碧巌録 / 第九十八則
思明先參大覺。後承嗣前寶壽。一日問。踏破化城來時如何。壽云。利劍不斬死漢。明云。斬壽便打。思明十回道斬。壽十回打云。這漢著甚死急。將箇死屍。抵他痛棒。遂喝出。其時有一僧。問寶壽云。適來問話底僧。甚有道理。和尚方便接他。寶壽亦打趕出這僧。且道寶壽亦趕這僧。唯當道他說是說非。且別有道理。意作麼生。後來俱承嗣寶壽。思明一日出見南院。院問云。甚處來。明云。許州來。院云。將得什麼來。明云。將得箇江西剃刀。獻與和尚。院云。既從許州來。因甚却有江西剃刀阿剌剌。
新字:思明先参大覚。後承嗣前宝寿。一日問。踏破化城来時如何。寿云。利剣不斬死漢。明云。斬寿便打。思明十回道斬。寿十回打云。這漢著甚死急。将箇死屍。抵他痛棒。遂喝出。其時有一僧。問宝寿云。適来問話底僧。甚有道理。和尚方便接他。宝寿亦打趕出這僧。且道宝寿亦趕這僧。唯当道他説是説非。且別有道理。意作麼生。後来倶承嗣宝寿。思明一日出見南院。院問云。甚処来。明云。許州来。院云。将得什麼来。明云。将得箇江西剃刀。献与和尚。院云。既従許州来。因甚却有江西剃刀阿剌剌。
書き下し
思明は先に大覚に参じ、後に前の宝寿に承嗣す。一日問ふ、「化城を踏破し来る時如何」。寿云く、「利剣は死漢を斬らず」。明云く、「斬れ」。寿便ち打つ。思明十回「斬れ」と道ひ、寿十回打ちて云く、「這の漢甚の死急をか著く。箇の死屍を将て他の痛棒に抵つ」。遂に喝出す。其の時一僧有り、宝寿に問ひて云く、「適来問話せし底の僧、甚だ道理有り。和尚方便して他を接せよ」。宝寿亦た打ちて這の僧を趕出す。且く道へ、宝寿の亦た這の僧を趕ふは、唯だ当に他の是を説き非を説くと道ふべきか、且た別に道理有りや。意作麼生。後来俱に宝寿に承嗣す。思明一日出でて南院に見ゆ。院問ひて云く、「甚の処よりか来る」。明云く、「許州より来る」。院云く、「什麼をか将ち得来る」。明云く、「箇の江西の剃刀を将ち得て、和尚に献与す」。院云く、「既に許州より来る、甚に因りてか却つて江西の剃刀有る」。阿剌剌。
現代語訳
思明ははじめ大覚に参じ、後に前の宝寿の法を嗣いだ。ある日、宝寿に問うた。「化城を踏み破って来た時はどうですか」。宝寿は「鋭い剣は死人を斬らない」と言った。思明は「斬れ」と言った。宝寿はすぐさま打った。思明は十回「斬れ」と言い、宝寿は十回打って言った。「こやつ、何をそんなに死に急いでいるのか。死骸を持ち出して痛棒を受けようとは」。そしてついに一喝して追い出した。その時ある僧が宝寿に言った。「さきほど問いを発した僧は、たいへん筋が通っていました。和尚は手立てを講じて彼を導いてやってください」。宝寿はこの僧もまた打って追い出した。さて言ってみよ、宝寿がこの僧まで追い出したのは、ただ彼が是非をあげつらったからと言うべきか、それとも別に道理があるのか。その意図はどうか。後に二人とも宝寿の法を嗣いだ。思明はある日、南院に出向いて会った。南院は「どこから来たのか」と問うた。思明は「許州から来ました」と言った。南院は「何を持って来たのか」と言った。思明は「江西の剃刀を一本持ってきて、和尚に献上します」と言った。南院は「許州から来たというのに、どうして江西の剃刀を持っているのか」と言った。あらら。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『碧巌録』第九十八則垂示に云く、一夏嘮嘮として葛藤を打す、幾ど五湖の僧を絆倒せんとす。金剛宝剣当頭に截りて、始めて覚る従来百も能くせざることを。且く道へ、作麼生か是れ金剛宝剣。眉毛を眨上して、試みに請ふ鋒鋩を露はし看よ。
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『碧巌録』第九則趙州の機に臨む、一に金剛王宝剣に似たり。擬議すれば即ち爾が頭を截却し、往往更に当面に爾が眼睛を換却す。這の僧也た敢へて虎鬚を捋でて箇の問頭を致す。大いに無事に事を生ずるに似たり。争奈せん句中に機有ることを。他既に機を呈し来る、趙州も也た他の問頭に辜負せず、所以に亦機を呈して答ふ。是れ他特地に此の如くするにあらず。蓋し透底の人は自然に轍に合ふが為に、一に安排し来るに似て相似たり。見ずや、一外道有り、手に雀児を握つて、来つて世尊に問うて云く、「且く道へ、某甲が手中の雀児、是れ死か是れ活か」。世尊遂に門閫に騎つて云く、「爾道へ、我出づるか入るか」。外道無語、遂に礼拝す。此の話便ち這の公案に似たり。古人自ら是れ血脈断えず。所以に道ふ、「問は答処に在り、答は問処に在り」。雪竇此の如く見得透して、便ち道ふ、「句裏に機を呈して劈面に来る」。句裏に機有りとは、両意を帯ぶるが如し。
