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抱朴子外篇 / 嘉遁

於是懷冰先生蕭然遐眺,遊氣天衢,情神遼緬,旁若無物。俯而荅曰:「嗚呼!有是言乎?蓋至人無為,棲神沖漠,不役誌於祿利,故害辱不能加也;不躊躇於險途,故傾墜不能為患也。藜藿不供,而意佚於方丈;齊編庸民,而心歡於有土。寢宜僚之舍,閉幹木之閭,攜莊萊之友,治陋巷之居,確嶽峙而不拔,豈有懷於卷舒乎?以欲廣則濁和,故委世務而不紆眄;以位極者憂深,故背勢利而無餘疑。其貴不以爵也,富不以財也。侶雲鵬以高逝,故不縈翮於腐鼠;以蕃武為厚誡,故不改樂於簞瓢。

新字:於是懐冰先生蕭然遐眺,遊気天衢,情神遼緬,旁若無物。俯而荅曰:「嗚呼!有是言乎?蓋至人無為,棲神沖漠,不役誌於禄利,故害辱不能加也;不躊躇於険途,故傾墜不能為患也。藜藿不供,而意佚於方丈;斉編庸民,而心歓於有土。寝宜僚之舎,閉幹木之閭,攜荘萊之友,治陋巷之居,確嶽峙而不抜,豈有懐於巻舒乎?以欲広則濁和,故委世務而不紆眄;以位極者憂深,故背勢利而無余疑。其貴不以爵也,富不以財也。侶雲鵬以高逝,故不縈翮於腐鼠;以蕃武為厚誡,故不改楽於箪瓢。

書き下し

是に於いて懐冰先生は蕭然として遐かに眺め、気を天衢に遊ばせ、情神は遼緬として、傍らに物無きが若し。俯して答えて曰く、「嗚呼、是の言有らんや。蓋し至人は無為にして、神を沖漠に棲ましめ、志を禄利に役せず、故に害辱も加うる能わず。険途に躊躇せず、故に傾墜も患いと為る能わず。藜藿も供せざるも、意は方丈に佚し、庸民と斉編なるも、心は有土に歓ぶ。宜僚の舎に寝ね、干木の閭を閉ざし、荘莱の友を携え、陋巷の居を治め、確として嶽のごとく峙ちて抜けず。豈に巻舒に懐い有らんや。欲広ければ則ち和を濁すを以て、故に世務を委てて紆眄せず。位極まる者は憂い深きを以て、故に勢利に背きて余疑無し。其の貴きは爵を以てせず、富めるは財を以てせず。雲鵬に侶して以て高く逝く。故に腐鼠に翮を縈わせず。蕃武を以て厚誡と為す。故に簞瓢に楽しみを改めず。

現代語訳

そこで懐冰先生はものさびしく遠くを眺め、気を天の大路に遊ばせ、心は遥かに遠く、まるで傍らに誰もいないかのようであった。うつむいて答えて言った。「ああ、そのような言葉があろうか。思うに至人は無為であり、精神を静かで広い所に宿らせ、志を俸禄や利益のために使わない。だから害も辱めも加えられない。険しい道でためらわないので、転落も災いにならない。粗末な豆や草の食事さえ供されなくとも、心は一丈四方の食卓のように満ち足り、庶民と同列に並んでも、心は領地を持つ者のように楽しむ。宜僚の家に寝て、干木の里の門を閉ざし、荘周や老莱子のような友を連れ、狭い路地の住まいを整え、山のようにしっかり立って動かない。どうして出処進退に心を煩わせようか。欲が広がれば調和を濁すので、世の務めをうち捨てて顧みない。位の極まる者は憂いが深いので、権勢と利益に背を向けて迷いがない。尊いのは爵位によるのではなく、富んでいるのは財によるのではない。雲を飛ぶ大鵬を友として高く飛ぶので、腐った鼠のために翼を絡ませない。蕃武を厚い戒めとするので、飯一膳と瓢の水の暮らしで楽しみを変えない。

解説

ここから隠者側の反論が始まります。先生は「其の貴きは爵を以てせず、富めるは財を以てせず」と、貴富の基準そのものを組み替えます。「位極まる者は憂い深き」という見方も添えられ、地位の高さと心の安さは比例しないと言います。欲を広げるほど調和が濁る、という考え方は道家の流れに近く、仕官を勧める公子の前提を内側から外すものです。管理職として読むなら、地位や報酬だけで人を動かそうとしても、動かない人は動かないという事実を示す段です。動機の源が人によって違うことを、まず受け止める必要があります。

この章句が説くこと

其の貴きは爵を以てせず位極まる者は憂い深きを以て藜藿も供せざるも庸民と斉編なるも至人は無為にして無為

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