導師導古典を学びたいすべての人に

五常訓 / 巻之二・仁之上

一天地の惠は、至て大にして、人と萬物をうみて、又やしなひ生し給ふ。此故に、尙書に、天地は萬物の父母といへり。天地の理、生々て止まざる故に、其生々たる德を以て、よく萬物を生じ給ふ。易に天地の大德を生と云ふ、是なり。夫天地に別につかさどりなし。物を生ずるを以てつかさどりとす。程子の曰、天は唯是以生爲道。朱子曰、天地以生物爲心。人は天地の物を生じ給ふ心をうけて心とす。是仁なり。故に仁の理の根本は天より出づ。天の生理、人の仁、同じ理なり。

新字:一天地の恵は、至て大にして、人と万物をうみて、又やしなひ生し給ふ。此故に、尚書に、天地は万物の父母といへり。天地の理、生々て止まざる故に、其生々たる徳を以て、よく万物を生じ給ふ。易に天地の大徳を生と云ふ、是なり。夫天地に別につかさどりなし。物を生ずるを以てつかさどりとす。程子の曰、天は唯是以生為道。朱子曰、天地以生物為心。人は天地の物を生じ給ふ心をうけて心とす。是仁なり。故に仁の理の根本は天より出づ。天の生理、人の仁、同じ理なり。

書き下し

一天地の恵は、至て大にして、人と万物をうみて、又やしなひ生し給ふ。此故に、尚書に、天地は万物の父母といへり。天地の理、生々て止まざる故に、其生々たる徳を以て、よく万物を生じ給ふ。易に天地の大徳を生と云ふ、是なり。夫天地に別につかさどりなし。物を生ずるを以てつかさどりとす。程子の曰く、天は唯是れ生を以て道と為す。朱子曰く、天地は物を生ずるを以て心と為す。人は天地の物を生じ給ふ心をうけて心とす。是仁なり。故に仁の理の根本は天より出づ。天の生理、人の仁、同じ理なり。

現代語訳

天地の恵みはきわめて大きく、人と万物を生み、また養い育てられます。このゆえに『書経』に「天地は万物の父母」といいます。天地の理は生き生きとしてやまないので、その生き生きとした徳によって、よく万物を生じられます。『易』に天地の大いなる徳を生というのはこのことです。そもそも天地には特別なつかさどりはありません。物を生ずることをつかさどりとします。程子は「天はただ生ずることを道とする」といい、朱子は「天地は物を生ずることを心とする」といいました。人は天地が物を生じられる心を受けて心とします。これが仁です。ゆえに仁の理の根本は天から出ます。天の生きる理と人の仁とは、同じ理です。

解説

『書経』泰誓上の「天地は万物の父母」、『易』繋辞伝の「天地の大徳を生と曰ふ」を引き、天地の本質は物を生み出すことにあると説いています。程顥の言葉と、朱子『仁説』冒頭の「天地は物を生ずるを以て心と為す」を並べ、人はその心を受けて仁とすると結びます。命を生み育てる働きこそが宇宙の心であるという壮大な考えは、益軒の自然観の中心です。育て、生かすことに喜びを感じる心は、宇宙の働きに連なる尊いものだと思えば、子育てや人材育成にも誇りが持てます。

この章句が説くこと

天地生仁朱子程子

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る