兵法家伝書 / 活人劔兵法に必要な得道
しかりと云へども、兵法には、此心まつすぐにして、身足手にかなはざれば、ならざるわざ也、平生の我が身の進退は道にかなはざれども、兵法の道には、此得道なくてはならざる也、よろづの所作に此心はづれず、其道々の上には此心かなへども、よの所へ通じてする事は不成者也、通じてしり通じてなす事をば、通達の人と云也、一能一藝の上に通ずるは、其道々の達者と云也、通達とはいふまじき也、
新字:しかりと云へども、兵法には、此心まつすぐにして、身足手にかなはざれば、ならざるわざ也、平生の我が身の進退は道にかなはざれども、兵法の道には、此得道なくてはならざる也、よろづの所作に此心はづれず、其道々の上には此心かなへども、よの所へ通じてする事は不成者也、通じてしり通じてなす事をば、通達の人と云也、一能一芸の上に通ずるは、其道々の達者と云也、通達とはいふまじき也、
書き下し
しかりと云へども、兵法には、此心まつすぐにして、身足手にかなはざれば、ならざるわざ也、平生の我が身の進退は道にかなはざれども、兵法の道には、此得道なくてはならざる也、よろづの所作に此心はづれず、其道々の上には此心かなへども、よの所へ通じてする事は不成者也、通じてしり通じてなす事をば、通達の人と云也、一能一藝の上に通ずるは、其道々の達者と云也、通達とはいふまじき也、
現代語訳
そうは言っても、兵法には、この心がまっすぐで、身・足・手にかなわなければ、成らないわざである。平生の自分の進退は道にかなっていなくても、兵法の道にはこの得道がなくては成らない。よろずの所作にこの心がはずれず、その道々の上ではこの心にかなっていても、ほかの所へ通じてすることは成らないものである。通じて知り通じてなすことを、通達の人という。一能一芸の上に通じるのは、その道々の達者というので、通達とは言うまい。「さる歌に
解説
この章句が説くこと
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『兵法家伝書』活人劔「心を見付けて悟る」此心を一度見付てさとり明る事大切也、人ごとに我は心を見ひらきてよく我心をつかひ得たりと云とも、此心をとくと見付たる人はまれ也となり、さとらざるしるしは、其身にあらはるべし、見しらざる者は、よく見しるべし、さとりたらば、一切のするわざ言ふ事其身のおこなひすぐなるべし、すくならずば明らめたる人とはいひがたしと也、
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『兵法家伝書』活人劔「手に心をさゝげて」手に心をさゝげて、いまだ動かぬ所を、はやうてとなり、此心空は目にも見へずして何もなき者也、いはんとすれば、此心空動きぬれば様々の事をなし、手に取足にふみ、色々の妙を盡すも此空此心のうごき出てなす所也、此心をさとり明むる事は、書を見ても、難成事也、説を聞ても難到道也、書出す人も説く人も、いにしへより書出す法様、説く法様を以て書くばかり説くばかりにて、心に心を得道したる人はまれなると也、
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『兵法家伝書』活人劔「本心と妄心」すぐなる心をば本心と申也、又は道心とも云也、曲汚たる心は妄心と云、人心とも申也、我が本心をさとり得て、其本心に我がなすわざのかなふ人は床しき事なり、此言葉我よく心を得て如此いふにあらず、如斯いふといへども、われも心のすぐにして、すぐなる心にかなふごとくに、身の進退動静する事は難成事なれども、道なればしるす者也、
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『兵法家伝書』活人劔「妄心は邪、本心に叶えば名人」妄心は何事をなせども邪也、此邪の心が出たらば、兵法も負べし、弓もあたるべからず、鐵炮もはづるべし、馬ものらるまじ、能も見ぐるしかるべし、舞もきゝぐるしかるべし、云事もあやまりあらはるべし、一切皆たがふべし、本心に叶ば、何事も皆よろしかるべし、僞をかまへて、僞りなきと云、其言葉妄心なる故に、早く其僞りあらはるゝ也、心まことなれば、ことわりに不及して聞く人やがて知る、本心にことわり不入物也、妄心は心の病なり、此妄をさるを、病氣を去ルと云也、此病氣をされば、無病の心也、卽此無病の心を、本心と云、本心にかなはゞ、兵法は名人なるべし、ありとあらゆる程の事一も此道理にはづるべからず
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『兵法家伝書』殺人刀「習いて習いなきに至る」兵法の道是にて心得べし、百手の大方をならひつくし、身がまへ目付ありとあらゆる習を能々習ひつくして稽古するは致知のこゝろ也、さてよく習をつくせば、ならひの數々胸になく成りて、何心もなき所、格物之心也、様々の習を盡して習稽古の修行功つもりぬれば、手足身に所作はありて心になくなり、習ひをはなれて習にたがわず、何事もするわざ自由也、此時は我が心いづくにありともしれず、天魔外道も、我が心をうかゞひ得ざる也、此位にいたらん爲の習ひなり、得たれば又習はなく成也、是が諸道の極意向上也、ならひをわすれ心を捨きつて一向に我もしらずしてかなふ所が道の至極也、此一段は習より入てならひなきにいたる者也
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『兵法家伝書』殺人刀「着をはなれる(平等心是道)」右の話諸道に通じたる道理也、道とは何たる事を云ぞととへば、常の心を道と云也と答へられたり、實に至極の事也、心の病皆去て常の心に成て、病と交りて、病なき位なり、
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