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抱朴子外篇 / 弭訟

夫不伏之人,視死猶歸,血刃之禍,於是將起。今茍惜其辭訟之小醜,而構其難忍之大恨,所謂愛其僦覽之煩,忘其雕殞之酷也。夫買物於市者,或加價而奪之,則鮮忍而不忿然矣,況乎見奪待告之妻哉!此法遂用者,將使結婚者,雖納敬親迎,猶抱有見奪之慮。何者?劉君之論,以同牢為斷,固也。爾則女氏雖受幣積年,恒挾在意之威,恃可數奪,必惰於擇婿,婿小不得意,便得改悔,結讎帶禍,莫此之甚矣。曩人畫法,慮關終始,杜漸防萌,思之良精,而不關恣奪之路,斷以報板之制者,殆有決乎?

新字:夫不伏之人,視死猶帰,血刃之禍,於是将起。今苟惜其辞訟之小醜,而構其難忍之大恨,所謂愛其僦覧之煩,忘其雕殞之酷也。夫買物於市者,或加価而奪之,則鮮忍而不忿然矣,況乎見奪待告之妻哉!此法遂用者,将使結婚者,雖納敬親迎,猶抱有見奪之慮。何者?劉君之論,以同牢為断,固也。爾則女氏雖受幣積年,恒挟在意之威,恃可数奪,必惰於択婿,婿小不得意,便得改悔,結讎帯禍,莫此之甚矣。曩人画法,慮関終始,杜漸防萌,思之良精,而不関恣奪之路,断以報板之制者,殆有決乎?

書き下し

夫れ伏せざる人は、死を視ること帰するが猶し、血刃の禍は、是に於いて将に起こらんとす。今茍くも其の辞訟の小醜を惜しみて、其の忍び難きの大恨みを構うるは、所謂其の僦覧の煩わしきを愛しみて、其の雕殞の酷きを忘るるなり。夫れ物を市に買う者、或いは価を加えて之を奪えば、則ち忍びて忿然たらざるは鮮し、況んや奪われて告ぐるを待つの妻をや。此の法遂に用いらるれば、婚を結ぶ者をして、敬を納め親迎すと雖も、猶お奪わるるの慮りを抱かしめん。何となれば、劉君の論は、同牢を以て断と為す、固なり。爾れば則ち女氏は幣を受くること積年なりと雖も、恒に意に在るの威を挟み、数ば奪う可きを恃みて、必ず婿を択ぶに惰り、婿小しく意を得ざれば、便ち改悔するを得、讎を結び禍を帯びること、此れより甚だしきは莫し。曩人の法を画きし、慮りは終始に関わり、漸を杜ぎ萌を防ぎ、思うこと良に精しきも、恣奪の路を関さず、報板の制を以て断ずるは、殆ど決する有らんか。

現代語訳

そもそも承服しない者は、死を帰郷のように見るもので、そこから血刃の禍が起ころうとする。いま訴訟の小さな醜さを惜しんで、耐えがたい大きな恨みを生むのは、いわゆる借り受ける手間を惜しんで、彫刻を損なう酷さを忘れるようなものである。そもそも市で物を買う者が、誰かに値を上乗せして奪われれば、怒らずにいられる者は少ない。まして奪われて訴え出るのを待つ妻はなおさらである。もしこの法がついに用いられれば、婚を結ぶ者は、敬意を尽くして親しく迎えたとしても、なお奪われる憂いを抱くことになる。なぜなら、劉君の論は同牢の儀を境として断じており、それはもっともである。だがそうなれば女の家は、結納を何年も受けていても、常に心のままに振る舞う威を挟み、たびたび奪ってよいのを頼みとして、必ず婿を選ぶことに怠り、婿が少しでも気に入らなければ、すぐ心変わりして悔い改めることができ、仇を結び禍を招くこと、これより甚だしいものはない。昔の人が法を画いたときは、思慮は終始に及び、漸の段階を断ち萌芽を防ぎ、思うことは精しかったが、奪い取る道を閉ざさず、返事の札の制度で判断したのは、おそらく決すべきことがあったからであろうか。

解説

論点は、倍返しの法が婚約をむしろ不安定にするという指摘です。「女氏は幣を受くること積年なりと雖も、恒に意に在るの威を挟み」と、財さえ払えば破棄できると知れば、受け取った側は誠実に婿を選ばなくなるという逆効果を示します。さらに血刃の禍に至る恨みを、訴訟の手間と比べて「小醜」を惜しんで「大恨」を招くと喩えます。違約金を設けると、かえって違約が軽くなるという現象は現代の契約でも見られます。罰則が抑止ではなく価格になってしまう仕組みを、数世紀前から警戒していたと読めます。

この章句が説くこと

小醜を惜しみて忍び難きの大恨みを構うる婿を択ぶに惰り讎を結び禍を帯びること抑止違約

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