枯糜可必待也。人之棄禮,雖猶面見然,而禍敗之階也。魯秉周禮,暴兵不加,魏式幹木,銳冠旋旆。大楚帶甲百萬,而有振槁之月色;強秦肴函襲崄,而無折柳之固。豈非棄三本而喪根柢之攸召哉!矧乎安逸觸情,喪亂日久,風禿頁教沮,抑斷之儀廢,簡脫之俗成,近人值政化之蚩役,庸民遭道網之絕紊,猶網魚之去水罟,圍獸之出陸羅也。

新字:蓋人之有礼,猶魚之有水矣。魚之失水,雖暫仮息,然枯糜可必待也。人之棄礼,雖猶面見然,而禍敗之階也。魯秉周礼,暴兵不加,魏式幹木,鋭冠旋旆。大楚帯甲百万,而有振槁之月色;強秦肴函襲崄,而無折柳之固。豈非棄三本而喪根柢之攸召哉!矧乎安逸触情,喪乱日久,風禿頁教沮,抑断之儀廃,簡脱之俗成,近人値政化之蚩役,庸民遭道網之絶紊,猶網魚之去水罟,囲獣之出陸羅也。

書き下し

蓋し人の礼有るは、猶お魚の水有るがごとし。魚の水を失うや、暫く息を仮ると雖も、枯糜は必ず待つ可きなり。人の礼を棄つるや、猶お面見ゆと雖も、禍敗の階なり。魯は周礼を秉りて、暴兵加わらず、魏は幹木を式して、鋭冠旋旆す。大楚帯甲百万にして、槁を振うの月色有り、強秦肴函の嶮に襲うも、柳を折るの固め無し。豈に三本を棄てて根柢を喪うの召く攸ならずや。矧んや安逸にして情に触れ、喪乱日久しく、風教沮み、抑断の儀廃れ、簡脱の俗成るをや。近人は政化の蚩役に値い、庸民は道網の絶紊に遭う。猶お網魚の水罟を去り、囲獣の陸羅を出づるがごとし。

現代語訳

思うに、人に礼があるのは、魚に水があるようなものである。魚が水を失えば、しばらく息をつなぐことはできても、干からびて朽ちるのは必至である。人が礼を捨てれば、まだ顔を合わせていられても、それは禍と敗れの階段である。魯は周の礼を守っていたので、荒々しい軍が襲わなかった。魏は段干木の家の前で式(敬礼)をしたので、鋭い兵が冠を収めて旗を返した。大楚は甲冑の兵が百万もいたのに、枯れ葉を振るうように破られる月夜があり、強秦は肴函の険に拠っていたのに、柳を折って垣にする程度の固めもなかった。これは三つの根本を捨てて根もとを失った結果ではないか。まして安楽に流れて感情のままに動き、喪乱が久しく続き、風教が沮み、抑えと断ちの儀が廃れ、簡略放逸の習いができあがっている今はなおさらだ。近頃の人は政治教化の乱れた労役に遭い、凡庸な民は道の網が乱れ絶えたのに遭っている。まるで網にかかった魚が水の網を離れ、囲まれた獣が陸の網を出ていくようなものである。

解説

礼は魚にとっての水だ、という比喩が冒頭にあります。水を失った魚はしばらく息をつないでも干からびる。礼を捨てた人も、顔を合わせて暮らしているように見えて、禍敗への階段にいると葛洪は言います。魯が周礼を守って攻められず、魏が段干木に敬意を示して兵が引いたという例は、礼が外敵を退ける力になったと語る箇所です。大国の軍事力があっても、根本を失えば崩れる。組織にとっての礼とは、日々の挨拶や約束を守ることにあたり、それが信用の基盤となります。形骸と見えて、失ってから効き目が分かるものです。

この章句が説くこと

人の礼有るは猶お魚の水有るがごとし禍敗の階なり根柢を喪う礼信用

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