兵法家伝書 / 新陰流外物進履橋鑓相
鑓相之事 一 鑓相す鑓十文字長短の一味の心得可爲勿論候。乍然、當流兵法の太刀さへ如形にも習請候はねば、增て當流之鑓相不存候。他流の鑓十文字抔は少し稽古申候得共、夫とは少まいり筋替候。乍去直にも申達候歟と覺候。す(素)鑓構等は數多候ても、上段中段下段三ッ陰陽之構二ッより外無之物にて候。是より萬發り、働等の義は練磨次第之義御合點之前にて候。十文字は橫手に心を付、長刀はそりに心を付べき儀、是も御合點之前たるべく候得共、書面にては御合點に參間敷候。我等も得と致書載候樣には落着申さず。右に付ては猶口傳有。
新字:鑓相之事 一 鑓相す鑓十文字長短の一味の心得可為勿論候。乍然、当流兵法の太刀さへ如形にも習請候はねば、增て当流之鑓相不存候。他流の鑓十文字抔は少し稽古申候得共、夫とは少まいり筋替候。乍去直にも申達候歟と覚候。す(素)鑓構等は数多候ても、上段中段下段三ッ陰陽之構二ッより外無之物にて候。是より万発り、働等の義は練磨次第之義御合点之前にて候。十文字は横手に心を付、長刀はそりに心を付べき儀、是も御合点之前たるべく候得共、書面にては御合点に参間敷候。我等も得と致書載候様には落着申さず。右に付ては猶口伝有。
書き下し
鑓相之事 一 鑓相す鑓十文字長短の一味の心得可爲勿論候。乍然、當流兵法の太刀さへ如形にも習請候はねば、增て當流之鑓相不存候。他流の鑓十文字抔は少し稽古申候得共、夫とは少まいり筋替候。乍去直にも申達候歟と覺候。す(素)鑓構等は數多候ても、上段中段下段三ッ陰陽之構二ッより外無之物にて候。是より萬發り、働等の義は練磨次第之義御合點之前にて候。十文字は橫手に心を付、長刀はそりに心を付べき儀、是も御合點之前たるべく候得共、書面にては御合點に參間敷候。我等も得と致書載候樣には落着申さず。右に付ては猶口傳有。
現代語訳
鑓相のこと。一、鑓相す、鑓・十文字の長短一味の心得は、もちろんそうあるべきである。しかしながら、当流兵法の太刀さえ形ばかりにも習い受けていないのだから、まして当流の鑓相は存じない。他流の鑓や十文字などは少し稽古したが、それとは少し筋が違う。とはいえ、直接に申し上げることもできようかと思う。素鑓の構えなどは数多くあっても、上段・中段・下段の三つと、陰陽の構え二つのほかには無いものである。ここから万の発りや働きなどの事柄は、練磨しだいということで、ご承知のところであろう。十文字は横手に心を付け、長刀は反りに心を付けるべきことも、ご承知のことであろうが、書面ではお分かりにならないだろう。私も十分に書き記せるほど落ち着いてはいない。これについては、なお口伝がある。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『兵法家伝書』新陰流外物(進履橋)「せばき所にて鑓長刀を取り直す」せばき所にて鑓長刀取直切突心持の事 一 せばき所又は藪しげみなどの內にて跡より急に追かけ參候時分、鑓長刀十文字等取直し候樣成候程に候へば、無申事候。若其段不叶に長道具にさへられ、兎や角とうろたへ候內に敵風と近付不慮の負有之物の由に候。相手急に仕懸取直す隙もなく候はゞ鑓十文字などは元來の儀、長刀にてもうの首をとり共儘跡に返し、鑓の石突を正身と心得候て勝負をいたすものにて候。鑓十文字等はあり、式の勝負にさのみは替りなきものゝ由師の說に候。十文字にて入身の時、す(素)鑓にて被入候も負にはなりがたきものゝ由候。
-
『兵法家伝書』新陰流外物(進履橋)「馬上の者を突き切る」馬上之者突切事 一 馬上の者つき切事。歩立にて馬上の者相手の時意得、敵鑓にても刀にても馬の向に立合候儀、古來より嫌候事。馬をむかふに請候ては敵急に乘懸候へば馬にふみたをされ候間、右にても左にても歩行立にて馬武者を脇に請、願くは敵の右に立、馬の足をなぎたをし、落候後の勝負尤に候。鑓合の時は馬武者の鑓を右に用させ、突切候事も敵の左によせ勝負致物にて候。口傳なく候ては難傳也。
-
『兵法家伝書』新陰流外物(進履橋)「矢留」矢留の事 一 刀にて矢をとむる事。刀脇指をたてにつく也。所により弓もいられぬ物なり。それに付、射樣の習有之物也。何もたいがひは習にて仕ものなり。刀にては多勢ならず、しかしながら二人三人は仕樣有り。相手によりてならぬもの也。口傳。
-
『兵法家伝書』新陰流外物(進履橋)「人を切る所」人を切所心持之事 一 第一首、第二みけん。但血目に入ば勝やすし。第三に右のかいな。人皆知事なれ共如斯の覺悟なければ、時に至り行縣次第の樣にて覺悟不詳。此故に心の儀定如此。或は鑓十文字等にては二星とて兩眼に目付候義專用にて候。風穴とて口を突事も好し。是はさのみ此兩所を好にもあらず、鑓先面之通りに至るを好事習有、口傳に不有ば難傳。尤太刀も同前なり。
-
『兵法家伝書』新陰流外物(進履橋)「弓を持つ者に掛る」弓を持たる者に掛り樣同切所の事 一 弓を持たる者五六間より遠く候ては弓もあたりかね、又ぬけも少くさのみやうまへ少キ物の由申傳候。尤弓も弓により鐵炮におとらぬ程のせひ兵も可有之候得共、先左樣成は十人に一人も有る無しに候。都べて五間十間にて如形に射合候者少く候。ヶ樣の弓に立相候時の義に候。十間十五間の間にて放候矢は、中り候儀も稀に、又射中て候てもうらかく程の事は中々難有候。亦一の矢を放二の矢をつがひ候時は、此方も近く寄候故、いよ〱あはて放に候へば、猶以ておそるゝにたらず候。然時は弓武者にかゝる折は、左右共に身をひとへになし矢つぼ少キ樣の心持にてひたとかゝり、刀脇指はかの矢留めの時の心持のごとく、兩腰を打違楯につきむざ〱とかゝるものにて候。然る時は總ての人の身幅四寸とは申ならはし候得ども外を取候て五寸に致、其內に兩腰等有之儀候へば、矢つぼ殊の外少く候。殊にあはて放の矢に候へば、射中て候儀十をに三にて候。此上は運次第の儀候得ばひた〱とかゝり、持候弓をさへ切候はゞ頼たる弓をきられ氣をくれ太刀打に成候へば勝能ものゝ由申傳候。
-
『兵法家伝書』新陰流外物(進履橋)「居相の座敷での心持」居相之座敷にて心持之事 一 刀の拔樣色々有。置樣に心を付べき事、座により時に應じ可有心得也。鞘さきを左に成し置時も有べし。是は不圖敵の切時柄を持候て請留め、則左の手にて鞘を持右にて拔候勝手能き故也。右に置く折も有べし。縱へば右に不圖來り切候者を右の手にて柄を持、切ル刀を鞘にて請留め、共儘拔打にする事も有べし。何レ心を付無油斷軍書などに軍を心に持と云ごとく心を付べき儀第一也。兎角油斷無之樣にとの儀是極所也。
人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見る