抱朴子外篇 / 審舉
抱朴子答曰:「古者猶以射擇人,況經術乎?如其舍旃,則未見余法之賢乎此也。夫豐草不秀瘠土,巨魚不生小水,格言不吐庸人之口,高文不墮頑夫之筆。故披《洪範》而知箕子有經世之器,覽九術而見範生懷治國之略,省夷吾之書,而明其有撥亂之幹,視不害之文,而見其精霸王之道也。今孝廉必試經無脫謬,而秀才必對策無失指,則亦不得暗蔽也。良將高第取其膽武,猶復試之以對策,況文士乎?假令不能必盡得賢能,要必愈於了不試也。
新字:抱朴子答曰:「古者猶以射択人,況経術乎?如其舎旃,則未見余法之賢乎此也。夫豊草不秀瘠土,巨魚不生小水,格言不吐庸人之口,高文不堕頑夫之筆。故披《洪範》而知箕子有経世之器,覧九術而見範生懐治国之略,省夷吾之書,而明其有撥乱之幹,視不害之文,而見其精覇王之道也。今孝廉必試経無脱謬,而秀才必対策無失指,則亦不得暗蔽也。良将高第取其胆武,猶復試之以対策,況文士乎?仮令不能必尽得賢能,要必愈於了不試也。
書き下し
抱朴子答えて曰く、「古は猶お射を以て人を択ぶ、況んや経術をや。如し其れ旃を舎かば、則ち未だ余法の此より賢なるを見ざるなり。夫れ豊草は瘠土に秀でず、巨魚は小水に生ぜず、格言は庸人の口より吐かず、高文は頑夫の筆より墜ちず。故に洪範を披きて箕子の経世の器有るを知り、九術を覧て范生の治国の略を懐くを見、夷吾の書を省みて其の乱を撥める幹有るを明らかにし、不害の文を視て其の霸王の道に精なるを見る。今孝廉は必ず経を試みて脱謬無く、秀才は必ず策に対して指を失う無くんば、則ち亦た暗蔽するを得ざるなり。良将・高第は其の胆武を取るも、猶お復た之を試みるに対策を以てす、況んや文士をや。仮令必ず尽くは賢能を得ざるも、要は必ず了く試みざるより愈らん。
現代語訳
抱朴子は答えて言う。「昔はなお弓射で人を選んだ。まして経術ならなおさらである。もしこれを捨てるなら、これより優れた別の方法を見たことがない。豊かな草は痩せた土に茂らず、大魚は小さな水に生まれず、格言は凡人の口から出ず、すぐれた文章は愚かな者の筆から生まれない。だから洪範を開けば箕子に世を経める器があるのが分かり、九術を見れば范蠡に国を治める策略があるのが見え、管夷吾の書を読めば乱を治める才があるのが明らかになり、申不害の文を見ればその霸王の道に精通しているのが分かる。いま孝廉は必ず経を試して誤りがなく、秀才は必ず策問に答えて趣旨を外さないなら、愚かさを隠せない。良将や高第は胆力と武勇で選ぶ場合でも、やはり対策で試すのだから、まして文士ならなおさらである。かりに必ずしも賢能をすべて得られなくても、まったく試さないよりは必ず勝る。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
抱朴子外篇・審舉抱朴子答えて曰く、「人を知れば則ち哲、上聖すら難しとす。今牧守をして皆な良才を未だ用いざるに審らかにし、性履の始終を保たしむるは、誠に未だ易からず。但だ共に其の私情を遣り、其の聡明を竭くし、利欲に動かされず、属托に屈せず、挙げんと欲する所は、必ず思いを澄まして以て之を察し、博く訪ねて以て之を詳らかにし、其の名を修めて其の行を考え、同異を校べて以て虚飾に備う。親族をして其の孝友を称し、邦閭をして其の信義に帰せしむ。嘗て小仕せし者は、忠清の効、事を治むるの幹有らば、則ち寸錦以て巧みを知るに足り、刺鼠以て勇を観るに足るなり。「又、秀孝は皆な宜しく旧の如く経を試み策に答えしめ、其の罪対の奸を防ぎ、当に其の中らざる者は署せざるを必絶し、吏に罰禁錮を加えしむべし。其の挙ぐる所の書の中らざる者は、刺史・太守は官を免じ、中らざれば左遷す。中る者多く中らざる者少なければ、後の転は故に過ぐるを得ず。若し賕を受けて当たらざる所を挙げ、発覚して験有らば、名を除き、終身禁錮し、赦令を以て原さず、挙ぐる所と挙ぐる者と罪を同じくす。今試みに此の法を用い、治むること一二歳の間にして、秀孝の必ず行かざる者多からん、亦た以て天下の貢挙の精ならざること久しきを知るに足る。此を過ぎれば、則ち必ず徳を修めて学に勤むる者多からん。
-
