抱朴子外篇 / 勖學
若乃下帷高枕,遊神九典,精義賾隱,味道居靜,確乎建不拔之操,揚青於歲寒之後,不揆世以投跡,不隨眾以萍漂者,蓋亦鮮矣。汲汲於進趨,悒悶於否滯者,豈能舍至易速達之通途,而守甚難必窮之塞路乎?此川上所以無人,《子衿》之所為作。憫俗者所以痛心而長慨,憂道者所以含悲而頹思也。夫寒暑代謝,否終則泰,文武叠貴,常然之數也。冀群寇畢滌,中興在今,七耀遵度,舊邦惟新,振天彗以廣埽,鼓九陽之洪爐,運大鈞乎皇極,開玄模以軌物。陶冶庶類,匠成翹秀,蕩汰積埃,革邪反正。戢幹戈,橐弓矢,興辟雍之庠序,集國子,修文德,發金聲,振玉音。降風雲於潛初,旅束帛乎丘園,令抱翼之鳳,奮翮於清虛;項領之駿,騁跡於千里。使夫含章抑郁,窮覽洽聞者,申公伏生之徒,發玄纁,登蒲輪,吐結氣,陳立素,顯其身,行其道,俾聖世迪唐虞之高軌,馳升平之廣途,玄流沾於九垓,惠風被乎無外。五刑厝而頌聲作,和氣洽而嘉禾遂生,不亦休哉!
新字:若乃下帷高枕,遊神九典,精義賾隠,味道居静,確乎建不抜之操,揚青於歳寒之後,不揆世以投跡,不随衆以萍漂者,蓋亦鮮矣。汲汲於進趨,悒悶於否滞者,豈能舎至易速達之通途,而守甚難必窮之塞路乎?此川上所以無人,《子衿》之所為作。憫俗者所以痛心而長慨,憂道者所以含悲而頽思也。夫寒暑代謝,否終則泰,文武叠貴,常然之数也。冀群寇畢滌,中興在今,七耀遵度,旧邦惟新,振天彗以広埽,鼓九陽之洪炉,運大鈞乎皇極,開玄模以軌物。陶冶庶類,匠成翹秀,蕩汰積埃,革邪反正。戢幹戈,橐弓矢,興辟雍之庠序,集国子,修文徳,発金声,振玉音。降風雲於潜初,旅束帛乎丘園,令抱翼之鳳,奮翮於清虚;項領之駿,騁跡於千里。使夫含章抑郁,窮覧洽聞者,申公伏生之徒,発玄纁,登蒲輪,吐結気,陳立素,顕其身,行其道,俾聖世迪唐虞之高軌,馳升平之広途,玄流沾於九垓,恵風被乎無外。五刑厝而頌声作,和気洽而嘉禾遂生,不亦休哉!
書き下し
若し乃ち帷を下ろし枕を高くし、神を九典に遊ばせ、義の賾隠を精しくし、道を味わい静に居り、確乎として不抜の操を建て、青を歳寒の後に揚げ、世を揆らずして跡を投じ、衆に随いて萍のごとく漂わざる者は、蓋し亦た鮮し。進趨に汲汲とし、否滞に悒悶する者は、豈に能く至易速達の通途を舎てて、甚だ難く必ず窮まる塞路を守らんや。此れ川上に人無き所以、子衿の作らるる所以なり。俗を憫れむ者の心を痛めて長慨し、道を憂うる者の悲しみを含みて思いを頽る所以なり。夫れ寒暑は代謝し、否終われば泰、文武は叠いに貴ばる。常然の数なり。冀わくは群寇畢く滌われ、中興は今に在り、七耀度に遵い、旧邦惟れ新たならん。天彗を振るいて以て広く埽き、九陽の洪炉を鼓し、大鈞を皇極に運らし、玄模を開きて以て物を軌す。庶類を陶冶し、翹秀を匠成し、積埃を蕩汰し、邪を革め正に反す。干戈を戢め、弓矢を橐にし、辟雍の庠序を興し、国子を集め、文徳を修め、金声を発し、玉音を振るう。風雲を潜初に降し、束帛を丘園に旅ね、翼を抱くの鳳をして、翮を清虚に奮わしめ、項領の駿をして、跡を千里に騁せしむ。夫の章を含みて抑鬱し、窮覧洽聞する者、申公・伏生の徒をして、玄纁を発し、蒲輪に登り、結気を吐き、立素を陳べ、其の身を顕し、其の道を行わしめ、聖世をして唐虞の高軌に迪み、升平の広途に馳せしめば、玄流は九垓に沾い、恵風は無外に被らん。五刑措かれて頌声作り、和気洽くして嘉禾遂に生ず。亦た休からずや。
現代語訳
