抱朴子外篇 / 行品
抱樸子曰:人技未易知,真偽或相似。士有顏貌修麗,風表閑雅,望之溢目,接之適意,威儀如龍虎,盤旋成規矩。然心蔽神否,才無所堪,心中所有,盡附皮膚。口不能吐片奇,筆不能屬半句;入不能宰民,出不能用兵;治事則事廢,銜命則命辱。動靜無宜,出處莫可。蓋難分之一也。士有貌望樸悴,容觀矬陋,聲氣雌弱,進止質澀。然而含英懷寶,經明行高,榦過元凱,文蔚春林。官則庶績康用,武則克全獨勝。蓋難分之二也。
新字:抱樸子曰:人技未易知,真偽或相似。士有顔貌修麗,風表閑雅,望之溢目,接之適意,威儀如竜虎,盤旋成規矩。然心蔽神否,才無所堪,心中所有,尽附皮膚。口不能吐片奇,筆不能属半句;入不能宰民,出不能用兵;治事則事廃,銜命則命辱。動静無宜,出処莫可。蓋難分之一也。士有貌望樸悴,容観矬陋,声気雌弱,進止質澀。然而含英懐宝,経明行高,榦過元凱,文蔚春林。官則庶績康用,武則克全独勝。蓋難分之二也。
書き下し
抱朴子曰く、人の技は未だ知り易からず、真偽は或いは相似たり。士に顔貌修麗、風表閑雅にして、望めば目に溢れ、接すれば意に適い、威儀は龍虎の如く、盤旋して規矩を成す有り。然れども心蔽れ神否がり、才は堪うる所無く、心中に有る所は、尽く皮膚に附く。口は片奇を吐く能わず、筆は半句を属ぬる能わず。入りては民を宰むる能わず、出でては兵を用うる能わず。事を治むれば事廃れ、命を銜めば命辱む。動静宜しき無く、出処可なる莫し。蓋し分かち難きの一なり。士に貌望樸悴、容観矬陋、声気雌弱、進止質渋なる有り。然れども英を含み宝を懐き、経明らかに行い高く、榦は元凱に過ぎ、文は春林より蔚たり。官すれば則ち庶績康く用い、武なれば則ち克く全く独り勝つ。蓋し分かち難きの二なり。
現代語訳
抱朴子は言う。人の技量は容易には知り得ず、真と偽はときに似通っている。士のなかには、顔かたちが整って麗しく、風采が静かで雅やかで、望めば目に溢れ、接すれば心に適い、威儀は龍や虎のようで、振る舞いが定規に合っている者がいる。しかし心が曇り精神が塞がり、才能は何も堪えられず、心中にあるものはすべて皮膚の上に貼り付いている。口からは一片の奇も吐けず、筆では半句も綴れない。内にあっては民を治められず、外にあっては兵を用いられない。事を扱えば事が廃れ、命を受ければ命を辱める。動くにも静まるにも宜しきがなく、出るにも退くにも可とするところがない。これが見分けがたい第一の例である。また士のなかには、容貌が質朴でやつれ、風貌が背低く醜く、声や気が弱々しく、進退がぎこちない者がいる。しかし英才を含み宝を懐き、経学に明らかで行いが高く、才幹は八元八愷にも勝り、文章は春の林よりも盛んである。官にあれば多くの功績が安んじて成り、武にあれば完全に独り勝ちする。これが見分けがたい第二の例である。
解説
この章句が説くこと
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抱朴子外篇・行品士に謀猷淵邃、術略神に入り、智は成敗に周く、思いは幽玄に洞り、才は能事を兼ぬれども、神器宜しき無く、而も口は心を伝えず、筆は意を尽くさず、造次の接は、凡庸に異ならざる有り。蓋し分かち難きの三なり。士に機変清鋭、巧言綺粲にして、譬喩を擥引し、淵のごとく湧き風のごとく厲しき有り。然れども口の談ずる所、身は行う能わず、古を識るに長じ、今を理むるに短く、政を為せば政乱れ、民を牧すれば民怨む。蓋し分かち難きの四なり。士に外形は足恭、容は虔しく言は恪しけれども、神は疏く心は慢り、中に散放を懐き、任を受けて憂えず、局に居て治まらざる有り。蓋し分かち難きの五なり。
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抱朴子外篇・行品士に行己高簡、風格峻峭、嘯傲偃蹇、儕を淩ぎ俗を慢り、括を粛検せず、小失を護らず、情に適い意に率い、旁らに人無きが若く、朋党排譴して、談者同に敗れ、士友附かず、品藻に遺さるる有り。而も朝に立ちて色を正し、知りては為さざる無く、上に奉ずるに忠、明は以て下を摂む。蓋し分かち難きの九なり。士に含弘曠済、己を虚しくして物を受け、疾を蔵し瑕を匿し、温恭廉潔、労謙沖退、危うきを救い信を全くし、命を寄せて疑わず、孤を托して保つ可き有り。而も純良にして権に暗く、仁にして断ぜず、善も賞する能わず、悪も罰するに忍びず、忠貞余り有れども、榦用足らず、柯を操りて猶予し、法を廃して非に効い、枉直混錯して、終に負け敗る。蓋し分かち難きの十なり。
