抱朴子外篇 / 審舉
今且令天下諸當在貢舉之流者,莫敢不勤學。但此一條,其為長益風教,亦不細矣。若使海內畏妄舉之失,凡人息僥幸之求,背競逐之末,歸學問之本,儒道將大興,而私貨必漸絕,奇才可得而役,庶官可以不曠矣。」或曰:「先生欲急貢舉之法,但禁錮之罪,苛而且重,懼者甚眾。夫急轡繁策,伯樂所不為;密防峻法,德政之所恥。」抱朴子曰:「夫骨填肉補之藥,長於養體益壽,而不可以救日曷溺之急也。務寬含垢之政,可以蒞敦禦樸,而不可以拯衰弊之變也。虎狼見逼,不揮戈奮劍,而彈琴詠詩,吾未見其身可保也。燎火及室,不奔走灌註,而揖讓盤旋,吾未見其焚之自息也。今與知欲賣策者論此,是與跖議捕盜也。」
新字:今且令天下諸当在貢舉之流者,莫敢不勤学。但此一条,其為長益風教,亦不細矣。若使海内畏妄舉之失,凡人息僥幸之求,背競逐之末,帰学問之本,儒道将大興,而私貨必漸絶,奇才可得而役,庶官可以不曠矣。」或曰:「先生欲急貢舉之法,但禁錮之罪,苛而且重,懼者甚衆。夫急轡繁策,伯楽所不為;密防峻法,徳政之所恥。」抱朴子曰:「夫骨填肉補之薬,長於養体益寿,而不可以救日曷溺之急也。務寛含垢之政,可以莅敦禦樸,而不可以拯衰弊之変也。虎狼見逼,不揮戈奮剣,而弾琴詠詩,吾未見其身可保也。燎火及室,不奔走灌註,而揖譲盤旋,吾未見其焚之自息也。今与知欲売策者論此,是与跖議捕盗也。」
書き下し
今且つ天下の諸もろ当に貢挙の流に在るべき者をして、敢えて学に勤めざる莫からしめん。但だ此の一条、其の風教を長益すること、亦た細かならず。若し海内をして妄挙の失を畏れ、凡人をして僥幸の求めを息め、競逐の末に背き、学問の本に帰せしめば、儒道将に大いに興り、私貨は必ず漸く絶え、奇才は得て役う可く、庶官は以て曠しからざる可し」と。或るひと曰く、「先生は貢挙の法を急にせんと欲するも、但だ禁錮の罪は、苛にして且つ重く、懼るる者甚だ衆し。夫れ轡を急にし策を繁くするは、伯楽の為さざる所、密防峻法は、徳政の恥ずる所」と。抱朴子曰く、「夫れ骨を填め肉を補うの薬は、体を養い寿を益すに長ずるも、以て日曷溺の急を救う可からず。寛を務め垢を含むの政は、以て敦きに蒞み樸を禦む可きも、以て衰弊の変を拯う可からず。虎狼の逼らるるに、戈を揮い剣を奮わずして、琴を弾じ詩を詠ぜば、吾未だ其の身の保つ可きを見ざるなり。燎火室に及ぶに、奔走灌註せずして、揖譲盤旋せば、吾未だ其の焚の自ら息むを見ざるなり。今、策を売らんと欲する者と此を論ずるは、是れ跖と盗を捕うるを議するなり」と。
現代語訳
今、天下で推挙の対象となる者すべてに、学問に励まない者が出ないようにしよう。この一条だけでも、風教を伸ばし益すること、決して小さくない。もし国内の者が不当な推挙の失敗を恐れ、凡人がまぐれ当たりを求めるのをやめ、競って走る末を背にして、学問の本に帰れば、儒道は大いに興り、私的な賄賂は次第に絶え、奇才は用いることができ、多くの官は空席でなくなるだろう」と。ある人が言う。「先生は推挙の法を厳しくしたいとのことだが、禁錮の罪は苛酷で重く、恐れる者が非常に多い。手綱を締め鞭を繁く振るうのは、伯楽のしないことであり、厳しい防ぎと峻烈な法は、徳政の恥じるところである」と。抱朴子は言う。「骨を満たし肉を補う薬は、体を養い寿命を延ばすのに優れるが、渇きや溺れる急を救うことはできない。寛容に努め垢を含む政治は、厚い風俗に臨み素朴さを保つことはできても、衰えや弊害の急変を救うことはできない。虎や狼に迫られて、戈を振るい剣を奮わずに、琴を弾き詩を詠んだなら、その身が保たれるのを私は見たことがない。火が家に及んでいるのに、走り回って水をかけず、ゆずり合って歩き回ったなら、その火が自然に消えるのを私は見たことがない。いま、策問の答えを金で買おうとする者とこれを論じるのは、盗跖と盗賊の捕縛を議論するようなものである」と。
