碧巌録 / 第四十六則
垂示云。一槌便成超凡越聖。片言可折。去縛解粘。如氷凌上行。劍刃上走。聲色堆裏坐。聲色頭上行。縱橫妙用則且置。剎那便去時如何。試舉看。
新字:垂示云。一槌便成超凡越聖。片言可折。去縛解粘。如氷凌上行。剣刃上走。声色堆裏坐。声色頭上行。縦横妙用則且置。刹那便去時如何。試舉看。
書き下し
垂示に云く、一槌に便ち成りて凡を超え聖を越え、片言に折くべくして縛を去り粘を解く。氷凌上に行き、剣刃上に走るが如し。声色堆裏に坐し、声色頭上に行く。縦横の妙用は則ち且く置く、刹那に便ち去る時如何。試みに挙し看よ。
現代語訳
垂示に言う。一打ちで成就して凡夫を超え聖者をも越え、わずかな一言で断ち切って、縛りを取り去り粘りつきをほどく。氷の上を行き、剣の刃の上を走るようなものだ。声と色の山の中に座り、声と色の上を行く。縦横自在の妙なる働きはひとまず置くとして、一瞬にして去ってしまう時はどうか。試みに取り上げてみよう。
解説
第四十六則の冒頭に置かれた圜悟の垂示である。一槌のもとに凡聖を超え、わずかな一言で人を縛るものを断ち切る力量をまず掲げる。そして声と色、すなわち耳に入る音や目に映る形の山の中に座りながら、それに縛られずその上を行く在り方を示す。縦横自在の働きはひとまず置き、刹那に去る時はどうかと問うて、雨垂れの音をめぐる鏡清の公案へと導く。音や形に囲まれて暮らしながら、それに振り回されないことが問われている。情報の洪水の中で働く現代人にも響く問いである。
この章句が説くこと
垂示声色執着自由一槌解粘
関連する章句
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『碧巌録』第四十五則垂示に云く、道ふを要すれば便ち道ふ、世を挙げて無双なり。行くに当たれば即ち行く、全機譲らず。石火を撃つが如く、閃電光に似たり。疾焔の風を過ぎ、奔流の刃を度る。向上の鉗鎚を拈起すれば、未だ亡鋒結舌を免れず。一線道を放つ、試みに挙し看よ。
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『碧巌録』第十六則垂示に云く、道に横径無し、立つ者は孤危なり。法は見聞に非ず、言思逈かに絶す。若し能く荊棘林を透過し、仏祖の縛を解開して、箇の穏密の田地を得ば、諸天花を捧ぐるに路無く、外道潜かに窺ふに門無し。終日行じて未だ嘗て行ぜず、終日説いて未だ嘗て説かず。便ち以て自由自在に、啐啄の機を展べ、殺活の剣を用ゐるべし。直饒恁麼なるも、更に須らく建化門中に一手は擡げ一手は搦ふること有るを知りて、猶ほ些子に較るべし。若し是れ本分の事上ならば、且つ没交渉なることを得たり。作麼生か是れ本分の事。試みに挙す看よ。
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『碧巌録』第四十六則挙す。鏡清、僧に問ふ、「門外是れ什麼の声ぞ」。僧云く、「雨滴声」。清云く、「衆生顛倒して、己に迷うて物を逐ふ」。僧云く、「和尚作麼生」。清云く、「洎んど己に迷はず」。僧云く、「洎んど己に迷はずの意旨如何」。清云く、「出身は猶ほ易かるべし、脱体に道ふことは応に難かるべし」。洎(字音の注)。
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