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五常訓 / 巻之一・総論

知りがたきは、よく學びざればなり。行ひがたきは、人欲にほださるればなり。是道の知りがたく行ひがたき故なり。人欲にしたがひ、邪曲を行ふは、たとへば闇の夜に、道もなき荊棘の中をわけ行き、溝渠を越えて行くが如し。危くして行ひがたし。聖人の道を行ふは、たとへば白晝に大道を行くが如し。明かにして行ひやすし。

新字:知りがたきは、よく学びざればなり。行ひがたきは、人欲にほださるればなり。是道の知りがたく行ひがたき故なり。人欲にしたがひ、邪曲を行ふは、たとへば闇の夜に、道もなき荊棘の中をわけ行き、溝渠を越えて行くが如し。危くして行ひがたし。聖人の道を行ふは、たとへば白昼に大道を行くが如し。明かにして行ひやすし。

書き下し

知りがたきは、よく学びざればなり。行ひがたきは、人欲にほださるればなり。是道の知りがたく行ひがたき故なり。人欲にしたがひ、邪曲を行ふは、たとへば闇の夜に、道もなき荊棘の中をわけ行き、溝渠を越えて行くが如し。危くして行ひがたし。聖人の道を行ふは、たとへば白昼に大道を行くが如し。明かにして行ひやすし。

現代語訳

知りにくいのは、よく学ばないからです。行いにくいのは、人欲にほだされるからです。これが道の知りにくく行いにくい理由です。人欲にしたがって邪なことを行うのは、たとえば闇夜に、道もない荊や棘の中を分けて行き、溝を越えて行くようなものです。危なくて行いにくいのです。聖人の道を行うのは、たとえば真昼に大道を行くようなものです。明らかで行いやすいのです。

解説

本来易しいはずの道が難しく感じられるのは、学ばないことと欲に引きずられることが原因だと指摘しています。欲にしたがう生き方を闇夜にいばらの中を進むことに、聖人の道を真昼の大通りにたとえる対比は鮮やかです。益軒は欲に流される生き方こそ実は苦しく危うい道だと説きました。近道に見える不正やごまかしが、かえって自分を追いつめることは現代でもよくあります。正道は遠回りに見えても、実は最も安全で歩きやすい道なのです。

この章句が説くこと

人欲学問道聖人正道

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