抱朴子外篇 / 官理
抱樸子曰:騄駬之騁逸跡,由造父之禦也;禹稷之序百揆,遭唐虞之主也。故能不勞而千里至,揖讓而頌聲作。若乃臧否之乘驌騻,殷辛之臨三仁,欲長驅輕騖,則轡急轅逼,欲盡規竭忠,則禍如發機。所以車傾於險途,國覆而不振也。故良駿敗於拙禦,智士躓於暗世。仲尼不能止魯侯之出,晏嬰不能遏崔杼之亂。其才則是,主則非也。夫君猶器也,臣猶物也,器小物大,不能相受矣。髫孺背千金而逐蛺蜨,越人棄八珍而甘蛙黽,即患不賞好,又病不識惡矣。夫不用,則雖珍而不貴矣;莫與,則傷之者必至。昔衛靈聽聖言而數驚,秦孝聞高談而睡寐,而欲緝隆平之化,收良能之勛,猶卻行以逐馳,適楚而道燕也。
新字:抱樸子曰:騄駬之騁逸跡,由造父之禦也;禹稷之序百揆,遭唐虞之主也。故能不労而千里至,揖譲而頌声作。若乃臧否之乗驌騻,殷辛之臨三仁,欲長駆軽騖,則轡急轅逼,欲尽規竭忠,則禍如発機。所以車傾於険途,国覆而不振也。故良駿敗於拙禦,智士躓於暗世。仲尼不能止魯侯之出,晏嬰不能遏崔杼之乱。其才則是,主則非也。夫君猶器也,臣猶物也,器小物大,不能相受矣。髫孺背千金而逐蛺蜨,越人棄八珍而甘蛙黽,即患不賞好,又病不識悪矣。夫不用,則雖珍而不貴矣;莫与,則傷之者必至。昔衛霊聴聖言而数驚,秦孝聞高談而睡寐,而欲緝隆平之化,収良能之勛,猶却行以逐馳,適楚而道燕也。
書き下し
抱朴子曰く、騄駬が逸跡を騁するは、造父の御に由るなり。禹・稷の百揆を序するは、唐・虞の主に遭えばなり。故に労せずして千里至り、揖譲して頌声作るを能くす。臧否の驌騻に乗り、殷辛の三仁に臨むが若きは、長駆軽騖せんと欲すれば則ち轡急に轅逼り、規を尽くし忠を竭くさんと欲すれば則ち禍は機を発するが如し。車の険途に傾き、国の覆りて振わざる所以なり。故に良駿は拙き御に敗れ、智士は暗き世に躓く。仲尼も魯侯の出づるを止むる能わず、晏嬰も崔杼の乱を遏むる能わず。其の才は則ち是なるも、主は則ち非なり。夫れ君は猶お器のごときなり、臣は猶お物のごときなり。器小さく物大なれば、相受くる能わず。髫孺は千金に背きて蛺蜨を逐い、越人は八珍を棄てて蛙黽を甘しとす。即ち好きを賞せざるを患え、又悪しきを識らざるを病む。夫れ用いざれば則ち珍なりと雖も貴ばれず、与にする莫ければ則ち之を傷つくる者必ず至る。昔、衛霊は聖言を聴きて数しば驚き、秦孝は高談を聞きて睡寐す。而るに隆平の化を緝め、良能の勲を収めんと欲するは、猶お却行して以て馳するを逐い、楚に適きて燕を道うがごときなり。
現代語訳
抱朴子は言う。名馬の騄駬が駆け抜けられるのは造父の御があるからであり、禹や稷が百官を整えられたのは唐・虞の君主にめぐり会ったからである。だから骨折らずに千里に至り、ゆずり合いのうちに頌歌が起こる。臧否が名馬の驌騻に乗り、殷の紂が三人の仁者に臨むような場合は、速く走ろうとすれば手綱はきつく轅は迫り、規範を尽くし忠を捧げようとすれば、禍いは弩の引き金を引くように降りかかる。車が険路で傾き、国が覆って立ち直れないのはこのためである。ゆえに良い馬は下手な御者に潰され、智者は暗い世で躓く。孔子も魯侯の出奔を止められず、晏嬰も崔杼の乱を抑えられなかった。才は正しくとも、主君が誤っていたのだ。君主は器、臣下は物のようなもので、器が小さく物が大きければ受け入れられない。幼子は千金を捨てて蝶を追い、越人は八珍を捨てて蛙を好む。良いものを愛でないのを憂え、悪いものを見分けないのを病むことになる。用いなければ珍宝でも貴ばれず、味方がなければ傷つける者が必ず現れる。昔、衛の霊公は聖人の言葉を聞いて何度も驚き、秦の孝公は高論を聞いて居眠りした。それでいて太平の教化を整え、有能な者の功を収めようとするのは、後ろ向きに歩いて走る者を追い、楚へ行くのに燕の道を語るようなものだ。
解説
この章句が説くこと
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