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秘本玉くしげ / 下 上下は遠し

しかれ共、上と下とは甚遠ければ、その吟味もとかくに行とどきかぬる事なれば、

書き下し

しかれ共、上と下とは甚遠ければ、その吟味もとかくに行とどきかぬる事なれば、

現代語訳

けれども、上と下とははなはだ遠いので、その吟味もとかく行き届きかねる事であるから、(次に述べる公事訴訟や願い事の扱いにこそ、格別の心配りがいるのである)。

解説

わずか一行の断片であるが、宣長の政道観の要がここにある。上と下とははなはだ遠い。藩主の目は城の奥から領内の隅々までは届かず、吟味はどうしても行き届かない。だから下からの訴えや願いの扱い、役人の裁きのあり方に特に心を配らねばならない、という流れで、この後に訴訟は早く済ませよという献言が続く。天明の飢饉のさなか、各地の一揆は、上に届かなかった声が溜まった末に噴き出したものでもあった。宣長は上巻でも、一揆は上の非から起こると述べている。上に立つ者は自分の目が届いていないという前提から出発せよ、というのがこの一文の教えである。

この章句が説くこと

上下吟味訴え距離政道

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