抱朴子外篇 / 崇教
若夫王孫公子,優遊貴樂,婆娑綺紈之間,不知稼穡之艱難,目倦於玄黃,耳疲乎鄭衛,鼻饜乎蘭麝,口爽於膏粱,冬沓貂狐之缊麗,夏縝紗縠之翩飄,出驅慶封之輕軒,入宴華房之粲蔚,飾朱翠於楹棁,積無已於篋匱,陳妖冶以娛心,湎醹醁以沈醉,行為會飲之魁,坐為博奕之帥。省文章既不曉,睹學士如草芥,口筆乏乎典據,牽引錯於事類。劇談則方戰而已屈,臨疑則未老而憔悴。雖叔麥之能辯,亦奚別乎瞽瞆哉!
新字:若夫王孫公子,優遊貴楽,婆娑綺紈之間,不知稼穡之艱難,目倦於玄黄,耳疲乎鄭衛,鼻饜乎蘭麝,口爽於膏粱,冬沓貂狐之缊麗,夏縝紗縠之翩飄,出駆慶封之軽軒,入宴華房之粲蔚,飾朱翠於楹棁,積無已於篋匱,陳妖冶以娯心,湎醹醁以沈酔,行為会飲之魁,坐為博奕之帥。省文章既不暁,睹学士如草芥,口筆乏乎典拠,牽引錯於事類。劇談則方戦而已屈,臨疑則未老而憔悴。雖叔麦之能弁,亦奚別乎瞽瞆哉!
書き下し
若し夫れ王孫公子の、優遊貴楽し、綺紈の間に婆娑として、稼穡の艱難を知らず、目は玄黄に倦み、耳は鄭衛に疲れ、鼻は蘭麝に饜き、口は膏粱に爽い、冬は貂狐の縕麗を沓ね、夏は紗縠の翩飄を縝い、出でては慶封の軽軒を駆り、入りては華房の粲蔚に宴し、朱翠を楹棁に飾り、無已を篋匱に積み、妖冶を陳べて以て心を娯しませ、醹醁に湎れて以て沈酔し、行きては会飲の魁と為り、坐しては博奕の帥と為る。文章を省みれば既に暁らず、学士を睹ること草芥の如く、口筆は典拠に乏しく、牽引は事類に錯る。劇談すれば則ち方に戦いて已に屈し、疑いに臨めば則ち未だ老いずして憔悴す。叔麦の能く辯ずるが如しと雖も、亦た奚ぞ瞽瞆に別たんや。
現代語訳
さて、王孫や公子たちは、ゆったりと貴い楽しみにふけり、絹の衣の間をさまよいながら、農作の苦労を知らない。目は美しい色彩に飽き、耳は鄭・衛の淫らな音楽に疲れ、鼻は蘭や麝香の香りに飽き、口はあぶら肉や上等の穀物に味覚を狂わせている。冬は貂や狐の毛皮を幾重にも重ね、夏は薄絹の軽やかな衣をまとい、出れば慶封のような軽い車を走らせ、入れば華やかな部屋で宴を開き、柱や梁を朱や翡翠で飾り、尽きることのない財を箱にため込み、なまめかしい女を並べて心を楽しませ、美酒に溺れて酔いしれ、出かければ酒宴の頭となり、座れば博打や碁の大将となる。文章を見ても分からず、学者を見ること雑草やごみのようで、口や筆に典拠が乏しく、引用は事柄の類を取り違える。熱い議論になれば戦い始めたとたんにやり込められ、疑問に出会えば老いもしないうちにやつれる。叔麦のように弁が立つ者であっても、目の見えない者や耳の聞こえない者と何が違おうか。
解説
この章句が説くこと
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抱朴子外篇・崇教其の宮殿を談ずれば、則ち遠くは瑤台瓊室に擬し、近くは阿房林光に效い、千門万戸を以て局促と為し、昆明太液を以て浅陋と為し、茅茨を笑いて不肖と為し、土階を以て樸馬と為す。民力は功役に竭き、儲蓄は不急に靡え、土山を起こして以て嵩霍に準え、渠水を決して以て九河に象る。凌霄の華観に登り、雲際の綺窓を辟く。淫音は噪ぎて耳を惑わし、羅袂は揮いて目を乱し、濮上北里、畳奏畳起す。或いは号び或いは呼び、昼を俾て夜と作す。羽觴の間に流連し、弦節の側に沈淪す。或いは翠翳の青蔥を建て、或いは勇禽を郊坰に射、軽足を険峻の上に馳せ、僚隷を盛日の下に暴し、火を挙げて往き、星に乗じて返り、機事は廃れて修まらず、賞罰は棄てて治まらず。或いは文艘を滉瀁に浮かべ、密網を緑川に布き、香餌を漣潭に垂れ、擢歌を清淵に縦にし、高繳を飛ばして以て軽鴻を下し、沈綸を引きて以て潜鱗を抜く。或いは罝罘を林麓の中に結び、重囲を山沢の表に合わせ、丹飈を豊草に列ね、逸騎を平原に騁せ、盧猟を縦にして以て狡獣を噬ましめ、軽鷂を飛ばして以て翔禽を鷙え、勁弩は狂兕を殪し、長戟は熊虎を斃す。此くの如くして、既に年を弥るも厭かず、載を歴て已まざるなり。
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抱朴子外篇・崇教抱朴子曰く、蓋し聞く、帝の元儲は、必ず太学に入り、師に承けて道を問う。国子に歯する者は、臣たるを知るを以て、然る後に君たる可し。子たるを知り、然る後に父たる可し、と。故に学立ちて仕え、政を以て学ばず。刀を操りて割を傷つくるは、鄭喬の嘆く所なり。情に触れ欲を縱にする、之を人に非ずと謂う。而るに貴遊の子弟は、深宮の中に生まれ、婦人の手に長じ、憂懼の労、未だ嘗て心に経ず、或いは未だ繈褓の中を免れざるに、青紫の官を加え、才は衣冠に勝うるのみにして、清顕の位に居る。殺生の威を操り、黜陟の柄を提げ、栄辱は与奪に決し、利病は唇吻に感じ、愛悪は時として暫くも乏しからず、毀誉は耳に括厲す。嫌疑は象類し、是に似て非なり、機会に因りて以て無端を生じ、素信に藉りて以て巧言を設け、交構の変は、千端万緒、巧算も詳らかにする能わざる所、毫墨も究むる能わざる所なり。術学無くんば、則ち安んぞ能く邪正の真偽を見、古今の行事を具えんや。自ら悟るの理は、惑い仮る所無きも、能く傾巣覆車の禍無からんや。
