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兵法家伝書 / 無刀之卷摩拏羅尊者の偈心隨万境轉

一 摩拏羅尊者の偈に云く 心隨万境轉、轉處實能幽 右の偈は參學に祕する事也、兵法此意が簡要なる故に引合て爰に記之、參學せざる人はとくと心得がたかるべし、萬境とは、兵法ならば敵の數々のはたらき也、其一ッ〱のはたらきに心がてんずる也、縱へば敵が太刀をふりあぐれば、其太刀に心が轉じ、右へまわせば右に心がてんじ、左へまわせば左へ轉ずる、是を隨万境轉ずとは云也、

新字:一 摩拏羅尊者の偈に云く 心随万境転、転処実能幽 右の偈は参学に秘する事也、兵法此意が簡要なる故に引合て爰に記之、参学せざる人はとくと心得がたかるべし、万境とは、兵法ならば敵の数々のはたらき也、其一ッ〱のはたらきに心がてんずる也、縦へば敵が太刀をふりあぐれば、其太刀に心が転じ、右へまわせば右に心がてんじ、左へまわせば左へ転ずる、是を随万境転ずとは云也、

書き下し

一 摩拏羅尊者の偈に云く 心隨万境轉、轉處實能幽 右の偈は參學に祕する事也、兵法此意が簡要なる故に引合て爰に記之、參學せざる人はとくと心得がたかるべし、萬境とは、兵法ならば敵の數々のはたらき也、其一ッ〱のはたらきに心がてんずる也、縱へば敵が太刀をふりあぐれば、其太刀に心が轉じ、右へまわせば右に心がてんじ、左へまわせば左へ轉ずる、是を隨万境轉ずとは云也、

現代語訳

一、摩拏羅尊者の偈にいう。心は万境に随って転ず、転ずる処実に能く幽なり。右の偈は参学で秘することである。兵法でこの意が肝要なので、引き合わせてここに記す。参学しない人にはよく心得がたいであろう。万境とは、兵法でいえば敵の数々の働きである。その一つ一つの働きに心が得心する。たとえば敵が太刀を振り上げれば、その太刀に心が転じ、右へ回れば右に心が転じ、左へ回れば左へ転ずる。これを万境に随って転ずというのである。

解説

摩拏羅尊者の偈「心は万境に随って転ず、転ずる処実に能く幽なり」を引き、兵法の要に結びつけます。宗矩はこの偈を参学で秘するものとしつつ、兵法に肝要だからここに記すと断っています。万境とは敵の数々の働きで、太刀を振り上げればその太刀へ、右へ回れば右へ、左へ回れば左へ心が転ずるとします。語られているのは、相手の動きに心が即座に応じる柔らかさです。偈の由来には本文が触れていないので、ここでは引用の紹介にとどめます。市場や顧客の変化に合わせて組織が硬直せず対応を切り替える感覚に重なります。

この章句が説くこと

摩拏羅尊者万境心は転ず応じる敵の働き兵法家伝書

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