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抱朴子外篇 / 逸民

仕人曰:「潛退之士,得意山澤,不荷世貴,蕩然縱肆,不為時用,嗅祿利,誠為天下無益之物,何如?」逸民答曰:「夫麟不吠守,鳳不司晨,騰黃不引犁,屍祝不治庖也。且夫揚大明乎無外,宜嫗煦之和風者,日也;耀華燈於暗夜,治金石以致用者,火也。天下不可以經時無日,不可以一旦無火,然其大小,不可同也。江海之外,彌綸二儀,升為雲雨,降成百川;而朝夕之用,不及累仞之井,灌田溉園,未若溝渠之沃。校其巨細,孰為曠哉?

新字:仕人曰:「潜退之士,得意山沢,不荷世貴,蕩然縦肆,不為時用,嗅禄利,誠為天下無益之物,何如?」逸民答曰:「夫麟不吠守,鳳不司晨,騰黄不引犁,屍祝不治庖也。且夫揚大明乎無外,宜嫗煦之和風者,日也;耀華灯於暗夜,治金石以致用者,火也。天下不可以経時無日,不可以一旦無火,然其大小,不可同也。江海之外,弥綸二儀,升為雲雨,降成百川;而朝夕之用,不及累仞之井,灌田溉園,未若溝渠之沃。校其巨細,孰為曠哉?

書き下し

仕人曰く、「潜退の士は、意を山沢に得、世貴を荷わず、蕩然として縦肆し、時に用いられず、禄利を嗅ぐは、誠に天下に益無きの物と為す。何如」と。逸民答えて曰く、「夫れ麟は吠えて守らず、鳳は晨を司らず、騰黄は犂を引かず、尸祝は庖を治めず。且つ夫れ大明を無外に揚げ、嫗煦の和風に宜しき者は、日なり。華灯を暗夜に耀かし、金石を治めて以て用を致す者は、火なり。天下は時を経て日無かる可からず、一旦も火無かる可からず。然れども其の大小は同じくす可からず。江海の外、二儀を弥綸し、升りては雲雨と為り、降りては百川と成る。而るに朝夕の用は累仞の井に及ばず、田を灌ぎ園に溉ぐは、溝渠の沃に若かず。其の巨細を校ぶれば、孰か曠しと為さんや。

現代語訳

仕人は言った。「世を避けて退く士は、山沢に心を得て、世の貴さを背負わず、のびのびと気ままにして、時に用いられず、禄や利益を嗅ぐだけで、まことに天下に益のないものだ。どう思うか」。逸民は答えて言った。「麒麟は吠えて番をせず、鳳凰は朝を告げず、騰黄は犂を引かず、祭りの尸祝は台所を担わない。そもそも、大いなる光を果てしなく広げ、やわらかな和風を送るのは太陽である。灯火を暗い夜に輝かせ、金石を鍛えて用を果たすのは火である。天下は一日たりとも太陽なしでいられず、一時も火なしでいられない。しかし、その大きさは同じにはならない。江海は天地の外まで広がり、昇っては雲雨となり、降っては百川となる。それなのに、朝夕の用では数仞の井戸に及ばず、田を潤し園に注ぐ点では、水路の水の肥やしに及ばない。その大小を比べれば、どちらが広いと言えようか。

解説

仕人の「天下に益無し」という言い分に、逸民は役割の違いで答えます。麒麟は番犬の役を、鳳は鶏の役をしない、という比喩で、役に立つかどうかは用途で決まると示します。太陽と火の比較では、どちらも欠かせないが、大きさも働きも違うとし、日常の用では井戸や水路のほうが役に立つこともあると、有用の次元を分けます。組織では、日常業務を支える人と、大きな方向を示す人は、成果の見え方が違います。目に見える貢献だけで評価すると、方向を示す役割が軽視されます。評価の尺度を一種類にしないことが、役割ごとの価値を守ります。

この章句が説くこと

麟は吠えて守らず尸祝は庖を治めず天下は時を経て日無かる可からず其の大小は同じくす可からず役割有用

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