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五常訓 / 巻之四・礼

一衣服は身の表なり。人にまじはるに、先かたちを見る。次に言を聞き、次に行を見る。故に孝經孟子などに、衣服と言語と德行をつらぬるに、衣服を先にせり。衣服は、かたちをおほふ表の飾なれば、えらぶべし。わが位に應じ、年に應じ、處に應じ、時に應ずべし。紫萌葱紅などの間色は、禁じて著るべからず。又大なる繪がた、大なる縞、目にたつ染物おり物などは、ひなびていやし。好むべからず。わが年よりくすみ過ぎたるは、おいらかにして目にたゝず。みやびやかにして、若きも老たるも、身によく相應して似あへり。凡衣服のもやうにても、人の心の邪正は、おしはからるゝものなれば、えらぶべし。

新字:一衣服は身の表なり。人にまじはるに、先かたちを見る。次に言を聞き、次に行を見る。故に孝経孟子などに、衣服と言語と徳行をつらぬるに、衣服を先にせり。衣服は、かたちをおほふ表の飾なれば、えらぶべし。わが位に応じ、年に応じ、処に応じ、時に応ずべし。紫萌葱紅などの間色は、禁じて著るべからず。又大なる絵がた、大なる縞、目にたつ染物おり物などは、ひなびていやし。好むべからず。わが年よりくすみ過ぎたるは、おいらかにして目にたゝず。みやびやかにして、若きも老たるも、身によく相応して似あへり。凡衣服のもやうにても、人の心の邪正は、おしはからるゝものなれば、えらぶべし。

書き下し

一衣服は身の表なり。人にまじはるに、先かたちを見る。次に言を聞き、次に行を見る。故に孝経孟子などに、衣服と言語と徳行をつらぬるに、衣服を先にせり。衣服は、かたちをおほふ表の飾なれば、えらぶべし。わが位に応じ、年に応じ、処に応じ、時に応ずべし。紫萌葱紅などの間色は、禁じて著るべからず。又大なる絵がた、大なる縞、目にたつ染物おり物などは、ひなびていやし。好むべからず。わが年よりくすみ過ぎたるは、おいらかにして目にたたず。みやびやかにして、若きも老たるも、身によく相応して似あへり。凡衣服のもやうにても、人の心の邪正は、おしはからるるものなれば、えらぶべし。

現代語訳

衣服は身の表です。人と交わるとき、まず姿形を見ます。次に言葉を聞き、次に行いを見ます。ゆえに『孝経』や『孟子』などに、衣服と言語と徳行を並べるとき、衣服を先にしています。衣服は姿形をおおう表の飾りなので、選ぶべきです。自分の位に応じ、年に応じ、場所に応じ、時に応ずべきです。紫・萌黄・紅などの間色は、禁じて着てはなりません。また大きな絵柄、大きな縞、目立つ染物や織物などは、田舎びていて卑しいものです。好んではなりません。自分の年より地味すぎるものは、おだやかで目立ちません。上品で、若い人にも年老いた人にも、身によく似合います。およそ衣服の模様でも、人の心の正邪は推し量られるものなので、選ぶべきです。

解説

衣服は人に最初に見られる「身の表」だとして、位・年齢・場所・時に応じて選ぶべきだと説いています。『孝経』卿大夫章の「先王の法服に非ざれば敢へて服せず、先王の法言に非ざれば敢へて道はず、先王の徳行に非ざれば敢へて行はず」などで衣服が先に挙げられることを根拠にしています。派手な色や大柄を避け、少し地味なくらいが上品だという美意識は、江戸時代の武家の好みを反映しています。服装に心が表れるという考えは、TPOをわきまえた身だしなみの大切さとして今も通じます。

この章句が説くこと

衣服礼身だしなみ孝経分限

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