兵法家伝書 / 新陰流外物進履橋せばき所にて鑓長刀を取り直す
せばき所にて鑓長刀取直切突心持の事 一 せばき所又は藪しげみなどの內にて跡より急に追かけ參候時分、鑓長刀十文字等取直し候樣成候程に候へば、無申事候。若其段不叶に長道具にさへられ、兎や角とうろたへ候內に敵風と近付不慮の負有之物の由に候。相手急に仕懸取直す隙もなく候はゞ鑓十文字などは元來の儀、長刀にてもうの首をとり共儘跡に返し、鑓の石突を正身と心得候て勝負をいたすものにて候。鑓十文字等はあり、式の勝負にさのみは替りなきものゝ由師の說に候。十文字にて入身の時、す(素)鑓にて被入候も負にはなりがたきものゝ由候。
新字:せばき所にて鑓長刀取直切突心持の事 一 せばき所又は藪しげみなどの内にて跡より急に追かけ参候時分、鑓長刀十文字等取直し候様成候程に候へば、無申事候。若其段不叶に長道具にさへられ、兎や角とうろたへ候内に敵風と近付不慮の負有之物の由に候。相手急に仕懸取直す隙もなく候はゞ鑓十文字などは元来の儀、長刀にてもうの首をとり共儘跡に返し、鑓の石突を正身と心得候て勝負をいたすものにて候。鑓十文字等はあり、式の勝負にさのみは替りなきものゝ由師の説に候。十文字にて入身の時、す(素)鑓にて被入候も負にはなりがたきものゝ由候。
書き下し
せばき所にて鑓長刀取直切突心持の事 一 せばき所又は藪しげみなどの內にて跡より急に追かけ參候時分、鑓長刀十文字等取直し候樣成候程に候へば、無申事候。若其段不叶に長道具にさへられ、兎や角とうろたへ候內に敵風と近付不慮の負有之物の由に候。相手急に仕懸取直す隙もなく候はゞ鑓十文字などは元來の儀、長刀にてもうの首をとり共儘跡に返し、鑓の石突を正身と心得候て勝負をいたすものにて候。鑓十文字等はあり、式の勝負にさのみは替りなきものゝ由師の說に候。十文字にて入身の時、す(素)鑓にて被入候も負にはなりがたきものゝ由候。
現代語訳
狭い所で鑓・長刀を取り直し切り突く心持ちのこと。一、狭い所、または藪や茂みなどの内で、後ろから急に追い掛けて来たとき、鑓・長刀・十文字などを取り直せる程度であれば、言うことはない。もしその段がかなわず、長道具にさえられて、とやかくとうろたえているうちに、敵がふと近付いて不慮の負けがあるものだという。相手が急に仕掛けて取り直す隙もなければ、鑓・十文字などはもとより、長刀でも卯の首を取り、そのまま後ろに返して、鑓の石突を正身と心得て勝負をするものである。鑓・十文字などは、あり式の勝負とさほどは替わらないものだと師の説にある。十文字で入身の時、素鑓で入られても負けにはなりがたいものだという。
解説
この章句が説くこと
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『兵法家伝書』新陰流外物(進履橋)「鑓相」鑓相之事 一 鑓相す鑓十文字長短の一味の心得可爲勿論候。乍然、當流兵法の太刀さへ如形にも習請候はねば、增て當流之鑓相不存候。他流の鑓十文字抔は少し稽古申候得共、夫とは少まいり筋替候。乍去直にも申達候歟と覺候。す(素)鑓構等は數多候ても、上段中段下段三ッ陰陽之構二ッより外無之物にて候。是より萬發り、働等の義は練磨次第之義御合點之前にて候。十文字は橫手に心を付、長刀はそりに心を付べき儀、是も御合點之前たるべく候得共、書面にては御合點に參間敷候。我等も得と致書載候樣には落着申さず。右に付ては猶口傳有。
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『兵法家伝書』新陰流外物(進履橋)「馬上より下の者を切り突く」馬上より下の者切突心持の事 一 馬上より歩行武者を切るには、甲一所又は小手の上ならでは無之候。歩行立の者も甲小手の上はづれならでは切突れ候所無之候得ば、餘の所は手明にて候。此心得を以て時に應じ掛なやまし、或は馬にふみたをさせ、起しも不立、馬より下り立、落重りて首を取候儀常の習にて候。馬上より一圓に歩行武者を切候儀は難成物にて候。歩行より馬武者を切候事も難成候故、多くは馬より下り立、鑓を取り立向ひ勝負をいたし候儀多き事に候。意得可有事也。紙面にては難傳候也。
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『兵法家伝書』新陰流外物(進履橋)「脇指にて突く樣」脇指にて突樣突所之事 小脇指にては勿論突事を專にし、切事は一圓なき者なり。中脇指長脇指にても近き者は切ル心得は惡也。切ル時は取らるゝ事も又切レざる事も有。しつ(失)多き物也。近き者は何レ突候て、互に指違候には無迯、此覺悟に候得ば心に勇も出來、所作もけなげに有之もの也。又近ク候とても、中脇指などにては切る時も有べし。突く所は願くは腹の內可然也。是は不定行掛次第兩のかいな股には突かぬもの也。亦相手も此心得にて近く候得ば突事を好候間、夫を心にかけ相手の太刀さきを逃し長短の一味の心持にて無刀に取候義心に縣べき也。手前より突時も相手よりとられざる心持肝要也。何紙面には顯がたし一人に脇指にて掛り取所を逃樣色々有之。前のヶ條に同じ。口傳にあらざれば書載には難成。
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