抱朴子外篇 / 勖學
且夫聞商羊而戒浩瀁,訪鳥砮而洽東肅,諮萍實而言色味,訊土狗而識墳羊,披《靈寶》而知山隱,因折俎而說專車,瞻離畢而分陰陽之候,由冬螽而覺閏余之錯,何神之有?學而已矣。夫童謠猶助聖人之耳目,豈況《墳》《索》之弘博哉!才性有優劣,思理有修短。或有夙知而早成,或有提耳而後喻。夫速悟時習者,驥騄之腳也;遲解晚覺者,鶉鵲之翼也。彼雖尋飛絕景,止而不行,則步武不過焉;此雖咫尺以進,往而不輟,則山澤可越焉。明暗之學,其猶茲乎?蓋少則誌一而難忘,長則神放而易失,故修學務早,及其精專,習與性成,不異自然也。若乃絕倫之器,盛年有故,雖失之於旸谷,而收之於虞淵。方知良田之晚播,愈於座歲之荒蕪也。日燭之喻,斯言當矣。
新字:且夫聞商羊而戒浩瀁,訪鳥砮而洽東粛,諮萍実而言色味,訊土狗而識墳羊,披《霊宝》而知山隠,因折俎而説専車,瞻離畢而分陰陽之候,由冬螽而覚閏余之錯,何神之有?学而已矣。夫童謡猶助聖人之耳目,豈況《墳》《索》之弘博哉!才性有優劣,思理有修短。或有夙知而早成,或有提耳而後喩。夫速悟時習者,驥騄之脚也;遅解晩覚者,鶉鵲之翼也。彼雖尋飛絶景,止而不行,則歩武不過焉;此雖咫尺以進,往而不輟,則山沢可越焉。明暗之学,其猶茲乎?蓋少則誌一而難忘,長則神放而易失,故修学務早,及其精専,習与性成,不異自然也。若乃絶倫之器,盛年有故,雖失之於旸谷,而収之於虞淵。方知良田之晩播,愈於座歳之荒蕪也。日燭之喩,斯言当矣。
書き下し
且つ夫れ商羊を聞きて浩瀁を戒め、鳥砮を訪いて東粛を洽くし、萍実を諮いて色味を言い、土狗を訊いて墳羊を識り、霊宝を披きて山隠を知り、折俎に因りて専車を説き、離畢を瞻て陰陽の候を分け、冬螽に由りて閏余の錯を覚る。何の神か之有らん。学ぶのみ。夫れ童謡すら猶お聖人の耳目を助く、豈に況んや墳索の弘博をや。才性に優劣有り、思理に修短有り。或いは夙知にして早成する有り、或いは耳を提げて後に喩る有り。夫れ速悟時習する者は、驥騄の脚なり。遅解晩覚する者は、鶉鵲の翼なり。彼は飛を尋ね景を絶つと雖も、止まりて行かざれば、則ち歩武にも過ぎず。此れは咫尺を以て進むと雖も、往きて輟めざれば、則ち山沢をも越ゆ可し。明暗の学は、其れ猶お茲のごときか。蓋し少ければ則ち志一にして忘れ難く、長ずれば則ち神放ちて失い易し。故に学を修むるは早きを務め、其の精専なるに及びては、習いは性と成り、自然に異ならず。若し乃ち絶倫の器にして、盛年に故有らば、之を暘谷に失うと雖も、之を虞淵に収む。方に知る、良田の晩く播くは、座歳の荒蕪に愈ることを。日燭の喩えは、斯の言当たれり。
現代語訳
そもそも、商羊の舞を聞いて大水を戒め、鳥の矢の石鏃を訪ねて東方の粛慎を理解し、萍実のことを尋ねてその色と味を語り、土狗を問うて墳羊を知り、霊宝の書を開いて山の隠れ事を知り、折れた俎によって専車の骨を説き、離畢の星を仰いで陰陽の気候を分け、冬の螽斯によって閏月の誤りを悟った。これのどこが神がかりだろうか。ただ学んだからである。童謡でさえ聖人の耳目を助けるのだから、まして三墳五典の広く深い書物ならなおさらである。才や資質には優劣があり、思考の筋道にも長短がある。早くから知って早く成す者もいれば、耳を引っ張ってもらってはじめて悟る者もいる。素早く悟り折にふれて習う者は、名馬の脚である。