解説
この章句が説くこと
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抱朴子外篇・審舉抱朴子答えて曰く、「人を知れば則ち哲、上聖すら難しとす。今牧守をして皆な良才を未だ用いざるに審らかにし、性履の始終を保たしむるは、誠に未だ易からず。但だ共に其の私情を遣り、其の聡明を竭くし、利欲に動かされず、属托に屈せず、挙げんと欲する所は、必ず思いを澄まして以て之を察し、博く訪ねて以て之を詳らかにし、其の名を修めて其の行を考え、同異を校べて以て虚飾に備う。親族をして其の孝友を称し、邦閭をして其の信義に帰せしむ。嘗て小仕せし者は、忠清の効、事を治むるの幹有らば、則ち寸錦以て巧みを知るに足り、刺鼠以て勇を観るに足るなり。「又、秀孝は皆な宜しく旧の如く経を試み策に答えしめ、其の罪対の奸を防ぎ、当に其の中らざる者は署せざるを必絶し、吏に罰禁錮を加えしむべし。其の挙ぐる所の書の中らざる者は、刺史・太守は官を免じ、中らざれば左遷す。中る者多く中らざる者少なければ、後の転は故に過ぐるを得ず。若し賕を受けて当たらざる所を挙げ、発覚して験有らば、名を除き、終身禁錮し、赦令を以て原さず、挙ぐる所と挙ぐる者と罪を同じくす。今試みに此の法を用い、治むること一二歳の間にして、秀孝の必ず行かざる者多からん、亦た以て天下の貢挙の精ならざること久しきを知るに足る。此を過ぎれば、則ち必ず徳を修めて学に勤むる者多からん。
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抱朴子外篇・審舉兵興るの世、武貴く文寝み、俗人の儒士を視ること仆虜の如く、経誥を見ること芥壌の如き者は、何ぞや。声名の此に背くに由る。夫れ用いざるは、譬えば猶お章甫を夷越に售り、髯蛇を華夏に徇うがごとし。今若し遐邇一例にして、考課を明らかにし試みれば、則ち必ず多く笈を負うて千里、以て師友を尋ね、其の礼賂の費を転じて、以て記籍を買う者、終日を俟たざらん」と。抱朴子曰く、「才学の士の秀孝に堪うる者は、已に多く得可からず。就令其の人桓・霊の世の若く、吏を挙ぐるに財貨を先にせず、便ち台閣の主者に安んずれば、則ち諸経本解を兼ぬ、問に対えて答えざる無しと雖も、猶お誣枉せられて過ぐるを得ざらしめん。常に時の執事の、重ねて之が防を為さざるを追恨す。
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抱朴子外篇・審舉余が意に謂えらく、新年当に貢挙を試むべくんば、今年便ち儒官・才士をして、豫め諸策を作らしむ可し、計りて用を周くするに足らん。集めて上り、其の草を殿中に留むるを禁じ、之を封閉す。試に臨む時に、亟かに之を賦す。人事因縁は是に於いて絶ゆ。当に策に答うべき者は、皆な一処に会著せしむ可く、高く台省の官を選んで親ら之を監察せしむ。又其の交関出入を厳禁し、事を畢えて乃ち遣る。違犯有らば罪して赦す無し。此の如くんば、属托の翼窒がれん。夫れ明君は己の欺く可からざるを恃み、人の己を欺かざるを恃まず。亦た何ぞ峻く斯の制を為すを恥じんや。若し経を試むるの法立てば、則ち天下は学官を立てずして、人自ら勤め楽しむ可し。