もしも帷を下ろして枕を高くし、精神を九典に遊ばせ、義理の奥深いところを精密に究め、道を味わって静かに居り、確固として動かない操を立て、冬の寒さの後にも青々とした松のように色を保ち、世の風潮を量らずに身を投じ、大勢に従って浮き草のように漂わない者は、おそらく稀である。目先の出世に汲々とし、停滞に悶々とする者が、どうして最も易しく速く到達できる大通りを捨てて、非常に難しく必ず行き詰まる塞がれた道を守ることがあろうか。これが川のほとりに人がいなくなった理由であり、『子衿』の詩が作られた理由である。世を憐れむ者が心を痛めて長く嘆き、道を憂える者が悲しみを含んで思いが萎える理由である。寒さ暑さは入れ替わり、否が終われば泰が来る。文と武は代わるがわる貴ばれる。これは常のなりゆきだ。願わくは多くの賊が洗い清められ、中興が今ここにあり、七曜が法則に従い、古い国がまた新しくなってほしい。天の彗星のほうきを振って広く掃き清め、九つの太陽の大きな炉を煽り、大きな轆轤を皇極に巡らせ、玄妙な型を開いて物ごとを軌道に乗せる。多くの人々を陶冶し、秀でた者を作り上げ、積もった塵を洗い流し、邪を改めて正に返す。武器を収め、弓矢を袋に入れ、辟雍の学校を興し、国子を集め、文徳を修め、金の鐘の声を発し、玉の音を振るう。風雲をまだ潜んでいる龍に降ろし、束ねた絹を丘や園に送り、翼を抱いたままの鳳に清らかな空で羽ばたかせ、首の伸びた駿馬に千里に足跡を馳せさせる。かの才を含んで鬱屈し、広く見て博く聞く者、申公や伏生のような徒に、玄い絹と薄赤の絹を贈り、蒲の車輪の車に乗せ、結ばれた気を吐かせ、素の志を述べさせ、その身を現し、その道を行わせれば、聖なる世は唐虞の高い軌道を歩み、太平の広い大路を馳せ、深い流れは九つの果てまで潤い、恵みの風は果てなく広がる。五刑は置かれたまま頌の声が起こり、和の気が満ちて嘉禾が生えるであろう。なんとめでたいことではないか。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
抱朴子外篇・勖學抱樸子曰く、夫れ学は性理を清澄にし、埃穢を簸揚し、礦璞を雕鍛し、屯鈍を礱煉し、聡明を啓導し、質素を飾染し、往を察して来を知り、博く勧戒に渉る所以なり。仰ぎ観俯して察するは、是に於いてか在り、人事王道は、是に於いてか備わる。進んでは以て国を為むべく、退いては以て己を保つべし。是を以て聖賢は孜孜として之を勤めざる罔く、夙夜以て之を勉め、命尽きて日中に釈き、饑寒危困にも廃せず。豈に当世に求むる有りて以てせんや。誠に之を楽しむこと自然なればなり。夫れ斫削刻画の薄伎、射禦騎乗の易事すら、猶お慣習を須ちて然る後に善くす。況んや人理の曠く、道徳の遠く、陰陽の変、鬼神の情、緬邈玄奥にして、誠に生まれながらに知り難きをや。色白しと云うと雖も、染めざれば麗しからず。味甘しと云うと雖も、和せざれば美からず。故に瑤華琢かざれば、則ち夜を耀かすの景発せず。丹青治めざれば、則ち純鉤の勁成らず。火は則ち鉆らざれば生ぜず、扇がざれば熾んならず。水は則ち決せざれば流れず、積まざれば深からず。故に質は我に在りと雖も、成るは彼に由る。閬風に登り晨極を捫でて、然る後に井谷の暗隘なるを知る。七経を披き百氏を玩びて、然る後に面墻の至困なるを覚る。
-
抱朴子外篇・勖學世道は難多く、儒教は淪喪し、文武の軌は将に遂に雕墜せんとす。或いは声色の中に沈溺し、或いは競逐の路に駆馳す。孤貧にして六藝を精しくする者は、遊夏の資を以てして、九泉の下に抑頓せられ、風に因りて鳳翼に附く者は、駑庸の質を以てして、猶お霞霄の表に迴遑す。本を舎てて末を逐う者は、之を勤修庶幾と謂い、経を擁して己を求むる者は、之を陸沈迂闊と謂う。是に於いて塵を蒙り雨に触れ、霜を戴き氷を履み、黄を懐き白を握り、清を提げ肥を挈え、以て邪径の近易に赴き、朝に種えて暮れに獲るを規らざる莫し。
-
