五常訓 / 巻之二・仁之上
一四書六經の内に、唯仁の一字をいへるは、義禮智をかねたり。仁義の二字を說きて、禮智をいはざるは、仁は禮を兼ね、義は智を兼ねたり。百行萬善は、皆五常より出づ。五常は又仁の一字を以て兼ねたり。此故に、孔孟は、もはら仁をもとむる工夫を以てをしへ給ふ。其說は論語孟子の書に見えたり。
新字:一四書六経の内に、唯仁の一字をいへるは、義礼智をかねたり。仁義の二字を説きて、礼智をいはざるは、仁は礼を兼ね、義は智を兼ねたり。百行万善は、皆五常より出づ。五常は又仁の一字を以て兼ねたり。此故に、孔孟は、もはら仁をもとむる工夫を以てをしへ給ふ。其説は論語孟子の書に見えたり。
書き下し
一四書六経の内に、唯仁の一字をいへるは、義礼智をかねたり。仁義の二字を説きて、礼智をいはざるは、仁は礼を兼ね、義は智を兼ねたり。百行万善は、皆五常より出づ。五常は又仁の一字を以て兼ねたり。此故に、孔孟は、もはら仁をもとむる工夫を以てをしへ給ふ。其説は論語孟子の書に見えたり。
現代語訳
四書六経の中で、ただ仁の一字をいっている所は、義礼智をかねています。仁義の二字を説いて礼智をいわない所は、仁が礼をかね、義が智をかねています。あらゆる行いと善は、みな五常から出ます。五常はまた仁の一字によってかねられています。このゆえに孔子・孟子は、もっぱら仁を求める工夫によって教えられました。その説は『論語』『孟子』の書に見えています。
解説
経書を読むときの心得として、仁一字の所は四徳すべてを、仁義の所は礼智まで含むと読むべきだと説いています。四書は『論語』『孟子』『大学』『中庸』、六経は『詩』『書』『礼』『楽』『易』『春秋』を指します。孔孟の教えの中心が仁を求める工夫にあるという指摘は、朱子学の読み方の要点です。短い言葉の背後に広い意味を読み取るという読書法は、古典だけでなく、大切な人の短い言葉を受けとめるときにも役立つ姿勢です。
この章句が説くこと
仁五常四書論語孟子
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