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抱朴子外篇・貴賢患うるは、深宮の中に生まれ、婦人の手に長じ、稼穡の艱難を識らず、憂懼の何の理なるかを知らず、家を承け体を継ぎて、崇替に蔽わるるに在り。急とする所は侈靡に在り、至務は遊晏に在り、畋猟に般び、酣楽に湎れ、淫声を聞けば則ち聴を驚かし、艶色を見れば則ち視を改む。聡を役い明を用うるは、此の二事に止まる。人物を鑑澄するに、神を経ざず、唯だ玩弄の以て心志を悦ばしむ可きを識りて、奇士の以て社稷を安んず可きを知らず。犀象珠玉は、足無くして万里の外より至り、傾くを定むるの器は、能く行きて四境の内に淪む。二豎の疾既に据わりて良医を募り、棟橈むの禍已に集まりて謀夫を思う。何ぞ火起こりて乃ち井を穿ち、饑を覚えて田を占むるがごとくなるや。夫れ庸隷すら猶お拊循せずして卒に其の力を尽くさしむ可からず、安んぞ素無くして暴かに其の用を得可けんや。
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抱朴子外篇・勖學世道は難多く、儒教は淪喪し、文武の軌は将に遂に雕墜せんとす。或いは声色の中に沈溺し、或いは競逐の路に駆馳す。孤貧にして六藝を精しくする者は、遊夏の資を以てして、九泉の下に抑頓せられ、風に因りて鳳翼に附く者は、駑庸の質を以てして、猶お霞霄の表に迴遑す。本を舎てて末を逐う者は、之を勤修庶幾と謂い、経を擁して己を求むる者は、之を陸沈迂闊と謂う。是に於いて塵を蒙り雨に触れ、霜を戴き氷を履み、黄を懐き白を握り、清を提げ肥を挈え、以て邪径の近易に赴き、朝に種えて暮れに獲るを規らざる莫し。
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抱朴子外篇・崇教而るに又、之に加うるに四時の請会、祖送慶賀を以てし、数を思うの密客を要え、贄を執るの嘉賓に接す。人間の務め、密勿として罔極なり。是を以て雅正は稍遠ざかり、遨逸は漸く篤し。其の儒学を去ること、緬乎として邈かなり。能く独り崇替の理を見、自ら淪溺の中より抜け、敗徳の険途を舎てて、長世の大道を履む者は、良に甚だ鮮なり。嗟乎、此れ国を保ち家を安んずる者の至って稀にして、傾撓し泣血する者の無算なる所以なり。今、聖明上に在り、古を稽え物を済い、堤防を堅くして以て決溢を杜ぎ、褒貶を明らかにして以て勧沮を彰らかにす。想うに宗室公族、及び貴門の富年は、必ず当に競って儒術を尚び、藝文を撙節し、老荘の意の急ならざるを釈て、六経の正道を精しくすべし。
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抱朴子外篇・知止然り而して入れば則ち蘭房窈窕として、朱帷組帳あり、文茵は華第に兼ね舒び、艶容は左右に粲爛たり。軽き体、柔らかき声、清歌妙舞あり、宋蔡の巧み、陽阿の妍あり。口に辨菱・延露の曲を吐き、足は淥水・七槃の節を躡む。音を知れば耳を悦ばせ、冶姿は心を娯しませ、密宴は継ぎ集い、醽醁は撤せず。仰いでは綺閣に登り、俯しては清淵に映す。果林の丹翠に遊び、蕙囿の芬馥に戯る。文鱗は瀺灂し、朱習は頡頏す。飛繳は雲鴻を墜とし、沈綸は魴鯉を引く。遠珍は索めずして交々集まり、玩弄の紛華は自ずから至る。出づれば則ち朱輪は路に耀き、高蓋は軫を接ぎ、丹旗は雲のごとく蔚り、麾節は翕赫たり。金口は嘈□して□を献じ、戈甲は璀錯たり。得意は後乗に托し、嘉旨は属車に盈つ。遊観の娯しみを窮め、畋漁の歓びを極む。聖明の誉れは耳に満ちて入り、諂悦の言は口を異にして辞を同じくす。是の時に眇然として、意は古人を蔑し、伊・呂・管・晏も算うるに足らずと謂う。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
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