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五常訓 / 巻之三・仁之下

是又分殊なり。されども是を用ふるに、時あり禮ありて、みだりに殺さず。草木をきるに時ありて妄に伐らず。古は春夏に草木をきらず。成長する時なればなり。山林に入りて木をきるにも、鳥獸をころすにも、時あり。獸の子をとらず、鳥の卵をとらず、胎あるも殺さず、巢をくつがへさず。皆是天道にしたがひ、物をあはれむ仁なり。殺すべくして殺すは、義にして、仁其中にあり。殺すべくして殺さゞるは、仁に似て義にそむく。眞の仁にあらず。今の人聖學をまなばず、聖道を知らずして、みだりに聖人の法を議すべからず。

新字:是又分殊なり。されども是を用ふるに、時あり礼ありて、みだりに殺さず。草木をきるに時ありて妄に伐らず。古は春夏に草木をきらず。成長する時なればなり。山林に入りて木をきるにも、鳥獣をころすにも、時あり。獣の子をとらず、鳥の卵をとらず、胎あるも殺さず、巣をくつがへさず。皆是天道にしたがひ、物をあはれむ仁なり。殺すべくして殺すは、義にして、仁其中にあり。殺すべくして殺さゞるは、仁に似て義にそむく。真の仁にあらず。今の人聖学をまなばず、聖道を知らずして、みだりに聖人の法を議すべからず。

書き下し

是又分殊なり。されども是を用ふるに、時あり礼ありて、みだりに殺さず。草木をきるに時ありて妄に伐らず。古は春夏に草木をきらず。成長する時なればなり。山林に入りて木をきるにも、鳥獣をころすにも、時あり。獣の子をとらず、鳥の卵をとらず、胎あるも殺さず、巣をくつがへさず。皆是天道にしたがひ、物をあはれむ仁なり。殺すべくして殺すは、義にして、仁其中にあり。殺すべくして殺さざるは、仁に似て義にそむく。真の仁にあらず。今の人聖学をまなばず、聖道を知らずして、みだりに聖人の法を議すべからず。

現代語訳

これもまた分殊です。けれどもこれを用いるのに、時があり礼があって、みだりに殺しません。草木を伐るのにも時があって、みだりに伐りません。昔は春と夏に草木を伐りませんでした。成長する時だからです。山林に入って木を伐るにも、鳥獣を殺すにも、時があります。獣の子を取らず、鳥の卵を取らず、身ごもっているものも殺さず、巣をひっくり返しません。みなこれは天の道にしたがって、物をあわれむ仁です。殺すべきものを殺すのは義であって、仁がその中にあります。殺すべきものを殺さないのは、仁に似て義にそむきます。本当の仁ではありません。今の人が、聖学を学ばず聖道を知らずに、みだりに聖人の法をあげつらってはなりません。

解説

古代には春夏に木を伐らず、獣の子や鳥の卵を取らず、身ごもったものや巣を壊さないという決まりがあったと述べ、それが天道にしたがう仁だと説いています。これらは『礼記』の月令篇や王制篇に見える古い規範です。一方、殺すべきものを殺さないのは「仁に似て義にそむく」偽りの仁だという指摘は、情に流される甘さへの戒めでもあります。優しさが時に厳しい決断を必要とするという考えは、親の子育てや組織の意思決定にも通じます。

この章句が説くこと

仁義自然礼記時節

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