導師導古典を学びたいすべての人に 法人向けワークシート法人向けワークシート

抱朴子外篇 / 用刑

「蓋三皇步而五常驟,霸王以來,載馳載騖。當其弊也,吏欺民巧,寇盜公行,髡鉗不足以懲無恥,族誅不能以禁覬覦。重目以廣視,累耳以遠聽,抗燭以理滯事,焦心以息奸源,而猶市朝有呼嗟之音,邊鄙有不聞之枉。作威作福者,或發乎瞻視之下;兇家害國者,或構乎蕭墻之內。而欲以太昊之道,治偷薄之俗;以畫一之歌,救鼎湧之亂,非識因革之隨時,明損益之變通也。所謂刻舟以摸遺劍,叁天而射五步,摜犀兕之甲,以涉不測之淵;扲卻寒之裘,以禦郁隆之暑,踵之解除,頤之搔背,其為憒憒,莫此之劇矣!

新字:「蓋三皇歩而五常驟,覇王以来,載馳載騖。当其弊也,吏欺民巧,寇盗公行,髡鉗不足以懲無恥,族誅不能以禁覬覦。重目以広視,累耳以遠聴,抗燭以理滞事,焦心以息奸源,而猶市朝有呼嗟之音,辺鄙有不聞之枉。作威作福者,或発乎瞻視之下;兇家害国者,或構乎蕭墻之内。而欲以太昊之道,治偸薄之俗;以画一之歌,救鼎湧之乱,非識因革之随時,明損益之変通也。所謂刻舟以摸遺剣,叁天而射五歩,摜犀兕之甲,以渉不測之淵;扲却寒之裘,以禦郁隆之暑,踵之解除,頤之搔背,其為憒憒,莫此之劇矣!

書き下し

「蓋し三皇は歩み五常は驟し、霸王より以来、載ち馳せ載ち騖す。其の弊に当たりては、吏欺き民巧み、寇盗公行し、髡鉗も以て無恥を懲らすに足らず、族誅も以て覬覦を禁ずる能わず。目を重ねて以て視を広め、耳を累ねて以て聴を遠くし、燭を抗げて以て滞事を理め、心を焦して以て奸源を息むるも、猶お市朝には呼嗟の音有り、辺鄙には聞こえざる枉有り。威を作し福を作す者は、或いは瞻視の下に発し、家を兇し国を害する者は、或いは蕭墻の内に構う。而るに太昊の道を以て偸薄の俗を治め、画一の歌を以て鼎湧の乱を救わんと欲するは、因革の時に随い、損益の変通を明らかにするを識るに非ざるなり。所謂舟に刻みて遺剣を摸め、天に参りて五歩を射、犀兕の甲を摜きて以て不測の淵を渉り、却寒の裘を扲りて以て郁隆の暑を禦ぎ、踵を之れ解除し、頤を之れ背を搔くなり。其の憒憒たること、此れより劇しきは莫し。

現代語訳

「そもそも三皇の時代は歩むように、五帝の時代は小走りに治めたが、覇者の時代以来は、走り駆け回る世となった。その弊害に当たっては、役人が欺き民が巧みになり、盗賊が公然と横行し、髡や鉗の刑も恥知らずを懲らすに足りず、一族皆殺しも野心を抑えられない。目を重ねて視野を広げ、耳を重ねて聞く範囲を遠くし、灯をかざして滞った事を処理し、心を焦がして奸の源を絶とうとしても、市や朝廷には嘆きの声があり、辺境には届かない冤罪がある。威福を弄ぶ者は目の届く足元から現れ、家を乱し国を害する者は屏風の内側に企みを巡らす。それなのに太昊の道で薄情な風俗を治め、画一の歌で煮えたぎる乱を救おうとするのは、時に応じて改め、損益に応じて変通する理を知らないということだ。いわゆる舟に印を刻んで落とした剣を探し、天に向かって五歩先の的を射、犀の甲をまとって底知れぬ淵を渡り、寒さを避ける毛皮を着て蒸し暑さを防ぎ、踵で痒みを取り除こうとし、あごで背中を掻くようなものである。その愚かさは、これより甚だしいものはない。

解説

「因革の時に随い、損益の変通を明らかにする」。時代に合わせて制度を改める理解が、ここでの要点です。「舟に刻みて遺剣を摸む」など五つの愚かな喩えを畳みかけ、古い手法を今の世にそのまま当てる愚を批判します。経営や組織運営でも、創業期や好況期に有効だった手法を、環境が変わったあとも続けてしまう例は多くあります。過去の成功体験をそのまま適用していないか、時代に応じた仕組みに置き換えられているかを点検するための、手厳しい喩え集として読めます。

この章句が説くこと

犀兕の甲を摜きて以て不測の淵を渉り損益の変通を明らかにする舟に刻みて遺剣を摸め太昊の道を以て偸薄の俗を治め時宜変通

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る