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『碧巌録』第二十則挙す。龍牙、翠微に問ふ、如何なるか是れ祖師西来の意。微云く、我が与に禅板を過ごし来たれ。牙、禅板を過ごして翠微に与ふ。微接得して便ち打つ。牙云く、打つことは即ち打つに任す。要且つ祖師西来の意無し。牙又臨済に問ふ、如何なるか是れ祖師西来の意。済云く、我が与に蒲団を過ごし来たれ。牙、蒲団を取りて臨済に過ごし与ふ。済接得して便ち打つ。牙云く、打つことは即ち打つに任す。要且つ祖師西来の意無し。
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『碧巌録』第六十六則挙す。巌頭、僧に問ふ、「什麼の処よりか来たる」。僧云く、「西京より来たる」。頭云く、「黄巣過ぎて後、還た剣を収め得たりや」。僧云く、「収め得たり」。巌頭、頸を引きて近前して云く、「[囗@力]」。僧云く、「師の頭落ちたり」。巌頭呵呵大笑す。僧、後に雪峰に到る。峰問ふ、「什麼の処よりか来たる」。僧云く、「巌頭より来たる」。峰云く、「何の言句か有りし」。僧、前話を挙す。雪峰、打つこと三十棒して趕ひ出だす。
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『碧巌録』第二十八則丈云く、「説き了れり」。惜しむべし、他の与に注破す。当時但だ脊を劈いて便ち棒し、他をして痛痒を知らしめん。是の如くなりと雖然も、爾且く道へ、什麼の処か是れ説く処。南泉の見処に拠らば、不是心・不是仏・不是物、曾て説著せず。且く爾諸人に問ふ、什麼に因ってか却って「説き了れり」と道ふ。他の語下に又蹤迹無し。若し他説かずと道はば、百丈什麼と為てか却って恁麼に道ふ。南泉は是れ変通底の人なり。便ち随後に一拶して云く、「某甲は只だ恁麼。和尚又作麼生」。若し是れ別人ならば、未だ分疎不下を免れず。争奈せん百丈は是れ作家にして、答処妨げず奇特なることを。便ち道ふ、「我は又是れ大善知識にあらず、争でか説と不説と有ることを知らん」。南泉便ち箇の「会せず」と道ふ。是れ渠果たして会し来たって「会せず」と道ふか、是れ真箇に会せざるにあらざるや。百丈云く、「我太殺だ爾が為に説き了れり」。且く道へ、什麼の処か是れ説く処。若し是れ泥団を弄する漢の時ならば、両箇淈淈渹渹たらん。若し是れ二り倶に作家の時ならば、明鏡の台に当たるが如し。其の実、前頭は二り倶に作家、後頭は二り倶に放過す。
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『碧巌録』第二十則古人参禅すること多少か辛苦す。大丈夫の志気を立てて、山川を経歴し、尊宿に参見す。龍牙先づ翠微・臨済に参じ、後に徳山に参ず。遂に問ふ、学人鏌鎁の剣に仗りて師の頭を取らんと擬する時如何。徳山頸を引いて云く、カッ。牙云く、師の頭落ちたり。山微笑して便ち休し去る。次に洞山に到る。洞山問ふ、近離甚れの処ぞ。牙云く、徳山より来たる。洞山云く、徳山何の言句か有る。牙遂に前話を挙す。洞山云く、他什麼とか道ふ。牙云く、他語無し。洞山云く、語無しと道ふこと莫かれ。且く試みに徳山の落ちたる底の頭を将て老僧に呈似し看よ。牙此に於て省有り。遂に香を焚き遥かに徳山を望んで礼拝懺悔す。徳山聞きて云く、洞山老漢好悪を識らず。這の漢死し来たること多少の時ぞ。救ひ得て什麼の用処か有らん。他の老僧が頭を担いで天下を遶りて走るに従はん。龍牙根性聡敏にして、一肚皮の禅を担うて行脚す。直に長安の翠微に向かつて、便ち問ふ、如何なるか是れ祖師西来の意。微云く、我が与に禅板を過ごし来たれ。牙禅板を取りて微に与ふ。微接得して便ち打つ。牙云く、打つことは即ち打つに任す。要且つ祖師西来の意無し。又臨済に問ふ、如何なるか是れ祖師西来の意。済云く、我が与に蒲団を過ごし来たれ。牙蒲団を取りて臨済に与ふ。済接得して便ち打つ。牙云く、打つことは即ち打つに任す。要且つ祖師西来の意無し。他箇の問端を致す、妨げず他の曲彔木床上の老漢を見んと要し、亦た自己の一段の大事を明らめんと要す。言虚しく設けず、機乱りに発せずと謂ひつべし。出でて工夫を做す処に在り。
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