碧巌録 / 第八十五則
垂示云。把定世界不漏纖毫。盡大地人亡鋒結舌。是衲僧正令。頂門放光。照破四天下。是衲僧金剛眼睛。點鐵成金。點金成鐵。忽擒忽縱。是衲僧拄杖子。坐斷天下人舌頭。直得無出氣處。倒退三千里。是衲僧氣宇。且道總不恁麼時。畢竟是箇什麼人。試舉看。
新字:垂示云。把定世界不漏繊毫。尽大地人亡鋒結舌。是衲僧正令。頂門放光。照破四天下。是衲僧金剛眼睛。点鉄成金。点金成鉄。忽擒忽縦。是衲僧拄杖子。坐断天下人舌頭。直得無出気処。倒退三千里。是衲僧気宇。且道総不恁麼時。畢竟是箇什麼人。試舉看。
書き下し
垂示に云く、世界を把定して繊毫をも漏らさず、尽大地の人、鋒を亡ひ舌を結ぶ、是れ衲僧の正令なり。頂門に光を放ちて四天下を照破す、是れ衲僧の金剛の眼睛なり。鉄を点じて金と成し、金を点じて鉄と成し、忽ちに擒へ忽ちに縦つ、是れ衲僧の拄杖子なり。天下の人の舌頭を坐断して、直に出気の処無く、倒退三千里なることを得しむ、是れ衲僧の気宇なり。且く道へ、総に恁麼ならざる時、畢竟是れ箇の什麼人ぞ。試みに挙す、看よ。
現代語訳
垂示にいう。世界をしっかりと押さえて毛筋ほども漏らさず、大地じゅうの人が切っ先を失い舌を結んで黙り込む。これが禅僧の正しい命令である。頭頂から光を放って四方の天下を照らし破る。これが禅僧の金剛の眼である。鉄に触れて金とし、金に触れて鉄とし、たちまち捕らえ、たちまち放つ。これが禅僧の拄杖である。天下の人の舌をどっかと断ち切り、息をつく処もなく、三千里も後ずさりさせる。これが禅僧の気概である。さあ言ってみよ、そのどれでもない時、結局それはどんな人か。試みに取り上げるから看よ。
解説
第八十五則の垂示である。圜悟は禅僧のはたらきを四つに分けて示す。世界を押さえて誰にも口を開かせない正令、四方を照らし破る金剛の眼、鉄を金に、金を鉄に変えて捕らえたり放ったりする拄杖、そして天下の人を三千里も退かせる気宇である。だが最後に、そのどれでもない時にはどんな人かと問いを翻す。力強いはたらきを並べたうえで、それらに頼らない地点を見よと言うのである。本則では庵主と僧が虎の真似を演じ合うが、その評価の伏線になっている。能力や肩書きを全部外したとき自分に何が残るのか、働く者にとっても避けられない問いである。
この章句が説くこと
垂示機鋒自由正令公案点鉄成金
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『碧巌録』第五十五則垂示に云く、穏密全真、当頭に証を取り、渉流転物、直下に承当す。撃石火閃電光の中に向かつて誵訛を坐断し、虎頭に拠り虎尾を収むる処に於て、壁立千仞なることは則ち且く置く。一線道を放つて、還た人の為にする処有りや也た無しや。試みに挙し看ん。
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