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抱朴子外篇・行品士に弦を控きて命中し、空拳もて白に入り、倒乗立騎し、五兵畢く習う有り。而も体軽く慮浅く、手は剿く心は怯え、虚試には対無けれども、実用には験無し。塵を望みて奔北し、敵を聞きて魄を失う。蓋し分かち難きの六なり。士に梗概簡緩、言希に貌樸にして、細行闕漏し、小勇を為さず、跼蹐拘検して、犯されても校せず、爪を握り翅を垂れ、名づけて弱願と為す有り。然れども胆は勁く心は方にして、強禦を畏れず、義の正に在る所、死を視ること帰するが猶く、支解寸断せらるとも、守る所を易えず。蓋し分かち難きの七なり。士に孝友温淑、恂恂として平雅、信を履み順を思い、礼に非ざれば蹈まず、困に安んじ志を潔くし、操は冰霜より清き有り。而も疏遅迂闊にして、事の要に達せず、機を見て作さず、為す所成る無く、己に居りては梁倡、任を受けては挙がらず。蓋し分かち難きの八なり。
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抱朴子外篇・擢才抱朴子曰く、華章の藻蔚たるは、矇瞍の玩ぶ所に非ず。英逸の才は、浅短の識る所に非ず。夫れ瞻視の物に接する能わざれば、則ち兗龍と素褐とは価を同じくす。聡鑒の相い渉るに足らざれば、則ち俊民と庸夫とは一概なり。眼見えざれば、則ち美は神に入らず。之と与にする莫ければ、則ち之を傷つくる者至る。且つ夫れ愛憎好悪は、古今均しからず。時移り俗易われば、物同じくして価異なる。之を夏后の璜に譬うるに、曩には直連城、今に之を鬻げば、銅鉄より賤し。故に昔は隠居して志を求むるを以て高士と為し、今は山林の儒を以て不肖と為す。故に聖世の良幹は、乃ち暗俗の罪人なり。往者の介潔は、乃ち末葉の羸劣なり。
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抱朴子外篇・行品夫れ物に似て実は非なる有り、然るが若くして然らざる有り。之を料りて惑う無く、形を望みて神を得るは、聖者も其れ将に諸れを病みとせんとす、況んや常人をや。故に才を用い士を取り、昵しみを推して友を結ぶには、精しく択ばざる可からず、詳らかに試みざる可からず。若し乃ち性行の惑変、始めは正しくして終わりは邪なる、王莽の初めは伊・霍より美にして、晩には趙高より劇しきが若きは、又中才の能く逆め尽くす所に非ず。若し士をして別ち易からしむること、鷦鷯の鴻鵠に於ける、狐兔の龍麟に於けるが如くならしめば、則ち四凶は堯朝に官たるを得ず、管・蔡は宗周を幾んど危うくするを得ず、仲尼に澹台の失無く、延陵に捐金の恨み無く、伊尹に七十の労無く、項羽に範を嫌うの悔い無からん。患うる所は、其の石武石夫の瑾瑜を乱し、鷦螟の鳳皇に似、凝冰の水精に類し、煙熏の雲気かと疑うが如き、故に謬らざる者をして鮮からしむ。惟れ帝すら之を難しとす、矧んや近人をや。
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抱朴子外篇・清鑒抱朴子答えて曰く、「余は人物の了に知る可からざるを謂うに非ず、人を知ること挺に形理無きにも非ざるなり。徒だ斯の術は大明に存し、当人の自ら許すに非ざるを以てなり。然れども世の士は各おの之を能くすと謂う、是を以て云う有り、以て任を付するを警むるのみ。夫れ貌望豊偉なる者は必ずしも賢ならず、形器尪瘁なる者は必ずしも愚ならず、咆哮する者は必ずしも勇ならず、淳淡なる者は必ずしも怯ならず。或いは外候同じくして用意異なり、或いは気性殊なれども務むる所合う。天地に常候有り、山川に定止有るが若きに非ず。物も亦故より遠くして知り易く、近くして料り難き有り。譬えば猶お眼の能く天衢を察して、項領の間を周くする能わず、耳の能く雷霆を聞きて、虫虱の音を識る能わざるがごとし。唐・呂・樊・許は人の状を相るに善く、唯だ寿夭・貧富・官秩・尊卑を知るのみにして、情性の寛克、志行の洿隆を審らかにする能わず。惟れ帝すら之を難しとす、況んや庸人をや。而るに吾子は形を論ずるの例を挙げ、精神の談を詰る、未だ其の本を修めず、殆ど指を失えり。
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