兵法家伝書 / 活人劔天地の心・身の主人
人の様々のわざ皆心のわざなれば、又天地にも此心あり、是天地の心と云、此心がうごけば、雷電風雨をおこし、時ならぬ雲の氣色炎天に雪霰を飛し、氷をふらしなどして、人をやましめなどする事あり、しかれば此空は天地にありては、天地のあるじ、人の身にありては、人の身のあるじ、舞をまへば、舞のあるじ、能をすれば、能のあるじ、兵法をつかへば、兵法のあるじ、鐵炮をうてば、鐵炮のあるじ、弓を射れば弓のあるじ、馬を乗ば馬の主し也、此あるじに私曲あれば、馬にものられず、弓もあたらず、鐵炮もはづるべし、此身によく此心が座敷位を得て、在所にすわりぬれば、よろづの道自由也、
新字:人の様々のわざ皆心のわざなれば、又天地にも此心あり、是天地の心と云、此心がうごけば、雷電風雨をおこし、時ならぬ雲の気色炎天に雪霰を飛し、氷をふらしなどして、人をやましめなどする事あり、しかれば此空は天地にありては、天地のあるじ、人の身にありては、人の身のあるじ、舞をまへば、舞のあるじ、能をすれば、能のあるじ、兵法をつかへば、兵法のあるじ、鉄炮をうてば、鉄炮のあるじ、弓を射れば弓のあるじ、馬を乗ば馬の主し也、此あるじに私曲あれば、馬にものられず、弓もあたらず、鉄炮もはづるべし、此身によく此心が座敷位を得て、在所にすわりぬれば、よろづの道自由也、
書き下し
人の様々のわざ皆心のわざなれば、又天地にも此心あり、是天地の心と云、此心がうごけば、雷電風雨をおこし、時ならぬ雲の氣色炎天に雪霰を飛し、氷をふらしなどして、人をやましめなどする事あり、しかれば此空は天地にありては、天地のあるじ、人の身にありては、人の身のあるじ、舞をまへば、舞のあるじ、能をすれば、能のあるじ、兵法をつかへば、兵法のあるじ、鐵炮をうてば、鐵炮のあるじ、弓を射れば弓のあるじ、馬を乗ば馬の主し也、此あるじに私曲あれば、馬にものられず、弓もあたらず、鐵炮もはづるべし、此身によく此心が座敷位を得て、在所にすわりぬれば、よろづの道自由也、
現代語訳
人のさまざまのわざは皆心のわざであるから、また天地にもこの心がある。これを天地の心という。この心が動けば、雷電風雨を起こし、時ならぬ雲の気色や、炎天に雪や霰を飛ばし、氷を降らせなどして、人を苦しめることもある。そうであるから、この空は、天地にあっては天地の主、人の身にあっては人の身の主、舞を舞えば舞の主、能をすれば能の主、兵法を使えば兵法の主、鉄砲を撃てば鉄砲の主、弓を射れば弓の主、馬に乗れば馬の主である。この主に私曲があれば、馬にも乗られず、弓も当たらず、鉄砲も外れるだろう。この身によくこの心が座敷の位を得て、在所に座れば、よろずの道が自由である。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『兵法家伝書』活人劔「手に心をさゝげて」手に心をさゝげて、いまだ動かぬ所を、はやうてとなり、此心空は目にも見へずして何もなき者也、いはんとすれば、此心空動きぬれば様々の事をなし、手に取足にふみ、色々の妙を盡すも此空此心のうごき出てなす所也、此心をさとり明むる事は、書を見ても、難成事也、説を聞ても難到道也、書出す人も説く人も、いにしへより書出す法様、説く法様を以て書くばかり説くばかりにて、心に心を得道したる人はまれなると也、
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『兵法家伝書』活人劔「妄心は邪、本心に叶えば名人」妄心は何事をなせども邪也、此邪の心が出たらば、兵法も負べし、弓もあたるべからず、鐵炮もはづるべし、馬ものらるまじ、能も見ぐるしかるべし、舞もきゝぐるしかるべし、云事もあやまりあらはるべし、一切皆たがふべし、本心に叶ば、何事も皆よろしかるべし、僞をかまへて、僞りなきと云、其言葉妄心なる故に、早く其僞りあらはるゝ也、心まことなれば、ことわりに不及して聞く人やがて知る、本心にことわり不入物也、妄心は心の病なり、此妄をさるを、病氣を去ルと云也、此病氣をされば、無病の心也、卽此無病の心を、本心と云、本心にかなはゞ、兵法は名人なるべし、ありとあらゆる程の事一も此道理にはづるべからず
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『呻吟語』外篇・天地・心は就ち是れ天なり心は就ち是れ天なり。心を欺くは便ち是れ天を欺くなり。心に事ふるは便ち是れ天に事ふるなり。更に須らく蒼蒼の上面に向かひて討むべからず。
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『兵法家伝書』活人劔「空(虚空と眞空)」空と云事、佛法の眼也、空に虚空と眞空との差別あり、虚はいつはりとよむ、眞はまことゝよむ、しかれば虚空とは、いつわりむなしき空にて、何もなき事の譬へに引なり、眞空とは眞實の空也、即心空也、心はかたちなき事は、虚空のごとくなれども、一心は此身の主人にて、よろづのわざをする事、皆心にあり、其心動てはたらく事心のする所也、心の動かぬは空也、空のうごくは心なり、空がうごいて心と成りて、手足へはたらくなり、太刀をにぎつたる拳のうごかぬ時はやうつ程に空をうてとは云也、捧心と云も、心は目に見へぬ物也、見へぬにより空とも云、うごかぬによつて、空とも云也、太刀をにぎりたる手に、心をさゝげて居れども、めには見へぬ也、
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『兵法家伝書』無刀之卷「機が熟する」しかれば其おもひつめたる機が、いかたまり凝かたまりて、かへつて、機にからめられて、不自由なり、いまだ機が熟せぬ故也、功をつめば、機が熟して、我が躰にとけひろごりて、自由を働く是を大用と云也、機とは、卽 氣也、座によつて機と云、心は奥なり、氣は口なり、樞機とて、戸のくるゝ也、心は一身の主人なれば、奥の座に居る者と心得べし、氣は戸口に居て心を主人として、外へはたらく也、心の善惡にわかるは、此機が、外へ出て善に行くも、惡に行くも、此機によりて分るゝ也、戸口にきつとひかへ、たもちたる氣を機と云也、人樞を明て外にて、惡をするも、善をするも、神變神通をはたらくも、此戸口を出てもあけざる時の思案による也、此機が大事の者也、此機がはたらけば、外へ出て大用があらはるゝ也、何れも氣と心得ては、ちがわぬ也、その有所によりて、いひかへた物也、又しかりとて、おく口と云て、身の内にいづくを奥と云、いづくを口なりと定る事なし、たとへなれば、おくとも口とも云也、人の物いふがごとく、いひはしむる所を口ともいひ、はたすをおくとも云べし、その言葉におく口の座敷はさだまらぬ也 〔圖〕心 機 大用 神通 神變 千手 萬手 應機 隨變 萬事 萬端 此機ハ敵ノ機也
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