五常訓 / 巻之一・総論
一わが日の本は、天地の内において、南北の中央にあること、中華と同じければ、日月のめぐれる道正しく、四時そなはり、寒暑陰陽の時にたがはざること、四夷の諸國にくらぶるに、すぐれたる善國なり。五穀ゆたかに、衣食器財乏しからず。まことに豐秋津洲といへるも、品物の多くしてゆたかなる事、外國にまさればなり。其風氣正しき故に、風俗和順にして、慈愛ふかく、節義を守りて勇武なり。禮法正しく、威嚴行はれ、仁義に近し。一たび變せば、道にいたりやすかるべし。此故に、中土の書にも、此國を名づけて君子國と云ふこと、又むべなるかな。わが國の人は、日の本の、外國にまさりて善きことを知らず。うらむべし。わが國に足らざる所は、唯學問の一事のみ、中土に及ばず。今太平の化久しく、萬民其德に浴せり。唯つとめて、古の聖の道をまなび、五常の德ををさめ、五倫の道を行ひて、國家の恩德をあふぎ、其化にしたがはざらめやは。
新字:一わが日の本は、天地の内において、南北の中央にあること、中華と同じければ、日月のめぐれる道正しく、四時そなはり、寒暑陰陽の時にたがはざること、四夷の諸国にくらぶるに、すぐれたる善国なり。五穀ゆたかに、衣食器財乏しからず。まことに豊秋津洲といへるも、品物の多くしてゆたかなる事、外国にまさればなり。其風気正しき故に、風俗和順にして、慈愛ふかく、節義を守りて勇武なり。礼法正しく、威厳行はれ、仁義に近し。一たび変せば、道にいたりやすかるべし。此故に、中土の書にも、此国を名づけて君子国と云ふこと、又むべなるかな。わが国の人は、日の本の、外国にまさりて善きことを知らず。うらむべし。わが国に足らざる所は、唯学問の一事のみ、中土に及ばず。今太平の化久しく、万民其徳に浴せり。唯つとめて、古の聖の道をまなび、五常の徳ををさめ、五倫の道を行ひて、国家の恩徳をあふぎ、其化にしたがはざらめやは。
書き下し
一わが日の本は、天地の内において、南北の中央にあること、中華と同じければ、日月のめぐれる道正しく、四時そなはり、寒暑陰陽の時にたがはざること、四夷の諸国にくらぶるに、すぐれたる善国なり。五穀ゆたかに、衣食器財乏しからず。まことに豊秋津洲といへるも、品物の多くしてゆたかなる事、外国にまさればなり。其風気正しき故に、風俗和順にして、慈愛ふかく、節義を守りて勇武なり。礼法正しく、威厳行はれ、仁義に近し。一たび変せば、道にいたりやすかるべし。此故に、中土の書にも、此国を名づけて君子国と云ふこと、又むべなるかな。わが国の人は、日の本の、外国にまさりて善きことを知らず。うらむべし。わが国に足らざる所は、唯学問の一事のみ、中土に及ばず。今太平の化久しく、万民其徳に浴せり。唯つとめて、古の聖の道をまなび、五常の徳ををさめ、五倫の道を行ひて、国家の恩徳をあふぎ、其化にしたがはざらめやは。
現代語訳
わが日本は、天地の中において南北の中央にあることが中華と同じなので、日月のめぐる道が正しく、四季が備わり、寒暑や陰陽がその時をたがえないことは、四方の外国の諸国に比べて、すぐれた善い国です。五穀は豊かで、衣食や器物・財貨に乏しくありません。まことに「豊秋津洲」というのも、品物が多くて豊かなことが外国にまさっているからです。その風気が正しいので、風俗は穏やかで素直であり、慈愛が深く、節義を守って勇武です。礼法は正しく、威厳が行われて、仁義に近いものがあります。ひとたび変われば、道に至りやすいでしょう。このゆえに中国の書物にも、この国を名づけて君子国というのも、もっともなことです。わが国の人は、日本が外国よりすぐれて善いことを知りません。残念なことです。わが国に足りないところは、ただ学問の一事だけで、中国に及びません。今は太平の世の教化が久しく、万民はその徳に浴しています。ただ努めて昔の聖人の道を学び、五常の徳を修め、五倫の道を行って、国家の恩徳を仰ぎ、その教化にしたがわないでよいでしょうか。
解説
この章句が説くこと
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人物志・體別夫れ學は材を成す所以なり、疏は情を推す所以なり。偏材の性は、移轉すべからず。
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論語・為政篇子曰く、異端を攻むるは、斯れ害のみ。
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説苑・建本子思曰わく、学は才を益す所以なり、礪は刃を致す所以なり。吾嘗て幽処して深く思うも、学の速やかなるに若かず。吾嘗て跂ちて望むも、高きに登りて博く見るに若かず。故に風に順いて呼べば、声疾しきを加えざれども聞く者衆し。丘に登りて招けば、臂長きを加えざれども見る者遠し。故に魚は水に乗り、鳥は風に乗り、草木は時に乗る。
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