抱朴子外篇・審舉抱朴子曰く、華・霍の能く極天の峻きを崇くする所以の者は、其の下の厚きに由り、唐・虞の能く巍巍の功に臻れる所以は、実に股肱の良きに頼ればなり。孫陽の手有りと雖も、騏驥の足無ければ、則ち千里を致すを得ず。稽古の才有りと雖も、力を宣ぶるの佐無ければ、則ち庶績を凝むるに縁る莫し。人君は明日月を並ぶと雖も、神鑑未だ兆さず、然れども万機は以て独り統ぶ可からず、曲碎は以て親しく総ぶ可からず、必ず目を仮りて以て遐く覧、耳を借りて以て広く聴き、誠に有司を須ちて、是れ康んじ是れ賛く。故に聖君は心に根ざして賢を招き、挙才を以て首務と為さざる莫し。玉帛を丘園に施し、翹車を巌藪に馳せ、人を求むるに労し、能を用うるに逸し、上は槐棘より、降りては皂隷に逮び、道を論じ国を経し、職に任ぜざる莫し。己を恭しくして無為、而して治平らぎ刑措かれ、化洽く外無く、万邦咸な寧し。官を設け職を分かつは、其れ猶お室を構うるがごとく、一物堪えざれば、則ち崩橈の由なり。然して夫の貢挙の士は、格するに四科を以てし、三事九列は、是れ自り出ず、必ず標穎抜萃の俊を簡ぶ。而るに漢の末葉、桓・霊の世、柄は帝室を去り、政は奸臣に在り、網漏れて防潰え、風頽れ教沮み、清徳を抑えて諂媚を揚げ、履道を退けて多財を進む。力競い俗を成し、苟しくも得て恥無く、或いは自ら售るの宝を輸し、或いは要人の書を売り、或いは父兄貴顕にして、門を望みて辟命せられ、或いは頭を低れ膝を屈し、積習して収めらる。
-
抱朴子外篇・審舉兵興るの世、武貴く文寝み、俗人の儒士を視ること仆虜の如く、経誥を見ること芥壌の如き者は、何ぞや。声名の此に背くに由る。夫れ用いざるは、譬えば猶お章甫を夷越に售り、髯蛇を華夏に徇うがごとし。今若し遐邇一例にして、考課を明らかにし試みれば、則ち必ず多く笈を負うて千里、以て師友を尋ね、其の礼賂の費を転じて、以て記籍を買う者、終日を俟たざらん」と。抱朴子曰く、「才学の士の秀孝に堪うる者は、已に多く得可からず。就令其の人桓・霊の世の若く、吏を挙ぐるに財貨を先にせず、便ち台閣の主者に安んずれば、則ち諸経本解を兼ぬ、問に対えて答えざる無しと雖も、猶お誣枉せられて過ぐるを得ざらしめん。常に時の執事の、重ねて之が防を為さざるを追恨す。
-
抱朴子外篇・審舉古は諸侯士を貢し、適う者之を有功と謂い、有功の者は班を増し爵を進む。士を貢して適わざる者之を有過と謂い、有過の者は位を黜け地を削る。猶お復た詩人をして大車素餐の刺を謐めしむる能わず、山林をして伐檀罝兔の賢無からしめず。況んや挙ぐるに非才の罪無く、受くるに負乗の患無きをや。衡量一たび其の格を失えば、多少安んぞ復た損す可けんや。夫れ孤立の翹秀は、器を蔵して以て賈を待ち、瑣碌の軽薄は、人事して以て速きを邀う。夫れ唯だ価を待つ、故に窮瘁に頓淪す。夫れ唯だ速きを邀う、故に佻竅して騰躍す。蓋し鳥鴟屯飛すれば、則ち鴛鳳幽集す。豺狼路に当たれば、則ち麒麟遐遁す。善を挙げて教うれば、則ち不仁の者遠ざかる。奸偽栄顕すれば、則ち英傑潜逝す。高概は阘茸と伍を為すを恥じ、清節は饕餮の貫に入るを羞ず。挙任並び謬れば、則ち群賢囊を括る。群賢囊を括れば、則ち兇邪相引く。兇邪相引けば、則ち小人道長ず。小人道長ずれば、則ち梼杌肩を比ぶ。頌声の作らざる所以、怨嗟の嗷嗷たる所以なり。
-
抱朴子外篇・審舉高幹長材は、能を恃みて己に勝り、屈伸默語して、天に聴き命に任せ、窮通得失は、之を自然に委ぬ。亦た焉んぞ多党の者の後に堕ち、有力の者の下に居らざるを得んや。逸倫の士は、礼に非ざれば動かず、山のごとく峙ち淵のごとく渟み、之を知る者は希なり。馳逐の徒は、蔽いて之を毀る。故に賢を思う君は、終に奇才の在る所を知らず、道を懐く人は、力を効さんと願えども従う莫し。稷・卨の器を抱き、邈世の量を資くると雖も、遂に沈滞して死に詣り、登叙せられざるなり。而して党有り力有る者は、紛然として鱗萃し、人乏しく官曠しく、致す者も又美なれば、亦た安んぞ拾掇して之を用いざるを得んや。
-
抱朴子外篇・審舉今且つ天下の諸もろ当に貢挙の流に在るべき者をして、敢えて学に勤めざる莫からしめん。但だ此の一条、其の風教を長益すること、亦た細かならず。若し海内をして妄挙の失を畏れ、凡人をして僥幸の求めを息め、競逐の末に背き、学問の本に帰せしめば、儒道将に大いに興り、私貨は必ず漸く絶え、奇才は得て役う可く、庶官は以て曠しからざる可し」と。或るひと曰く、「先生は貢挙の法を急にせんと欲するも、但だ禁錮の罪は、苛にして且つ重く、懼るる者甚だ衆し。夫れ轡を急にし策を繁くするは、伯楽の為さざる所、密防峻法は、徳政の恥ずる所」と。抱朴子曰く、「夫れ骨を填め肉を補うの薬は、体を養い寿を益すに長ずるも、以て日曷溺の急を救う可からず。寛を務め垢を含むの政は、以て敦きに蒞み樸を禦む可きも、以て衰弊の変を拯う可からず。虎狼の逼らるるに、戈を揮い剣を奮わずして、琴を弾じ詩を詠ぜば、吾未だ其の身の保つ可きを見ざるなり。燎火室に及ぶに、奔走灌註せずして、揖譲盤旋せば、吾未だ其の焚の自ら息むを見ざるなり。今、策を売らんと欲する者と此を論ずるは、是れ跖と盗を捕うるを議するなり」と。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る