ゆっくり理解し遅く覚える者は、鶉や鵲の翼である。名馬は飛ぶように駆け影を絶つほど速くても、止まって進まなければ、わずか歩く距離を越えない。鶉や鵲は一尺ずつしか進めなくとも、行き続けてやめなければ、山や沢をも越える。聡明な者と暗い者の学びとは、このようなものであろう。若いうちは志が一つで忘れにくく、年を重ねると心が散って失いやすい。だから学を修めるのは早いうちに努め、精密に専心するに至れば、習いは性となり、自然と変わらなくなる。もし並外れた器であって、盛年に事情があったとしても、東の日の出の谷(暘谷)で失っても西の日の入りの淵(虞淵)で収める。畑を遅く耕して播くのも、荒れたまま年を過ごすよりまさると知るべきだ。日燭(日没の灯火)のたとえは、この言葉に当たっている。
解説
この章句が説くこと
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抱朴子外篇・勖學抱樸子曰く、夫れ学は性理を清澄にし、埃穢を簸揚し、礦璞を雕鍛し、屯鈍を礱煉し、聡明を啓導し、質素を飾染し、往を察して来を知り、博く勧戒に渉る所以なり。仰ぎ観俯して察するは、是に於いてか在り、人事王道は、是に於いてか備わる。進んでは以て国を為むべく、退いては以て己を保つべし。是を以て聖賢は孜孜として之を勤めざる罔く、夙夜以て之を勉め、命尽きて日中に釈き、饑寒危困にも廃せず。豈に当世に求むる有りて以てせんや。誠に之を楽しむこと自然なればなり。夫れ斫削刻画の薄伎、射禦騎乗の易事すら、猶お慣習を須ちて然る後に善くす。況んや人理の曠く、道徳の遠く、陰陽の変、鬼神の情、緬邈玄奥にして、誠に生まれながらに知り難きをや。色白しと云うと雖も、染めざれば麗しからず。味甘しと云うと雖も、和せざれば美からず。故に瑤華琢かざれば、則ち夜を耀かすの景発せず。丹青治めざれば、則ち純鉤の勁成らず。火は則ち鉆らざれば生ぜず、扇がざれば熾んならず。水は則ち決せざれば流れず、積まざれば深からず。故に質は我に在りと雖も、成るは彼に由る。閬風に登り晨極を捫でて、然る後に井谷の暗隘なるを知る。七経を披き百氏を玩びて、然る後に面墻の至困なるを覚る。
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抱朴子外篇・勖學低仰の駟は教えの功なり。鷙撃の禽は習いの馴らすなり。彼の凡馬野鷹と、本実は一類なるに、此れは以て飾り貴く、彼は質を以て賤し。行潦を運らして輟めざれば、必ず滄海に混流す。一簣を崇くして休まざれば、必ず峻極に鈞しく高し。大川滔瀁なれば、則ち虬螭群れ遊ぶ。日に就き月に将むれば、則ち徳立ち道備わる。乃ち以て正す可し。丘旦を夢み、何ぞ徒に桎を困蒙より解くのみならんや。昔、仲由は雞を冠し豘を帯し、霅珥鳴蟬、剣を杖きて舞い、南山の勁竹を盛んに称して、掘強の自然に任せんと欲す。尼父は善く誘い、染むるに徳教を以てし、遂に升堂の生と成り、四科の哲に登る。子張は鄙人にして、灼聚兇猾なりしも、道訓に漸漬し、化を成して名儒となり、乃ち王公に抗礼す。豈に直ちに庸陋を免れたるのみならんや。
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