抱朴子外篇 / 備闕
抱樸子曰:騕褭能奮蘭筋以絕景,而不能履冰以乘深;猛虎能似雷霆以博噬,而不能踴雲霧以淩虛。鴻鶤不能振翅於籠罩之中,輕鷂不能電擊於幾筵之下。物既然矣,人亦如之。故能調和陰陽者,未必能兼百行修簡書也;能敷五邁九者,不必能全小潔經曲碎也。惠子,上相之標也,而不能役舟楫以淩陽侯;漢高,神武之傑也,而不能治產業端檢括;淮陰,良將之元也,而不能修農商免饑寒;周勃,社稷之鯁也,而不能答錢穀責獄辭。若以所短棄所長,則逸儕拔萃之才不用矣;責具體而論細禮,則匠世濟民之勛不著矣。
新字:抱樸子曰:騕褭能奮蘭筋以絶景,而不能履冰以乗深;猛虎能似雷霆以博噬,而不能踴雲霧以淩虚。鴻鶤不能振翅於籠罩之中,軽鷂不能電撃於幾筵之下。物既然矣,人亦如之。故能調和陰陽者,未必能兼百行修簡書也;能敷五邁九者,不必能全小潔経曲砕也。恵子,上相之標也,而不能役舟楫以淩陽侯;漢高,神武之傑也,而不能治産業端検括;淮陰,良将之元也,而不能修農商免饑寒;周勃,社稷之鯁也,而不能答銭穀責獄辞。若以所短棄所長,則逸儕抜萃之才不用矣;責具体而論細礼,則匠世済民之勛不著矣。
書き下し
抱朴子曰く、騕褭は能く蘭筋を奮いて以て景を絶つも、氷を履みて以て深きに乗る能わず。猛虎は能く雷霆に似て以て博み噬むも、雲霧に踴りて虚に凌ぐ能わず。鴻鶤は翅を籠罩の中に振るう能わず、軽鷂は電のごとく几筵の下に撃つ能わず。物既に然り、人も亦た之の如し。故に能く陰陽を調和する者は、未だ必ずしも百行を兼ねて簡書を修むる能わず。能く五を敷き九を邁す者は、必ずしも小潔を全うして曲砕を経る能わず。恵子は上相の標なれども、舟楫を役して以て陽侯を凌ぐ能わず。漢高は神武の傑なれども、産業を治め検括を端す能わず。淮陰は良将の元なれども、農商を修めて饑寒を免るる能わず。周勃は社稷の鯁なれども、銭穀の責め・獄辞に答うる能わず。若し短なる所を以て長なる所を棄てば、則ち逸儕抜萃の才は用いられず。具体を責めて細礼を論ぜば、則ち世を匠し民を済うの勲は著れず。
現代語訳
抱朴子は言う。騕褭の駿馬は、蘭のような筋を奮って影を置き去りにするが、氷を踏んで深い所を渡ることはできない。猛き虎は雷霆のような勢いで跳びかかり噛みつくが、雲霧に躍って虚空を越えることはできない。大きな鳥は籠の中で翼を振るうことができず、素早い鷂は宴席の下で電光のように撃つことができない。物がすでにそうであるように、人もまたそうである。だから、陰陽を調和させられる者が、必ずしも多くの行いを兼ねて文書を整えられるとは限らない。五を敷き九に至る大事を成せる者が、必ずしも小さな潔白を全うして細かな事柄を経られるとは限らない。恵子は宰相の鑑であったが、舟を使って波を越えることはできなかった。漢の高祖は神武の傑物であったが、家産を治めて計算を整えることはできなかった。淮陰侯は良将の筆頭であったが、農商を営んで飢えや寒さを免れることはできなかった。周勃は社稷を支える硬骨の臣であったが、銭穀の問いや獄の訊問には答えられなかった。もし短所によって長所を棄てるなら、群を抜く才は用いられない。完全さを責めて細かな礼を論ずるなら、世を整え民を救う勲は現れない。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
抱朴子外篇・博喻抱朴子曰く、偏才は以て周用を経するに足らず、只長は以て衆短を済うに足らず。是を以て鶏は将に旦ならんとするを知るも、陰陽の暦数を究むる能わず、鵠は夜半を識るも、晷景の道度を極むる能わず、山鳩は晴雨を将来に知るも、天文を明らかにする能わず、蛇虫は潜泉の居る所を知るも、地理に達する能わず。
-
抱朴子外篇・博喻抱朴子曰く、用いて其の長を得れば、則ち才に或いは棄てらるる無く、偏えに其の短を詰むれば、則ち物に触れて可なる無し。故に軽羅・霧縠は、治服の麗なるも、以て流鏑を禦ぐ可からず、沈閭・巨闕は、断斬の良なるも、以て脚の刺を挑る可からず。
-
抱朴子外篇・備闕天は其の西北を平らかにする能わず、地は其の東南を隆くする能わず、日月は曲穴に光を摛ぶる能わず、沖風は井底に波を湧揚する能わず。歯を擿れば則ち松槚も一寸の筵に及ばず、耳を挑れば則ち棟梁も鷦鷯の羽に如かず、鳥を弾けば則ち千金も丸泥の用に及ばず、縫緝すれば則ち長剣も数寸の針に及ばず。何ぞ必ずしも巨象を伏して鼠を捕らえ、大鵬を制して晨を司らしめんや。故に姜牙は煦を売りて售るる所無きも、師と文武に見られ、蔣生は百里に憒慢なるも、独り三槐に歩す。
-
抱朴子外篇・博喻抱朴子曰く、小疵は以て大器を損なうに足らず、短疢は以て長才を累わすに足らず。日月は虫鳥の瑕を挟むも、天に麗く景を妨げず、黄河は泥滓の濁を合するも、山を淩ぐ流を害せず。樹塞は以て夷吾を棄つ可からず、奪田は以て蕭何を薄んず可からず、竊妻は以て相如を廃す可からず、受金は以て陳平を斥く可からず。
-
抱朴子外篇・務正抱朴子曰く、南溟は朝宗を引きて以て不測の深きを成し、玄圃は本石を崇びて以て極天の峻しきを致す。大夏の霄を凌ぐは、群橑の積むに頼り、輪は曲がり轅は直く、闕く可きの物無し。故に元凱の佐登れば、而ち格天の化洽く、折衝の才周ければ、則ち逐鹿の奸寝む。舜・禹の天下を有ちて与らざる所以、衛霊の驕恣なりと雖も危うからざる所以なり。衆力並べば、則ち万鈞も挙ぐるに足らず、群智用いらるれば、則ち庶績も康んずるに足らず。故に足多き者は死すれども弊れず、士多き者は乱るるも亡びず。然れども剣戟は縫緝に長ぜず、錐鑽は以て撃断す可からず、牛馬は吠え守る能わず、鶏犬は駕乗に任えず。其の長ずる所を役えば、則ち事に廃功無く、其の短なる所を避くれば、則ち世に棄材無し。
-
抱朴子外篇・博喻抱朴子曰く、瓊瑉山積すれども、瑕を挟まざるの器無きこと能わず、鄧林千里なれども、偏枯の木無きこと能わず。珍を論ずるには則ち細疵を以て巨美を棄つ可からず、大を語るには則ち少累を以て其の多故を廃す可からず。主に叛く者は良・平なり、而るに六奇を吐きて以て上を安んず、群盗なる者は彭越なり、而るに弘勲を佐命に建つ。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る