群書治要 / 『群書治要』吳志下・民を楽しませる君と己を楽しむ君
臣聞有道之君、以樂樂民、無道之君、以樂樂身、樂民者、其樂彌長、樂身者、不久而亡、夫民者國之根也。誠宜重其食、愛其命、民安則君安、民樂則君樂、自頃年以來、君威傷於桀紂、君明暗於奸雄、君惠閉於羣孽、無灾而民命盡、無為而國財空、辜無罪、賞無功、使君有謬誤之愆、天為作妖、而諸公卿媚上以求愛、困民以求饒、導君於不義、敗政於淫俗、臣竊為痛心。
新字:臣聞有道之君、以楽楽民、無道之君、以楽楽身、楽民者、其楽弥長、楽身者、不久而亡、夫民者国之根也。誠宜重其食、愛其命、民安則君安、民楽則君楽、自頃年以来、君威傷於桀紂、君明暗於奸雄、君恵閉於羣孽、無災而民命尽、無為而国財空、辜無罪、賞無功、使君有謬誤之愆、天為作妖、而諸公卿媚上以求愛、困民以求饒、導君於不義、敗政於淫俗、臣窃為痛心。
書き下し
臣聞く、有道の君は楽を以て民を楽しましめ、無道の君は楽を以て身を楽しましむ。民を楽しましむる者は、其の楽い彌いよ長く、身を楽しましむる者は、久しからずして亡ぶ。夫れ民は国の根なり。誠に宜しく其の食を重んじ、其の命を愛すべし。民安ければ則ち君安く、民楽しめば則ち君楽しむ。頃年自り以来、君威は桀紂より傷つき、君明は奸雄より暗く、君恵は群孽に閉ざされ、灾無くして民命尽き、為す無くして国財空し。無罪を辜し、無功を賞し、君をして謬誤の愆有らしめ、天は為に妖を作す。而して諸公卿は上に媚びて以て愛を求め、民を困しめて以て饒を求め、君を不義に導き、政を淫俗に敗る。臣竊かに痛心を為す。
現代語訳
私は聞いております。道ある君主は楽しみによって民を楽しませ、道なき君主は楽しみによって自分だけを楽しませます。民を楽しませる者はその楽しみがますます長く続き、自分を楽しませる者は長くないうちに滅びます。民は国の根です。まことに民の食を重んじ、その命を大切にすべきです。民が安らげば君主も安らぎ、民が楽しめば君主も楽しめます。ここ数年来、君主の威信は桀や紂以上に傷つき、君主の明察は奸雄より暗く、君主の恵みは悪人たちに閉ざされ、災いもないのに民の命は尽き、何もしないのに国の財は空になりました。罪のない者を罰し、功のない者を賞し、君主に誤りの咎を負わせ、天は戒めとして怪異を起こしています。それなのに諸公卿は上に媚びて寵愛を求め、民を苦しめて自分の豊かさを求め、君主を不義に導き、政治を淫らな風俗で損なっています。私はひそかに心を痛めております。
解説

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『君子訓』巻之上一古語に、君を立つるは民の為にすと言へり。凡国君を立つるは、其民を治めしめんためなり。国民を以て其君一人を養ひて、富貴ならしめん為にはあらず。然れば国郡の主となる人は、我一人の楽を好まずして、民を安くし国を治むること、我が職分なる理を弁へ知りて、日夜朝暮、偏に仁愛の心を先とすべし。この理を知る時は、其職分を勤めて、民を安くし国を治むるを楽とし、世俗の好む淫楽漁猟男女の慾等は、自ら薄くなるべし。昔漢の東平王京都に参観せられしに、其時の天子明帝、汝国に在るに何を以て楽とするやと問ひ給ひしに、東平王善をすること最楽しと答へられき。されば善政を行ひ、国民を安くする程の楽はなかるべし。凡国郡以下小郷邑を治むる人も、其徳聖賢に及ばずとも、古の道を学び、人を治むる古法を手本として行はば、などか民安く国治らざる事なかるべき。然らば其身尊栄して、世の誉、後の名まで、いみじき面目なるべし。豈真の楽にあらずや。
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荀子・王覇篇国危うければ則ち楽しむ君無く、国安ければ則ち憂うる民無し。乱るれば則ち国危うく、治まれば則ち国安し。今、人に君たる者、急ぎ楽を逐いて国を治むるに緩なるは、豈に過ぎたること甚だしからずや。之を譬うるに是れ声色を好むに由りて、恬として耳目無きがごとし、豈に哀しからずや。夫れ人の情、目は綦色を欲し、耳は綦声を欲し、口は綦味を欲し、鼻は綦臭を欲し、心は綦佚を欲す。此の五綦なる者は、人情の必ず免れざる所なり。五綦を養うには具有り。其の具無ければ、則ち五綦なる者は得て致すべからざるなり。万乗の国は、広大富厚と謂うべし、加うるに治辨彊固の道有らば、是くの若くんば則ち恬愉として患難無し、然る後に五綦を養うの具具わるなり。故に百楽なる者は、治国に生ずる者なり。憂患なる者は、乱国に生ずる者なり。急ぎ楽を逐いて国を治むるに緩なる者は、楽を知る者に非ざるなり。故に明君なる者は、必ず将に先ず其の国を治め、然る後に百楽其の中を得んとす。闇君なる者は、必ず将に急ぎ楽を逐いて国を治むるに緩ならんとす、故に憂患勝げて校うべからず、必ず身死し国亡ぶに至りて然る後に止むなり、豈に哀しからずや。将に以て楽と為さんとして、乃ち憂いを得。