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兵法家伝書 / 殺人刀表裏は兵法の根本

一 表裏は兵法の根本也、表裏とは略也、僞を以て眞を得也、表裏とはおもひながらも、しかくれば、のらずしてかなはぬ者也、我表裏をしかくれば、敵がのる也、のる者をば、のらせて勝べし、のらぬ者をば、のらぬよと見付る時は、またこちからしかけあり、然らば敵ののらぬものつたに成なり、佛法にては方便と云也、眞實を内にかくして、外にはかりごとをなすも、終に眞實の道に引入る時は僞り皆眞實に成る也、神祇には神祕と云祕して以て人の信仰をおこす也、信ずる時は利生あり、武家には武略と云、略は僞なれども僞を以て人をやぶらずして、勝ときは、僞り終に眞と成也、逆に取て順に治と云是也

新字:一 表裏は兵法の根本也、表裏とは略也、偽を以て真を得也、表裏とはおもひながらも、しかくれば、のらずしてかなはぬ者也、我表裏をしかくれば、敵がのる也、のる者をば、のらせて勝べし、のらぬ者をば、のらぬよと見付る時は、またこちからしかけあり、然らば敵ののらぬものつたに成なり、仏法にては方便と云也、真実を内にかくして、外にはかりごとをなすも、終に真実の道に引入る時は偽り皆真実に成る也、神祇には神秘と云秘して以て人の信仰をおこす也、信ずる時は利生あり、武家には武略と云、略は偽なれども偽を以て人をやぶらずして、勝ときは、偽り終に真と成也、逆に取て順に治と云是也

書き下し

一 表裏は兵法の根本也、表裏とは略也、僞を以て眞を得也、表裏とはおもひながらも、しかくれば、のらずしてかなはぬ者也、我表裏をしかくれば、敵がのる也、のる者をば、のらせて勝べし、のらぬ者をば、のらぬよと見付る時は、またこちからしかけあり、然らば敵ののらぬものつたに成なり、佛法にては方便と云也、眞實を内にかくして、外にはかりごとをなすも、終に眞實の道に引入る時は僞り皆眞實に成る也、神祇には神祕と云祕して以て人の信仰をおこす也、信ずる時は利生あり、武家には武略と云、略は僞なれども僞を以て人をやぶらずして、勝ときは、僞り終に眞と成也、逆に取て順に治と云是也

現代語訳

一 表裏は兵法の根本である。表裏とははかりごと(略)のことである。偽りをもって真を得ることである。表裏と思いながらも、しかけられれば、乗らないではいられないものである。自分が表裏をしかければ敵が乗る。乗る者は乗らせて勝つべきである。乗らない者は、乗らないと見付けたときに、またこちらからのしかけがある。そうすれば敵の乗らないこともつまりは乗ったことになる。仏法では方便という。真実を内に隠して外にはかりごとをなすのも、ついに真実の道に引き入れるときには、偽りはみな真実になる。神祇には神秘という。秘して人の信仰を起こす。信ずるときは利生がある。武家では武略という。略は偽りであるが、偽りで人を破らずに勝つときは、偽りはついに真となる。逆に取って順に治めるというのがこれである。

解説

宗矩は「表裏は兵法の根本」と言い切り、表裏を略、つまり偽りで真を得るはかりごとと定義します。仏法の方便、神祇の神秘、武家の武略を並べ、いずれも最後に真へ導くなら偽りも真になるという筋を立てます。また、相手が乗らない場合も、乗らないと見抜けばそこにまた仕掛けがあるとし、駆け引きが続くことを述べています。方便は仏教の用語ですが、本文では宗矩自身の言葉で説明されています。現代の仕事では、交渉や人事で相手の反応を見て手を変える場面にあたります。ただし、だまして得るのではなく、真実の目的へ導くための工夫という限定が付いている点に、注意が要ります。

この章句が説くこと

表裏方便武略駆け引き真兵法家伝書

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