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五常訓 / 巻之二・仁之上

愛は用なれども、愛の理は内にふくめるを以ていへば、あらはれたる用に非ず。朱子又曰、仁は溫和慈愛の道理。溫和とは、其心長閑くやはらかなるを云ふ。慈愛とは、人と萬物を、慈みあはれむを云ふ。溫和は仁の氣象を云ひ、慈愛は仁の道理を云ふ。たとへていはゞ、春の景色長閑なるは溫和なり。春の陽氣よく草木萬物を發生するは慈愛なり。朱子の此二說にて、仁の字義大むねそなはれり。

新字:愛は用なれども、愛の理は内にふくめるを以ていへば、あらはれたる用に非ず。朱子又曰、仁は温和慈愛の道理。温和とは、其心長閑くやはらかなるを云ふ。慈愛とは、人と万物を、慈みあはれむを云ふ。温和は仁の気象を云ひ、慈愛は仁の道理を云ふ。たとへていはゞ、春の景色長閑なるは温和なり。春の陽気よく草木万物を発生するは慈愛なり。朱子の此二説にて、仁の字義大むねそなはれり。

書き下し

愛は用なれども、愛の理は内にふくめるを以ていへば、あらはれたる用に非ず。朱子又曰、仁は温和慈愛の道理。温和とは、其心長閑くやはらかなるを云ふ。慈愛とは、人と万物を、慈みあはれむを云ふ。温和は仁の気象を云ひ、慈愛は仁の道理を云ふ。たとへていはば、春の景色長閑なるは温和なり。春の陽気よく草木万物を発生するは慈愛なり。朱子の此二説にて、仁の字義大むねそなはれり。

現代語訳

愛は働きですが、愛の理は内に含まれているという点からいえば、現れた働きではありません。朱子はまた「仁は温和慈愛の道理である」といいました。温和とは、その心がのどかで柔らかなことをいいます。慈愛とは、人と万物をいつくしみあわれむことをいいます。温和は仁の気象(気質のあらわれ)をいい、慈愛は仁の道理をいいます。たとえていえば、春の景色がのどかなのは温和です。春の陽気がよく草木万物を芽生えさせるのは慈愛です。朱子のこの二つの説で、仁の字の意味はおおむね備わっています。

解説

朱子の「仁は温和慈愛の道理」という言葉を取り上げ、温和を仁の雰囲気、慈愛を仁の中身として説明しています。のどかな春の景色が温和、草木を芽吹かせる春の陽気が慈愛というたとえは、季節の自然を愛した益軒らしい表現です。前の「心の徳、愛の理」と合わせて、仁の字義はほぼ尽くされるとまとめています。穏やかな雰囲気と、相手を実際に育てる働きかけの両方がそろってこそ本当の優しさになる、という見方は教育や介護の場面でも参考になります。

この章句が説くこと

仁温和慈愛朱子春

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