兵要録抄録 / 兵の要は民を附けること
荀卿論兵曰。要在附民。夫仁人之兵。上下一心。三軍同力。臣之於君也。下之於上也。若子弟之事父兄。若手臂之扞頭目。而覆胸腹也。故兵要在於附民。蓋賢主明將之御下也。以誠感誠。故上下之情合矣。感恩服義之至。必欲爲國以死報焉。若玆而後束伍可齊。號令可施。攻戰可敎。賞罰可行。凡進退應接。隨將之心而約束不忒。是爲上下一心。三軍同力也。若士卒不親附。則操練而不習。申令而不服。罰則怨。賞則貪。軍失期。戰乖節。何以獲勝矣。是爲愛民無實心。而士卒不親附也。書曰。如保赤子。眞能以保赤子之心愛民。誰不敢親附哉。上者愛下。下者親上。故上下一心也。心一而氣齊。氣齊而力同。力同則以十可擊百。以千可擊萬。況三軍之衆同力。天下誰有敢當者。故曰。國君好仁。天下無敵。夫民之歸仁德者。如水之就下也。不招而徠臣。不攻而賓服矣。
新字:荀卿論兵曰。要在附民。夫仁人之兵。上下一心。三軍同力。臣之於君也。下之於上也。若子弟之事父兄。若手臂之扞頭目。而覆胸腹也。故兵要在於附民。蓋賢主明将之御下也。以誠感誠。故上下之情合矣。感恩服義之至。必欲為国以死報焉。若玆而後束伍可斉。号令可施。攻戦可教。賞罰可行。凡進退応接。随将之心而約束不忒。是為上下一心。三軍同力也。若士卒不親附。則操練而不習。申令而不服。罰則怨。賞則貪。軍失期。戦乖節。何以獲勝矣。是為愛民無実心。而士卒不親附也。書曰。如保赤子。真能以保赤子之心愛民。誰不敢親附哉。上者愛下。下者親上。故上下一心也。心一而気斉。気斉而力同。力同則以十可撃百。以千可撃万。況三軍之衆同力。天下誰有敢当者。故曰。国君好仁。天下無敵。夫民之帰仁徳者。如水之就下也。不招而徠臣。不攻而賓服矣。
書き下し
荀卿、兵を論じて曰く、要は民を附くるに在りと。夫れ仁人の兵は、上下一心、三軍力を同じくす。臣の君に於けるや、下の上に於けるや、子弟の父兄に事ふるが若く、手臂の頭目を扞ぎて胸腹を覆ふが若きなり。故に兵の要は民を附くるに在り。蓋し賢主明將の下を御するや、誠を以て誠に感ず。故に上下の情合ふ。恩に感じ義に服するの至り、必ず國の爲に死を以て報いんと欲す。玆の若くにして後、束伍齊ふべく、號令施すべく、攻戰敎ふべく、賞罰行ふべし。凡そ進退應接、將の心に隨ひて約束忒はず。是を上下一心、三軍力を同じくすと爲す。若し士卒親附せざれば、則ち操練すれども習はず、令を申ぬれども服せず。罰すれば則ち怨み、賞すれば則ち貪る。軍期を失ひ、戰節に乖く。何を以て勝つを獲ん。是れ民を愛するに實心無くして、士卒親附せざるなり。書に曰く、赤子を保つが如しと。眞に能く赤子を保つの心を以て民を愛せば、誰か敢へて親附せざらん。上は下を愛し、下は上に親しむ。故に上下一心なり。心一にして氣齊ひ、氣齊ひて力同じ、力同じければ則ち十を以て百を擊つべく、千を以て萬を擊つべし。況んや三軍の衆力を同じくするをや。天下誰か敢へて當たる者あらん。故に曰く、國君仁を好めば、天下に敵無しと。夫れ民の仁德に歸するは、水の下に就くが如し。招かずして徠臣し、攻めずして賓服す。
現代語訳
荀子は兵を論じて、要は民を懐かせることにあると言いました。仁者の兵は、上下が一心で全軍が力を合わせます。臣下が君に仕え、下の者が上に仕えるさまは、子や弟が父や兄に仕えるようであり、手や腕が頭や目を守り、胸や腹を覆うようなものです。だから兵の要は民を懐かせることにあります。賢い君主や明将が下を統べるときは、誠で誠に感応させます。だから上下の気持ちが合います。恩に感じ義に服する極みに達すれば、必ず国のために死をもって報いようとします。そうなってはじめて、隊伍をそろえられ、号令を行き渡らせられ、攻撃や戦闘を教え込め、賞罰も行えます。進退や応対のすべてが、将の心のままに約束どおり動きます。これを上下一心、全軍が力を同じくするといいます。もし兵が親しみ従わなければ、訓練しても身につかず、命令を重ねても服しません。罰すれば恨み、賞すればむさぼり、軍は期日に遅れ、戦は節度を失います。これでどうして勝てるでしょうか。民を愛する心が本物でなく、兵が親しみ従わないからです。『書経』に、赤子を守るようにせよとあります。本当に赤子を守る心で民を愛すれば、誰が親しみ従わないでしょうか。上は下を愛し、下は上に親しむ。だから上下が一心になります。心が一つになれば気がそろい、気がそろえば力が同じになり、力が同じになれば、十で百を、千で万を撃てます。まして全軍の大勢が力を合わせるならなおさらです。天下に当たる者はありません。だから、国君が仁を好めば天下に敵なし、といいます。民が仁徳に帰するのは、水が低いところへ流れるようなものです。招かなくても来て臣下となり、攻めなくても従います。
解説
この章句が説くこと
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