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抱朴子外篇・審舉抱朴子曰く、華・霍の能く極天の峻きを崇くする所以の者は、其の下の厚きに由り、唐・虞の能く巍巍の功に臻れる所以は、実に股肱の良きに頼ればなり。孫陽の手有りと雖も、騏驥の足無ければ、則ち千里を致すを得ず。稽古の才有りと雖も、力を宣ぶるの佐無ければ、則ち庶績を凝むるに縁る莫し。人君は明日月を並ぶと雖も、神鑑未だ兆さず、然れども万機は以て独り統ぶ可からず、曲碎は以て親しく総ぶ可からず、必ず目を仮りて以て遐く覧、耳を借りて以て広く聴き、誠に有司を須ちて、是れ康んじ是れ賛く。故に聖君は心に根ざして賢を招き、挙才を以て首務と為さざる莫し。玉帛を丘園に施し、翹車を巌藪に馳せ、人を求むるに労し、能を用うるに逸し、上は槐棘より、降りては皂隷に逮び、道を論じ国を経し、職に任ぜざる莫し。己を恭しくして無為、而して治平らぎ刑措かれ、化洽く外無く、万邦咸な寧し。官を設け職を分かつは、其れ猶お室を構うるがごとく、一物堪えざれば、則ち崩橈の由なり。然して夫の貢挙の士は、格するに四科を以てし、三事九列は、是れ自り出ず、必ず標穎抜萃の俊を簡ぶ。而るに漢の末葉、桓・霊の世、柄は帝室を去り、政は奸臣に在り、網漏れて防潰え、風頽れ教沮み、清徳を抑えて諂媚を揚げ、履道を退けて多財を進む。力競い俗を成し、苟しくも得て恥無く、或いは自ら售るの宝を輸し、或いは要人の書を売り、或いは父兄貴顕にして、門を望みて辟命せられ、或いは頭を低れ膝を屈し、積習して収めらる。
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抱朴子外篇・審舉古は諸侯士を貢し、適う者之を有功と謂い、有功の者は班を増し爵を進む。士を貢して適わざる者之を有過と謂い、有過の者は位を黜け地を削る。猶お復た詩人をして大車素餐の刺を謐めしむる能わず、山林をして伐檀罝兔の賢無からしめず。況んや挙ぐるに非才の罪無く、受くるに負乗の患無きをや。衡量一たび其の格を失えば、多少安んぞ復た損す可けんや。夫れ孤立の翹秀は、器を蔵して以て賈を待ち、瑣碌の軽薄は、人事して以て速きを邀う。夫れ唯だ価を待つ、故に窮瘁に頓淪す。夫れ唯だ速きを邀う、故に佻竅して騰躍す。蓋し鳥鴟屯飛すれば、則ち鴛鳳幽集す。豺狼路に当たれば、則ち麒麟遐遁す。善を挙げて教うれば、則ち不仁の者遠ざかる。奸偽栄顕すれば、則ち英傑潜逝す。高概は阘茸と伍を為すを恥じ、清節は饕餮の貫に入るを羞ず。挙任並び謬れば、則ち群賢囊を括る。群賢囊を括れば、則ち兇邪相引く。兇邪相引けば、則ち小人道長ず。小人道長ずれば、則ち梼杌肩を比ぶ。頌声の作らざる所以、怨嗟の嗷嗷たる所以なり。
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抱朴子外篇・用刑必ず能く恵を厚くし斂を薄くし、乏しきを救い滞れるを擢き、賢を挙げ才に任じ、穡を勧め用を省き、携を招くに礼を以てし、遠きを懐くるに徳を以てし、之を陶するに成均を以てし、之を治むるに庠序を以てせば、化は上りて善を興す者は、必ず靡草の驚風を逐うが若く、心を洗い面を革むる者は、必ず清波の軽塵を滌うが若し。朝には徳譲の群后有り、野には礼を犯す軌躅無し。圜土は以て虚蕪す可く、楚革は以て永く格む可し。何ぞ必ずしも賞罰もて国を為す可けんや」と。抱朴子答えて曰く、「易に『罰を明らかにし法を勅す』と称し、書に『哀矜して獄を折む』有り。爵を朝に人に授け、刑を市に人に加うること、自来有り、豈に叔世よりせんや。仁多ければ則ち法立たず、威寡なければ則ち下上を侵す。夫れ法立たざれば、則ち庶事汩れ、下上を侵せば、則ち逆節明らかなり。至醇は既に三代に澆く、大樸は又秦漢に散じ、道は疇昔に衰え、俗は当今に薄し。而るに縄を結びて以て奸欺を整え、言わずして以て狡猾を化せんと欲し、轡策を委てて奔馬に険途に乗り、柁櫓を舎てて虚舟を泛べて以て波を凌ぎ、盤旋して以て走盗を逐い、揖譲して以て災火を救い、晁錯を斬りて以て七国を却け、干戈を舞わして以て赤眉を平らげんとするは、未だ其の可なるを見ざるなり。
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