五常訓 / 巻之四・義
仁義はもと一理にしてわかれたり。一を缺くべからず。人道は唯仁義の二にあり。故に聖人易において、人の道をたてゝ、仁義と云ふとのたまへり。二の者そなはりて、人道たつ。人の禽獸にかはれるは、唯仁義あるによれり。人は萬物の靈と稱し、天地の性は、人を貴しとし、萬物にすぐれたれば、我が身ながらも貴きは、是仁義の性ある故なり。もし仁義をすてゝ行はずんば、何ぞ貴ぶに足らんや。
新字:仁義はもと一理にしてわかれたり。一を欠くべからず。人道は唯仁義の二にあり。故に聖人易において、人の道をたてゝ、仁義と云ふとのたまへり。二の者そなはりて、人道たつ。人の禽獣にかはれるは、唯仁義あるによれり。人は万物の霊と称し、天地の性は、人を貴しとし、万物にすぐれたれば、我が身ながらも貴きは、是仁義の性ある故なり。もし仁義をすてゝ行はずんば、何ぞ貴ぶに足らんや。
書き下し
仁義はもと一理にしてわかれたり。一を欠くべからず。人道は唯仁義の二にあり。故に聖人易において、人の道をたてて、仁義と云ふとのたまへり。二の者そなはりて、人道たつ。人の禽獣にかはれるは、唯仁義あるによれり。人は万物の霊と称し、天地の性は、人を貴しとし、万物にすぐれたれば、我が身ながらも貴きは、是仁義の性ある故なり。もし仁義をすてて行はずんば、何ぞ貴ぶに足らんや。
現代語訳
仁義はもともと一つの理であって分かれたものです。一つも欠いてはなりません。人の道はただ仁義の二つにあります。ゆえに聖人は『易』において「人の道を立てて仁と義という」とおっしゃいました。二つが備わって人の道が立ちます。人が禽獣と異なるのは、ただ仁義があることによります。人は万物の霊と称し、天地の性は人を貴いとし、万物にすぐれているので、自分の身ながら貴いのは、これは仁義の性があるからです。もし仁義を捨てて行わなければ、どうして貴ぶに足りるでしょうか。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『五常訓』巻之一・総論一人に仁義あるは、天に陰陽あるが如し。天に陰陽なければ、造化の理ほろびて、四の時行はれず、万物生ぜずして、天地の道立たず。人に仁義なければ、心の徳ほろび、五倫の道行はれずして、人道立たず。禽獣と何ぞ異ならんや。故に易に曰、天の道を立てて陰と陽といふ。人の道を立てて、仁と義といふ。
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『五常訓』巻之一・総論天地の万物をうみ給ふあはれみの理、人の心に生れつきたるを仁と云ふ。仁は人心の全徳なり。故に仁の一理を以て、義礼智信をかね、又万の善をすべたり。春の気を以て、夏秋冬を兼ぬるが如し。されども易においては、人の道をたてて仁と義といふと、仁義の二をつらねて説き給へり。是経書に、仁義をつらね説ける初なり。孟子に至りて、孔子の道をひろめて、仁義をもはら説き給ふ。仁義の二にて、万善行はれ、人道たつこと、天に陰陽ありて、天道行はるるが如し。されども孔子の説き給ふ仁の外には出でず。唯仁の一理をわかちて、仁義といへるなり。たとへば一年の内、元気の流行は一すぢなれど、動静の分あるを以て、わかちて陰陽といへるが如し。
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『五常訓』巻之四・義仁は人の心とする所、生理なり。義は人の行べき路とする所、道理なり。仁なければ、人心を失へるなり。義なければ、人道を失へるなり。凡義は、つねに居ては、理にしたがひ、欲にしたがはず。変に居ては、節を守りて、利に走らず。艱難に臨みては、君上のため身をすてて、忠を行ふ。義なければ、常に居ては、理の宜しきをすてて、唯利のためにし、変にのぞみては、恩をわすれ、徳にそむき、利につき、害をのがれ、命ををしみ、死をおそれ、君父をすてて敵にくだり、つたなき振舞をしても恥ぢず。禽獣にひとしきわざなり。皆是義を失ふなり。
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『五常訓』巻之一・総論一仁義の道は、我が心の外に求めず。幼穉なる童も、其親を愛することを知らざるは無し。其長ずるに及んでは、其兄を敬ふことを知らざるは無し。親を愛するは仁なり。兄を敬ふは義なり。ここを以て、仁義はわが心に、もとより生れつきたる事を知るべし。且親を愛し、兄を敬ふは、誰も知りやすく行ひやすし。甚高くして、知りがたく行ひがたき事にはあらず。此二にもとづきて、其心をおしひろめ、万事に行ひ及ぼさば、仁義行れて、人道立ちぬべし。
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『五常訓』巻之一・総論一天地の恵をうけて、わが身に生れつきたる四徳なれば、人の人となれる道理、ここにあり。然るに此道理を知らず、且人欲にくらまされ、是をすてて行はず、天地の徳にそむき、人の道を失ふこと、悲むべし。此四徳を失へば、人と斯く生れたるしるし無く、鳥けだものに同じくして、草木の、天地の恵のままに生長し、枯しほみて人の養となり、妨とならざるには、遥に劣れるぞあさましき。人は万物の霊とて、天地の内にて、いと貴きものなれど、天地の性にそむき、人の道をうしなはば、禽獣に近くて、貴ぶに足らず。是自ら我が身を賤しくもちくだすなり。豈賤しむべき事ならずや。
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『文武訓』武訓上もだして云はざらんも、むげに仁をうしなひてなさけなければ、本意にあらず。われ愚なれども、幼よりひじりの書をよみ、其道をたふとべる故、管見をここにのべ侍る。天地の間広しといへど、道はただ一のみ。やまとの道、もろこしの道とて、さらに二あるべからず。つはもののいにしへ道儒者の道とて二道なし。もろこしの武道、日本の武道、またなんぞ二あらんや。古の道、今の道、是亦かはるべからず。易に曰、天の道を立てて陰と陽といひ、人の道を立てて仁と義といふ。陰陽にあらざれば天の道行はれず、仁義にあらざれば人の道たたず。人に仁義の道あるは、天に陰陽あるが如し。仁は陽徳なり、義は陰徳なり。仁義の外別に人の道とすべきものなし。
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