抱朴子外篇・崇教抱朴子曰く、秋毫を澄視する者は、天文の煥炳たるを見ず。心を細務に肆にする者は、儒道の弘遠なるを覚らず。鮑を玩ぶ者は茞蕙を忘れ、大に迷う者は反ること能わず。夫れ繩墨を受くる者に枉刳の木無く、道訓に染まる者に邪僻の人無し。治を飾るの術は、学より良きは莫し。学の広きは倦まざるに在り、倦まざるは志を固くするに在り。志茍しくも固からざれば、則ち貧賤なる者は営生に汲汲とし、富貴なる者は逸楽に沈倫す。是を以て遐覧淵博なる者は、曠代にして時に有り。面墻の徒は、肩を比べて武を接ぐなり。若し素士をして則ち昼は躬ら耕して以て口を糊し、夜は火を薪して以て業を修め、位に在る者は則ち酣宴の余暇を以て、時に勧誡に遊観せしめば、則ち世に視肉無く、遊夏乏しからず。亦た饑寒の己に切に、藜藿給せず、膚は風霜に困しみ、口は糟糠に乏しく、出でては師に従う資無く、家には暮旦の急有り、耒を釈てば則ち農事廃れ、巻を執れば則ち供養虧くる者有り、学業を闕くと雖も、怒る可き者なり。謂う所の千里の足の、塩車の下に困しみ、赤刀の礦の、欧冶の門を経ざる者なり。
-
抱朴子外篇・崇教而るに又、之に加うるに四時の請会、祖送慶賀を以てし、数を思うの密客を要え、贄を執るの嘉賓に接す。人間の務め、密勿として罔極なり。是を以て雅正は稍遠ざかり、遨逸は漸く篤し。其の儒学を去ること、緬乎として邈かなり。能く独り崇替の理を見、自ら淪溺の中より抜け、敗徳の険途を舎てて、長世の大道を履む者は、良に甚だ鮮なり。嗟乎、此れ国を保ち家を安んずる者の至って稀にして、傾撓し泣血する者の無算なる所以なり。今、聖明上に在り、古を稽え物を済い、堤防を堅くして以て決溢を杜ぎ、褒貶を明らかにして以て勧沮を彰らかにす。想うに宗室公族、及び貴門の富年は、必ず当に競って儒術を尚び、藝文を撙節し、老荘の意の急ならざるを釈て、六経の正道を精しくすべし。
-
抱朴子外篇・勖學是を以て賢人は寓世の倏忽を悲しみ、泯没して称無きを疾み、朝に聞くの弘訓に感じ、通微の類無きを悟り、将に落ちんとするの明戒を懼れ、罔念の狂と作るを覚る。飽食して以て日を終えず、功を寸陰に棄てず。逝川に鑑みて志を勉め、過隙の電速を悼む。遊情の不急なるを割き、人間の末務を損ず。憂貧の心を洗い、広願の穢れを遣り、畋猟博奕の遊戯を息め、昼寝坐睡の懈怠を矯す。徒思の益無きを知り、遂に策を聖途に振るう。学びて以て之を聚め、問いて以て之を弁じ、徳に進み業を修め、故きを温ねて新しきを知る。
-
抱朴子外篇・尚博漢魏より以来、群言彌いよ繁く、義は玄淵より深く、辞は波濤より贍かなりと雖も、之を施せば以て徴祥を天上に臻し、嘉瑞を後土に発し、環雉を大荒の外に召し、圜堵を函夏の内に安んじ、近くは禍乱の階を弭め、遠くは長世の祉を垂る可し。然れども時に聖人無く、其の口藻を目す、故に驊騄の跡を千里の途に騁せ、近世の道を三墳の末に編むを得ず。拘系の徒は、浅隘の中に桎梏せられ、挈瓶訓詁の間にあり、奇を軽んじ異を賤しみ、謂いて急ならずと為す。或いは小道は観るに足らずと云い、或いは広博は人の思いを乱すと云う、而して錙銖を合わせて山陵に重を斉しくす可く、百十を聚めて数を億兆に致す可く、群色会して袞藻麗しく、衆音雑わりて韶濩和することを識らざるなり。或いは詩の乗る浅近の細文を貴愛し、深美富博の子書を忽薄し、磋切の至言を以て騃拙と為し、虚華の小弁を以て妍巧と為し、真偽顛倒し、玉石混淆し、広楽を桑間に同じくし、龍章を卉服に鈞しくす。悠悠として皆な然り、嘆く可く慨く可きなり。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る