五常訓 / 巻之四・礼
葬祭の禮なければ、死を送り神に仕ふるの道なし。故に禮は、聖人、人情に本づきて、敎を立て給ふ。人の身、禮あれば安く、禮なければ危し。人の身に、さしあたり用ふべき事、是より急なるは無し。故に古語に、禮は人之急なりといへる、誠なるかな。人たる者、禮を行はずんばあるべからず。
新字:葬祭の礼なければ、死を送り神に仕ふるの道なし。故に礼は、聖人、人情に本づきて、教を立て給ふ。人の身、礼あれば安く、礼なければ危し。人の身に、さしあたり用ふべき事、是より急なるは無し。故に古語に、礼は人之急なりといへる、誠なるかな。人たる者、礼を行はずんばあるべからず。
書き下し
葬祭の礼なければ、死を送り神に仕ふるの道なし。故に礼は、聖人、人情に本づきて、教を立て給ふ。人の身、礼あれば安く、礼なければ危し。人の身に、さしあたり用ふべき事、是より急なるは無し。故に古語に、礼は人之急なりといへる、誠なるかな。人たる者、礼を行はずんばあるべからず。
現代語訳
葬祭の礼がなければ、死者を送り神に仕える道がありません。ゆえに礼は、聖人が人情にもとづいて教えを立てられたのです。人の身は、礼があれば安らかで、礼がなければ危ういのです。人の身にさしあたって用いるべきことで、これより急を要するものはありません。ゆえに古語に「礼は人の急務である」というのは、まことにそのとおりです。人である者は、礼を行わないわけにはいきません。
解説
葬儀や祭祀の礼がなければ死者を送り神に仕えることもできないと述べ、礼は人の身の安危に直結する最も急を要するものだと結んでいます。「礼は人の急なり」は、『礼記』などの古典に見える礼の重要性を表す古語です。益軒は葬祭の礼を重んじ、家訓などでも先祖を祭ることの大切さを説きました。礼儀やしきたりは堅苦しく感じられがちですが、人と人との関係を安定させ、自分の身を守るものでもあるという視点は、今も見直す価値があります。
この章句が説くこと
礼葬祭人情安危教え
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