将に以て安と為さんとして、乃ち危うきを得。将に以て福と為さんとして、乃ち死亡を得。豈に哀しからずや。於乎、人に君たる者、亦た以て若き言を察すべし。故に国を治むるに道有り、人主に職有り。若し夫れ日を貫きて治詳しく、一日にして之を曲列するは、是れ夫の百吏官人をして為さしむる所なり、是を以て游玩安燕の楽を傷るに足らず。若し夫れ一相を論じて以て之を兼ね率いしめ、臣下百吏をして道に宿り方に郷いて務めざるは莫からしむるは、是れ夫の人主の職なり。是くの若くんば則ち天下を一にし、名は堯・禹に配す。之の主なる者は、守ること至って約にして詳らかに、事は至って佚にして功あり、衣裳を垂れ、簟席の上を下らずして、海内の人得て以て帝王と為さんことを願わざるは莫し。夫れ是れを之れ至約と謂う、楽しみ焉より大なるは莫し。
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抱朴子外篇・君道夫れ根深ければ則ち末盛んなり、下楽しめば則ち上安し。馬調わざれば、造父も千里の跡に超ゆる能わず、民附かざれば、唐虞も同天の美を致す能わず。馬極まれば則ち変態生じ、傾僨惟れ憂う。民困しめば則ち離叛多く、其の禍必ず振う。戦戦として以て旦を待たざる可けんや。栗栗として危うきを慮らざる可けんや。人主、治乱に思いを澄まさず、亡徴を深く鑑みざれば、百尋の秋毫を盼み、耳は八音の清濁に精しく、文は則ち琳瑯筆端に墮ち、武は則ち鉤鉻指掌に摧くと雖も、心は万篇の誦を苞み、口は濤波の辯を播くも、猶お土崩に補い無く、瓦解を救わず。何となれば、其の大に居らずして其の細に務め、下人の業に滞りて、元本の端に暗ければなり。
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荀子・君道篇君なる者は、民の原なり。原清ければ則ち流清く、原濁れば則ち流濁る。故に社稷を有つ者にして民を愛する能わず、民を利する能わずして、民の己を親愛せんことを求むるは、得べからざるなり。民親しまず愛せずして、己が用を為し、己が為に死せんことを求むるは、得べからざるなり。民己が用を為さず、己が為に死せずして、兵の勁く、城の固からんことを求むるは、得べからざるなり。兵勁からず、城固からずして、敵の至らざらんことを求むるは、得べからざるなり。敵至りて危削無く、滅亡せざらんことを求むるは、得べからざるなり。危削滅亡の情、挙げて此に積む、而して安楽を求むるは、是れ狂生なる者なり。狂生なる者は、時を胥たずして落つ。故に人主彊固安楽を欲すれば、則ち之を民に反すに若くは莫し。下を附け民を一にせんと欲すれば、則ち之を政に反すに若くは莫し。政を脩め俗を美にせんと欲すれば、則ち其の人を求むるに若くは莫し。彼れ或いは蓄積して之を得る者は世々絶えず。彼の其の人なる者は、今の世に生まれて、古の道に志す。天下の王公之を好む莫きを以てするも、然れども是の子独り之を好む。天下の民之を為す莫きを以てするも、然れども是の子独り之を為す。之を好めば貧しく、之を為せば窮す、然れども是の子猶お将に之を為さんとし、少頃も輟めず。暁然として独り先王の之を得し所以、之を失いし所以に明らかにして、国の安危臧否を知ること、白黒を別つが若し。是れ其の人なり、大いに之を用うれば、則ち天下一と為り、諸侯臣と為る。小しく之を用うれば、則ち威隣敵に行なわる。縦い用うる能わずとも、其の疆域を去らしむること無くんば、則ち国終身故無し。故に人に君たる者は、民を愛して安く、士を好みて栄ゆ。両つながら一も無ければ亡ぶ。詩に曰く、「介人は維れ藩、大師は垣と為る」と。此れを之れ謂うなり。
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群書治要・『群書治要』尚書・民は邦の本、本固ければ邦寧し其の一に曰く、民は惟れ邦の本、本固ければ邦寧し。予天下の愚夫愚婦を視るに、一も能く予に勝れり。怨み豈に明らかなるに在らんや、見えざるをこそ是れ図れ。予兆民に臨むこと、廩乎として朽ちたる索もて六馬を馭するが若し。人の上たる者、奈何ぞ敬せざらん。
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『商君書』弱民故に大國を治むるは小、小國を治むるは大。政、民の惡む所を作せば、民は弱く、政、民の樂しむ所を作せば、民は強し。民弱ければ國は強く、民強ければ國は弱し。政、民の樂しむ所を作せば、民は強し。民強くしてこれを強くすれば、兵は重ねて弱し。政、民の惡む所を作せば、民は弱し。民弱くしてこれを弱くすれば、兵は重ねて強し。故に強を以て弱を重ぬれば削られ、弱を以て強を重ぬれば王たり。強を以て強を攻むれば弱く、強は存す。弱を以て弱を攻むれば強く、強は去る。強存すれば則ち削られ、強去れば則ち王たり。故に強を以て弱を攻むれば削られ、弱を以て強を攻むれば王たるなり。